脱出 ①
『でもーーーー何処にいたの??』
フレイヤ王女は不思議だった。
明るい室内から暗い窓辺は見通しがよく 本当に襲撃直前まで、自分が室内照明を消すまで誰も人影が見当たらなかったからだ。
『どうして??』
本当にいきなり突然 彼等は目の前に現れたのだ。
ーーーー訳がわからなかった。
信繁は銃のベルトをガサリと移動させた。
銃身がやや背中側に回る。
「失礼致します。
フレイヤ様、今から私にしっかりとつかまっていて下さい」
そう小さく耳元で囁くと、彼女の両膝の後ろにガッチリと頑丈に左腕を通し、右腕で身体全身をフワッと柔らかく抱え上げて立ち上がりホールドする。
「きゃっっっ!!」 ーーー心臓が止まりそう!
つまりこの体勢は、ジャパンの女の子達が憧れる〜
いや銀河中の女の子垂涎、憧れの「お姫様だっこ」そのもののスタイルだったからだ。
〜確かにフレイヤも由緒正しきお姫様ではあるが、実際には誰も彼もそんなロマンティックな扱いなどしてはくれなかった。
「・・・・・・・〜!!」
今されている夢の様な状況に気がつき、慌てて暴れだしそうになってしまう。
「心配しないで」
かえって羽のように軽々と 愛しい人に抱き締められた。
『そんなーーーーー!! 恥ずかしいわ!!』
尚も暴れそうになったのだが、右腕で上半身、信繁に背中を優しくキュッと抱きしめられると心が痺れてしまう。
「いいの?」
「何がです?」
信繁の不思議そうな声にふーーーーっと心が安らぎ癒される。
強いガチガチの緊張が、柔らかに解けるーーーー
「お願いします」
フレイヤはそれ以上逆らわず コテンと頭を摺り寄せると流れに身を任せる。
強張る力を抜き、彼の逞しい肩に両腕をキュッとしなやかに回した。
「大丈夫です!!」
「行くぞ!!」
『長居は無用!!』
信繁に仲間の班員から続々とハンドサインが送られ、班を率いる全ての中枢にいる班長の彼もまたGO!サインの 合図を返してゆく。
戦いで最強の無敗のテクニックは、現場で不利とみるや早急に逃げ延びる事、撤退である。
これはネオアメリカの海兵隊でもご推奨の技、要するに退却の重要性だ。
なぜかというとゲリラ戦法の場合 負けなければそれは「勝ち」なのである。
信繁班メンバーは安全確認後、廊下に静かに進出する。
廊下は、シャンデリアの照明が暴漢の手で全てが破壊つくされたせいで、どこもぼんやりと 非常灯の足元の灯りのみでほんのり薄暗かった。
フレイヤは信繁に真っ赤に染まった顔を見られなくてよかった、そんな事をつい思ってしまうのだ。
『だってだってこんなの恥ずかしいもの〜〜!』
顔がぼーっと熱を帯びたかに燃える様に熱い。
フレイヤは、耳まで真っ赤に赤く頬を染め、心がフワフワ揺れる。
『こんな非常事態時なのに!
ーーーー嬉しくて堪らないのって変なのかしら!!』
そんなこんなを思い、ギュッと、つい思わず顔をクリクリと信繁のバトルスーツ肩口に埋めてしまう。
すると心なしか〜膝裏に通された、彼の腕に込められた強靭な力が更にグイッと強まった気がした。
『嬉しいーーー!』
戦闘服と帽子のニット地に包まれ、ほんの僅かにしか覗かない信繁の首筋から仄かに香しいネロリーーー
品種は何かわからぬが、蜜柑の花の甘い香りがした。
フレイヤは全身〜うっとりと幸せで、こんなに満たされた気持ちが宿っているのが、自分でも本当に信じられない。
好きな人を好きと思うことが出来て、ただただ嬉しい。
『貴方のことが大好きですーーーもう何も要りません』




