襲撃 ①
フレイヤの移動工程だが、宇宙空港へは 途中からネオアメリカ軍が輸送に参加、本体はジャパン国防軍〜という共同作戦で行われることに決まった。
よって合同計画による厳重な機密保持の元、彼女は厳つい男達に囲まれ物々しいガード下にて引率されてゆく。
「一体全体何を考えているんだ!ふざけているのか?
これはジャパン国内だけの個別案件では無いだろう!!」
〜かの国の大統領直々のホットラインで恫喝 首相官邸にその様に連絡が通達されたのだ。
現在妊娠中の旧フレイ王家 第五王女フレイヤの御身に何かがあり、惑星トールからもしも、万が一にも粛正があっては絶対に困るからだ。
彼の国が本気になれば、考えるだけでもすわ恐ろしい最悪の結果を生むだろう。
〜例えば、フレイヤ以外、国王以下全員殺害されたとされる滅亡のフレイ王家の様に。
宇宙空港は国際的にどの施設も、多発する爆発炎上事故から地域住民を守り、乗客の確実に安全を確保する為、他の航空機・管制システムとは全く別の場所に独立して設計建設されている。
リニューアル工事が終了したハネダ宇宙国際空港に到着後、フレイヤは空港に併設されているホテルに案内される。
「ようこそお越し下さいました!!」
真新しい建物独特の香りーーーー
ふかふかの赤絨毯にズラリと並んだスタッフ総出の歓迎の中、立派なお仕着せを纏ったホテル支配人自らが出向き、彼女を恭しく出迎える
「どうぞよろしくお願いいたします」
フレイヤがニコリと周囲に優雅に微笑むと、ほぉっっーーと周囲には思わず洩らしたらしい、うっとりした溜息のさざなみが広がる。
彼女は完璧な礼法で慇懃に丁寧に目配せをし、ゆったりした歩調で磨き込まれた透き通るエレベーターチューブに乗り込んだ。
フレイヤ王女が何故このジャパンに滞在ーーーいるのか?
それは、表向きは様々な厄災を避けるために古来から「平和主義」を唱える、何処の軍事世界からも一線を引く、中立的な国家での静養となっている。
トールへのーーーー
後継者を宿す「后」という事で、改めて将来に向けての立場的にも居場所が整い、そしていよいよ臨月も近いということで再び「帰還」
ーーー随分な調子の良い言いぐさだが、その様に後日「公式発表予定」である。
「城」にいた事は 絶対に『無かった事』にされる。
城主も、信繁の事も、優しい医療スタッフ達も「この世に居なかった」
よってーーーー「恋は無かった」
ーーーー全ては、そういう事なのだ。
「いいですねフレイヤ様、此処での生活は 誰にも言ってはいけません。
『事情』をお知りになられる〜王子様方以外には。
私達のことは忘れて下さい、その方がよろしいのです。
ーーーーいいですね?」
あの真っ白な病室から出る際に、心から愛して止まない〜当の信繁からそう耳元で囁かれた。
「わかっています」 私はそう答えた。
『ここから出る道を選んだのは自分なのだ。』
ーーーーコクリと頷くしか無かった。
事が事、身辺の防犯のため、マスコミは全てシャットアウトされており一般的な報道はされていない。
ーーーー当然である。
様々な事が走馬燈のように脳内を駆け巡る。
フレイヤに取っては、血を吐くような苦しく耐えがたい想いであった。
唯一の救いは、城主からの許可〜
信繁から誕生日の祝いに貰った小さなオルゴールと安産祈願のお守りを、今後も持ち続けても良いと言う許しだった。
「これはまぁ、『外の世界』のものだしね。
城謹製の着衣系服飾系以外の物品だったら、ここを他人に知らせるから絶対に禁止だけど?
まぁいいわお姫様、記念にどうぞ、今回特別許可を出します」
神様からの美しい錦のお守り袋は、薄くて軽いから心臓に近い内ポケットに。
心を癒すオルゴールは、それ位の重量などものともしない作りの、頑丈な大きな蓋付き外側ポケットで大切に。
フレイヤは心細い気持ちをなんとか自力で奮い立たせるため、本当のお守りとして。
常に身につけ、いつだってあたたかな存在に触れ、多少なりとも安らぎを得てそれを新たな勇気に繋げたかったのだ。
自分を信じて、未来の幸せを心より祈ってくれた人の為に。




