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ハッピー バースディ ⑦

「でもでも〜! さっき言ってた〜高度6,000で、万が一 やむを得ない事情で離着陸する時はどうするの?

 

ええっとーーー私ちょっと興味があるかも?!」


「流石 王立宇宙軍 空挺の元艦長さんですね〜〜〜〜!!」


信繁はニッコニコで我が意を得たりな顔つきで、朗らかに嬉しげに笑うのだ。


 

「私は実行したことは無いですが〜


実際の経験者の話によれば、1回上まで機体を上げてから航空機のように滑空して降りるんだそうです。


ですから、当然長い滑走路がいります。


当然 そんな奇抜なところに有るワケですから、どこぞの国の軍所有ですかね?

 

ヘリの下部にスキッドでなくーーー

重量を支える為、頑丈な移動用車輪がついているタイプでしたら別に問題ないです。

本当に大きいですよ? このタイプの機は。

 

離陸に関しては、実際はソリのような華奢な下部の物が向いています」



「ーーーーどうして? さっきの話と矛盾してるじゃない?」


信繁はウーンと頭を掻いた。


「そうなんですが、以前実際、古代のエベレストでの高度6,000で起きた遭難事故で凄腕パイロットが、不可能を可能に本当に現場で取った方法なんです。


遭難者を収容の現場で〜全部の降ろせる物全てを機内から引っ張り出し、それこそ救命救急に必要不可欠の保温シート迄、飛べないからとほっぽり出しました。


『重くてダメだから降ろせ!』


それ程ーーー航空機にとって重量はグラム単位で明暗を分けるんです、これはご存じでしょう?

 

滅茶苦茶ギリッギリまで 目一杯重量を落としガラガラの機内に乗っているのは結局 パイロットの彼と遭難者だけでした。


度胸がある〜というよりも殆どクレイジーなそのヘリパイは、先程のソリの、スキッドタイプのヘリを操縦していました。


で命知らずで勇敢、頭のいいその方はーーー先ず、ヘリ下部でガッチガチの万年氷の斜面をシュッーーーッと。


上に飛ばずに、なんと前方に真っ直ぐーーーー


機のなんとか出せる微かな動力で 一気にスキッドを直滑降で滑らせました。


でーーーー!!

機首を殆ど真っ逆さまに下部に向けた侭、高度4,000の空中に凄い勢いで躍り出ました。


厳しい気流の荒れ狂う〜雪山、当然ボンベ無しの無酸素状態でのアタックです。


空気も薄く、ローターだって回らないーーーー


危うく山に激突寸前ギリギリまで、岩盤の狭い間を落下させるような感じで 全身全霊で集中、風を渡る鳥のように機のコントロールを行いました。


ーーーーだって全然、ローターは使用不可能状態な訳ですから。

 

ヘリで、6000mの高さで命懸けの、スカイダイビングをしたんです。


でーーー漸く安定飛行が出来る所まで、愛機をまるで空軍戦闘機のドッグファイトの様に想像を絶するハイスピードでひと息に真っ逆さまに落とし。


その後、飛行可能な高さの気流に悠々と乗り、巧みなローターさばきで救援隊が待ち受ける最短の所まで見事 運びきりました。


しかも彼は、聞くところ、2回、同じ事をしたそうですよ。

ーーーつまり遭難者はこの時、2名だったんです」

 


『何てクレイジー!!』


フレイヤは感動と興奮で目をキラキラに輝かせた

 

つまりはこんな話が大好きなのだ。

 


「でしたら、片側スキッドーーーってご存じですか?

災害時に外国の警察のベテランのヘリパイが、ヘリポートが無い場合ーーー


燃えさかる気流の荒れたビル等の屋上から、人命救助で命懸けで行う特殊な手法です」


「何それ!! 聞きたい聞きたい!!」

 

信繁の話は彼女の興味を駆り立て、何もかも物珍しく楽しい。



「ヘリ下部には左右1本ずつの支え〜

警察や消防保有の軽量タイプに多いんですが、さっきの話のソリみたいなスキッドが付いている物が多くあります。

 

一見華奢なこれで全重量をポンって ささえてるんです。


災害救助現場は大抵とんでもない悲惨な場所で、外国は結構屋上までを居住者達は遊ばせずに利用するんです。

 

だから消防のはしご車が届かない高層ビルでも 概ねヘリポートなんて無い。

 

着陸スペースがーーーもしあったとしても、様々な後付の障害物のせいで、とてもじゃないですが多くは機体は降りる事が出来ない。


ヘリからのロープでのリベリング降下救出は、救援を待つ人員が非常に大勢の場合、時間がかかるんで、煙に巻かれた人々への救助は、とにかく1分1秒の時間との戦い〜勝負です。


そしてヘリは一瞬でもローターが何かに当たったら逆に凶器になり得るんです。

人なんか簡単に死んでしまいます。


でーーー屋上へ救援のヘリを飛ばした場合、ブンブン回す巨大ローターの円周の半径分だけ、危険が無いように 被災家屋の屋上に上手に突っ込ませるんです。


しかし ホバリングしながらーーーーですから。

それでは救助の人々は機内には入れません


ですから、左右どちらかの扉側スキッドを建物の縁にチョコンと乗せるんです、空中停止させながら」


「ーーーー凄い!!」


思わずじぃぃんと感心して聞き惚れてしまう。


「やったことあるの?」



「ーーーーー命懸けですからね。


私は簡単な訓練と理論では知ってるってだけで、実際の実戦にはもっと手堅い確実な方法を取ります。

班員の生命が最優先ですので、他に大抵遣りようがあるので〜まぁ」



「ふぅんーー…」

ひどく残念そうな顔をしたフレイヤにクスッと笑うと、信繁はこう返す。



「でもウチの副機長ーーあっと! 彼は私のバディなんですが ”面白がって”

機長をつとめたときに、やらかしたんです。


彼は少々荒い操縦をする人間で〜


『ア〜ここで自分死ぬんだ……』

走馬燈のようにーーー今までの映像がすぅぅぅっと瞼に浮かんできましたよ。


機内の他の班員は漏れなく顔面蒼白、私は終了後容赦なくバコッとはっ倒して直ぐ説教です。


あの時あっけなく墜落して死んでたら、こうして貴女様と会うことも無かったと


ーーー全く自分の強運さに感謝です」



神妙な顔の真面目な信繁に、もう笑いが堪えきれなかった。


楽しく笑ってーーーー

びっくりするほど沢山喜んで……!!


しかし、たっぷりケーキを食べてお腹も膨れたことで急に睡魔が襲い 思わず…ウトウト目が閉じてしまうのだ。

 

ーーーハッとその度に頭を振って睡魔を追い払う。


『〜いけない!!

眠ったらこの人は、ここからーーーいなくなってしまうわ!!』


フレイヤは睡魔が襲う限界まで粘り、何とか耐えようとしたが

 

意地の悪い猛烈な睡魔は「こっちへおいで〜」と手招きし、眠りの世界に引きずり込もうと囁きかける。


「もう、お休みになられた方が良いと思いますよ?

お腹の赤ちゃんにも障ります」


『嫌よ!!

そんなの絶対に嫌よ!!ーーーーーーー』


フレイヤの瞳にブワッと涙が浮かび、切なさを察した信繁は甘い表情で微笑んでこう繋いだ。



「私はよく妹に、子守歌を歌ってあげたんです。

『眠くないのっっ!!』ーーーそう言って毎度怒るんで」



『私は貴方の妹じゃ無いわっ!!』


フレイヤはベッドでギュッと膝を抱き、眉間に皺を寄せ ブーーーっと小動物みたく頬を膨らます。


怒気を孕んだ 彼女の綺麗な色の瞳がキラッと輝く。

信繁にはそんな仕草が堪らなく愛しく見える。


柔らかな表情で腕組みしてクスクス邪気無く笑う彼の様子に、フレイヤもまたホッと癒やされてしまうのだ。


彼には〜いつもこんな顔でいて欲しいーーー心からそう感じ……たのだが



「もう〜!仕方が無いわ!〜じゃぁ 何を唄ってくれるの?」


ーーープンプン素直で無い、怒った顔をワザワザ意識して作り彼に詰め寄る。

 


「そうですね

連邦英語で『Twinkle, twinkle, little star』

〜と唄うのはどうでしょう?と思いましたがーーーー」

 

信繁はそれに対し、ノンビリとこう続ける。



「ーーーでは子守唄がわりにこんな話をまず。


あの歌は元々は地球の古代フランスの、詠み人知らず の、シャンソンです。

 

因みに、5番まである韻を踏んだ詩です。


とある本で1番目の詩として、1761年に発表された後〜

適当に、あの有名な7音リズムが曲として添えられて、以後に盛んにかの国で唄われたんですよ。


何と言っても戯れ歌〜…原曲タイトルはズバリ『内緒話』


聞き手に自分の、恋の秘密をうち明けるって言う〜そんな内容の当時の流行歌です。


ですからね、名にし負う地球上最も凄い恋愛大国の恋バナですからねぇ?

ーーーービックリする、熱い内容なんです。

いくら何でも、ちょっと他国の真面目な人じゃ歌えない。


だから流行るやいなや、伝播先の外国人が次々に音楽家や作家のビッグネーム達がアレンジしまくり、世界中でこぞって替え歌を作ったんですよ。


残存する記録では〜最初に当時22歳のモーツァルトが。


詩の発表17年後に『お〜艶っぽくてこの曲良いじゃ無いの〜!!』と、原曲をプラス12曲に大変ゴージャスに盛りに盛りました。


彼の 天才はちゃめちゃぶりはつとに有名ですからね、なる程な〜と自分なんかは思ったりするわけです。

 

で、アレンジはその後も続々と続き〜モーツァルトの作った変奏曲から32年後


イギリス人のアンとジェーンという仲良し姉妹が『The Ster』というタイトルで

”5番”まである曲を


『唄の内容に出てくる主人公は ひょっとして諸国を旅してるのか?』

そんなアクティブな内容の秀逸なアレンジ曲を作り上げました。


これが世に名高い『Twinkle, twinkle, little star』なんです。


で〜 どういうわけか、その後もアレンジ力をかきたてられた人々は尚も続き

『星』から29年後に 今のネオアメリカで『The A,B,C』というアルファベットを覚える曲が〜


さらに5年後〜ドイツで後に国歌を作った大先生が 『サンタクロースがやって来る』という凄いのを造りました。


しかしそれが又…!サンタさんに子どもがクリスマスプレゼントに大量の〜


『軍装備品』を絶対持って来てっ!!……て、おねだりする、おっとビックリな途轍もなく危ない 変な曲でして。


ぁあこれが帝国主義っていう考えか?っという過去の時代の置き土産で、当時世相的に軍国主義的な、本当にそういう時代だった事がわかります。


さらに その25年後ーーー

『不思議の国のアリス』っていう楽しいお話しをフレイヤ様はご存じですか?」


「!!〜知ってる!!〜私大好き!!

あんな風に、アリスみたいに不思議の国を冒険したいと思ったもの!

だって女の子は皆そうじゃない??」


フレイヤは自分でも知ってる話が出てきた為、いきなり楽しくわくわくする。


『でもどうしてあの小説が 関係あるのかしら?』


「フレイヤ様なら きっとそうでしょう」

キラキラ目を輝かせる彼女に、信繁は面白そうに笑いかける。

 


「お茶会の場面ーーーーご存じですか?」


「勿論よ!!」



「あの有名な話の中のお茶会のシーンで『Twinkle, twinkle, little bat!』

〜と出てくるわけです。


これは完全に、彼の作った替え歌です。


作者の先生は教授で、自分の仕事仲間というか上司のお子さんーーー

お嬢さんと人として対等に仲が良かったから、彼女を喜ばせようと お茶目な作品を作りました。

 

当時の子どもならあそこは誰でもピン!とくる、笑いのツボの場所なんでしょうね。


お茶会場面は そんな交流が察せられて、あの一節は微笑ましいな〜と思うんですよ、私は」


信繁はクスクス嬉しげだ。


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