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ハッピー バースディ ⑥

この撮影記録を、フレイヤはそれはもぅ何度も喜んで見たがった。



ーーーーこれには少し理由がある。


信繁は今回はホログラムのスクリーンをなんと、360度のぐるり総て、まるでプラネタリウムの如く、半球に見られる様に設定したからである。



「何これ……??」


「城はこう言った特殊技術系は元々強いんですよ?


「どうして??」



「ぇえーーまぁ国民性ーーーと言っても良いかもしれないですね?


古来から新しもの好きで、珍奇な物が大好きで、好奇心が強く。


周囲を海洋に囲まれた独特の国ですから、海を渡らなければ閉塞し何処にも行けない訳です。


本当は〜我々は、海洋民族国家なんです



おとなしげな農耕民族〜の振りをして、DNAに中にバイキングのような、フロンティアスピリットが存在するのかも知れないですね?


父も祖父から社長を継ぎ〜登山家〜


あぁーーー

『ジャパン古代歴史も馬鹿みたく大好き』〜なので、息子にこの超派手な名前を喜々として、恥ずかしげもなく堂々と名命したんですよ。


亡くなった母もよくーーーこの山を越えたら何がある?

 

この海を越えたら何があるーー?


この輝く青空ーーー

ねぇ信繁、高い高い蒼天を越えたら一体、先に何があるって思わない? 


そんな事を考えると、何だかワクワクしない??ーーーなんて。


時々ーーーーー夢物語みたいな事を言ってーーーー


結構〜本当に実行しては還って来て。


人の3倍以上の濃密な人生を、高速フル回転で堪能した女性で。


母の思い出話を聞くと、とうとうーーー『彼女』


母は望みを叶え、大学生の時には地球の南の端の南極大陸迄行って、仲間と共に登攀したのだそうです。


ビックリですが、新婚旅行の行き先を地球の上の先っぽ〜 北極点を望み〜

母にとってはそこが、記録的に最後。


普通は不可能に思える、登山家や冒険家の間で言う7大陸最高峰制覇〜

 

〜ザ・エクスプローラーズ・グランドスラム〜探検家グランドスラム達成です。


で、それはもぅ繰り返し繰り返し


『信繁が大きくなったら、せめて大学生かしら?

私と一緒に行ける年頃と 登山レベルになったらーーー必ず!


母さんと一緒にヒマラヤのエベレストに登頂しましょうね!!


この世で最も天に近い空…… あの壮絶な蒼を貴方に見せたいわ!

 

その時が〜 私は本当に楽しみだわ!』


でもしかしーーー

自分が幼児の頃より折に触れて言っていた、結局その ”大いなる約束” は達成されませんでした」


「……」



フレイヤは何と言っていいかわからなかった。


どうして果たせなかったのか?

それは彼が大切な家族を一度に失ったせいだ。


亡くなった方の中にはーーー彼の母親も含まれていた。



「エベレストって〜 どんな世界?」


「うーーん」


フレイヤの質問に、信繁は少し考え込む。


「同期の同僚があの山に詳しいんですが、生と死のーーーー

〜天国と地獄の狭間〜だと言ってましたね。


だからーーー『それは現世だろ?』 私が敢えて突っ込んだら〜

 

『あぁそうか!』 

クスッと笑ってましたが、言おうとしたニュアンスは容易く想像出来ました。


私も、母との約束があったせいで、この山だけはどこか特別、心の聖域で登攀した事はありません。


北米大陸最高峰、アラスカ山脈のデナリ(旧マッキンリー山の事。改名)に登頂成功時も

 

ーーーそんなふうに別に感じませんでしたから。

 

精神的に登るのが、実際怖いのかもしれない」



「そうーーーー」



フレイヤはベッドの上で膝を抱き 星々の光を見入っていた。

お互いに暫く無言で。


群青の天空 煌めく星々と星雲


「本当に凄い……」


「綺麗ですね、宇宙は」


何もかもが信じられない程リアルで、平たい土地の場所が多いフレイヤの祖国には滅多に無い、高い高い高度で、全く素晴らしい映像美で……



「回転翼機で、ヘリで富士山に登頂出来ないの?」


「貴女なら そう言うと思いましたよ」


フレイヤの質問に、信繁はキュッと困った顔で腕組みをする。



「う〜んーーー色々事情があり『無理』なんです。


大きくは二つですかね。


まず一つ目は、これは意外と知られていない事実なんですが、ヘリは高地を不得意とする乗り物ですからね?」


「嘘……!

山岳救助でもーーーシネマでも大活躍じゃない?

回転翼機〜〜ヘリは?」


 

「〜ですからアレは かなり熟練者の技なんですよ。


ジャパンの山岳救助や災害でよく微動だにしない、例えるならば昆虫のトンボ〜

空中ホバーリングする姿を現在でも見かけますが。


アレは本当に、選ばれた超特級クラスのエースパイロットの方です。


ご存知の通り理屈では『空気の塊』〜クッションを自前のプロペラで作って、その上に乗って飛ぶんです。


ですんで構造上、空気自体が薄かったらエンジンも点火不可は勿論、ペラが回せないからクッションも無理、回せたとしても薄い空気では飛行は厳しいです。


機体とローターへ 叩き付ける如くーー 悪魔のように荒れ狂う気流……!

風と全力で闘うんですよ?


毎回、荒れまくりの現場の上昇気流にグイグイ煽られ〜翻弄される中、正確で的確な人命救助を 毎回行ってしてるんです。


命張ってるなーーーと自分は感服します。


固定翼機で、最初は免許を取得しーーー流れで〜

 

回転翼機操縦免許も確かに、一応は要求されてたし〜で。


『確かに あったら便利だろうな』

 

ーーーただそれだけで取得を適当に目指したんですが、とんでもなかったですよ!!


ネオアメリカで大学時代に講座を受講したんですが、機を前後左右、しかも上下に安定させるだけでも一苦労で。

ーーー結局テールローターの扱いが意外に難しいんです。


それはもぅ、アッチの教官に、いびられましたねぇ


『〜なんだお前、酒が抜けていないのか?』

 

『そんなに飲んだのか?』

 

『い〜か?飲酒運転はダメだぞ?』

 

ーーー言いたい放題 散々からかわれ〜で、同じ受講者の生徒から付けられたあだ名が『酔っ払い信繁』でした。


私はかの国では 外国人なので、誰よりも熱心に、自分ではレッスン受けていたつもりだったんで〜


当時青臭く、大したことも無いくせにいきがってた私は 滅茶苦茶腹が立ちました。


レッスン後ーーー本気でバーボンをガバガバ飲みまくりましたよ?


翌日、自業自得のガンガン〜割れるような頭痛を抱え、直前の 呼気の計器チェックでオッケーが出るか〜!


あの時はヒヤヒヤの スリルとサスペンスでしたね?

 

ですが当然チェックは甘くなく、そんなの飛行許可など出る訳が無い。


結局ーーー!『お前 何考えてるんだ!!』って 深酒があっさりバレ、ガツンと教官から大目玉。

 

”短気は損気” ーーー1回分〜貴重な時間のレッスン、吹っ飛びましたよ」



フレイヤはヒーヒーお腹を抱えて笑いに笑う。


「完璧な信繁にもーー そんな無茶と失敗があったんですね!!」


信繁はプーッと、まるで頬を〜餌袋をパンパンにしたリスやハムスターみたく膨らますと


「そりゃあ私も人間ですからね?

でもそんなに笑わないで下さいよーーー」

 

ボソッと呟き フンッとそっぽを向く。

 

『カワイイ〜〜〜〜この人カワイイ〜〜〜!!』


フレイヤにとって、完璧完全無欠、優秀アンドロイドみたいな彼の初めて見る隙


〜人間臭さで。


そんな信繁がーーーーーー今……堪らなく愛しい。

 

胸がキューーーーッと震えた。



「二つ目の理由、勝手にヘリで行けない他の理由、富士山・山頂は〜『私有地』です」


「っえ?そうなの??」



驚きの余り、それしか言えない。


 

「たしかーーー某神社に 山頂の所有権が有るんじゃ無かったかな?

 

ジャパンの古代の将軍様ーーー


大人になり自分の実家のある生誕の西三河地方では無く、シズオカが仕事の本拠地

〜元々所領だった徳川家康というお殿様が。


彼は今のトーキョーシティに江戸幕府を開いた開祖、ジャパン歴史上で神君と呼ばれる武家トップ役職の将軍様なんですが、感謝を込め自ら託したそうです。


ですので、いわば ”神の物”〜


神道でも神聖な場で、所有と言っても特殊で、いち個人の物ではないから過去気象の観測所を作ったなどの融通も利くんですが。


だからといって勝手に施設を作る事は出来ないんです。

人外である山の女神のモノ、聖域ですからね。

 

あぁドローンも高度によっては、かなりカスタマイズが必要ですが、飛行出来ます。

高度6,000mでも 何とか飛べないことも無いですから」



「えっっつ!?嘘!」


「嘘じゃ有りません」


『ーーーー信じられない!!』



フレイヤはあのちっぽけな頼りない機体が、まさかそんな高い場所まで上れるとは知らずーーーー瞳に驚きを隠せない。


「凄いわね!!そんなこと出来るの?」


「えぇ、でも普通のタイプでは無く、山岳遭難などの事故時の救助隊支援用にジャパンのエンジニアが特別仕様で開発した専用機ですよ?」


「そりゃあそうでしょうね!

でもカスタマイズとか どうしてなの??」


「ええ性能上の、どうしようもない理由からで、ヘリもドローンも 飛行浮上の原理は似てるんです。


特にヘリは、先ほどの軽い話の通り。

機体上部に付いている巨大なメインローターをブンブン回し、出来た風を地面にパーンと当てる事と尾翼に付いてる小型ローターでバランスを取り。


で、自らが自力で作り出す、ポヨンと反射した、透明な空気のクッションに乗っかって、空中にフワフワ浮かぶのです。


それをもっと大がかりに技術で応用し、最大に活用するのが〜


フレイヤ様が仰る〜災害時人命救助に見る、空中停止テクニックのホバリングです。

ところがーーー!!なんですよ。


高山は、空気自体が激薄、スッカスカなんです

 

よって幾ら巨大ローターをブンブン回したところで揚力(浮かぶ力)が得られない。


そしてもっと致命的なのは、高山はお湯が沸かない〜

これって聞いた事ないですか?

 

水が高温に沸騰せず ぬるくてあ〜あ〜〜〜〜な残念な事でも解るように。


何らかのエネルギー体を、装置内部でポンポン爆発させ、弾ける爆発力でエンジンを動かす方式


地球は殆どこのやり方で タービンやエンジンの動力源を吹かしてるんですね。

 

ですからシステム自体の性能を、越えられないんです。


でーー確実にエンジンの出力が低下、動力を得ることが出来なければ機械は死んだと同然です。


よってメインローターの動きが鈍化。


頼みの綱のメインローターが力一杯 元気よくブンブン動かなければどうすることも出来ません


だから現場に辛うじて着陸はまだしも、最悪〜離陸が出来ない事があるんです。


また斜面への着陸も、ローターによる空気のクッションが出来にくい為に難しいですね。


山岳は当然 斜度の高い傾斜ばっかりです。

そんな高度4,000mの所に広々と真っ平らの万全のヘリポート〜


ーーーと言うか ”滑走路”

あったら逆に、どうやって建造したんだ? と、そちらが凄いですよ?


経験から地球の殆どのヘリは私が知る限り、高度4,000mあたりが飛行限界ですね。

 

勿論、現代でも高性能のヘリでしたら高度6,000まで上がれる機も無いわけではありません。


但し、私が普段操縦するようなミリタリー系〜 パワーが一般の防災ヘリとはレベチの軍事用ヘリです。


高い性能を評価されて 平和的利用である災害救助にも、警察や国防で数多く利用されていますが、普通いち職員の私用目的に貸せませんよ?

 

それに大体 ”もしも飛んだら” 何事!とーーー


『何があったの? シネマの撮影? それとも 事故? 遭難? 滑落?〜と。


登山客の興味と不安を煽り、大変な大騒ぎになるでしょうね?

 

形状もデカイし、何もかもが半端なく目立つので」



フレイヤ王女は、登山客でごった返す凸凹の山頂に、見るからにゴリゴリのミリタリー仕様の巨大回転翼機がドーンと到着した様を空想してみる。



『ウワァーーーー』



「それは無理ね!! 絶対!」 頭を振りキッパリ思わず断言する。



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