面会三日目 ②
「フレイヤ王女様は今ーーーーご気分がすぐれないんですか?」
「え?」
「そのぅ……ご様子が、瞼が腫れたご様子なので」
「……」
「失礼な表現相済みません』
まさかーーーー……夕べ、信繁の事を思い出し、謝りたくて泣きじゃくったとは言えず、フレイヤは思わず下を向く。
『〜〜〜〜〜っっっ!』
胃液がその途端 食道をせり上がる。
グググッと……駆け上がってくる感じ?
この程度では当然先程の様になったりしないが、気分が微妙に悪き事で充分、お釣りが来る状態で。
それにしても
『何という絶妙なタイミングなの!』
思わずそんな事を別に感じた程絶妙な、こう言っては何だが、今回に限り”ありがたい吐き気”だった。
何て素晴らしい! 誤魔化しが利くじゃ無いの!
「……」
「ーーー 変な事言ってしまいましたね、私はまた。
じゃお詫びに、一緒にストレッチをしませんか?」
「?」
「経験ですが、気分が酷く悪い時って『肩こり』が最悪で、肩がパンパンでガチガチの時が多いんです。
リンパの流れが悪いっていうか、疲れを流してやらないといけないと思います」
?
言っている意味が ”よくわからない”……
”疲れ” を ”流す” ? 何言ってるの? そんな事出来るはず無いじゃない?
『本当に ”東洋の神秘” って感じだわ?』
素敵に神秘的…… フレイヤは心の中だけで呟く
”からかってるのか?” ヒョイと信繁の顔を見ると、今度は非常に真面目くさった表情をしていた。
不思議の国・龍に似たジャパンには、やっぱり未だに、密かにニンジャが大量に居て、ニンポーという幻術で時折ヒトを癒やしているのかも知れない。
ごく当然の様な貌で語ってるのが、日常への浸透ぶりが解るというものだ。
興味深い話だったので興味津々!!
「そうなの?」
「ええ。
悪阻に効くかどうか解りませんが、私が見本を見せますのでトライをしてみませんか?
マッサージは貴女のお体に触れることになりますので……残念ながら私には出来ません。
ーーー規約に反します」
「そうなんですか?」
「はい……ですので、この後専門家の方に、ごく軽めのタッチで肩と首にして貰いましょう。
でも足ツボは残念ながら、お腹に刺激が強すぎるでしょう。
そうですね、下半身は、ふくらはぎの毒素を流す ”さすり” 程度の柔らかな指圧が良いんじゃないでしょうか?」
信繁は心配そうな、神妙な面持ちで言い切るのだが、やっぱり言っている事の半分も解らない。
「それって気持ちいいの?……痛くない?」
口を手で押さえながらフレイヤは小さな声で聞く。
「えぇ、初体験なら『楽しめる』と思います、きっと……!」
何故か信繁は、ニヤ〜〜〜ッと笑うのだ。
まるで悪戯っ子が、「仕掛け」をした様な顔ーーーー!
???
わけがわからない
「では、ストレッチをしてみましょう。
まず腕をこう……
両腕を真っ直ぐに前方に伸ばして下さい、そう上手ですよ?」
「ねぇ先輩?」
「?」
後輩は先輩を見てプッと笑う
「信繁様ってもしかして”天然”なんですか?」
悪阻で、本当にあんなに顔がパンパンになる程泣く? 女心に疎いと言うか〜
普通、ソリャ今は、確かに王女様ご気分が悪いけど!!
おとついの晩と夕べ……!
「貴方に対して悪かった」って、王女様、罪悪感と寂しさで泣けちゃったに決まってるし?!
「まぁ微妙に ”女心が解らない” ところが、擦れていなくって彼の良いところでしょ?
ーーーーじゃぁ聞くけど?
子龍様の様な方では、普通の女の子では太刀打ち出来なくて、いつの間にか手の上でコロコロ転がらされて、それはそれで大変よ?
ーーー完璧でないところが素敵で可愛いじゃないの?」
「ふぅん〜そう言うもんですかーーー?」
「ええ、男性は皆、未完成品よ?
お互いに影響を与え合って、精神的に一緒に成長する過程が醍醐味じゃない。
ーーーでしょ?」
「うわっ、先輩、オットナ〜〜〜〜ッッッ!」
凄い!
『何だか格好いいな』ーーーー
後輩は頼りがいのある先輩を惚れ惚れと見つめて胸を振るわせる。
それにしてもーーーどんな恋愛をしていれば、そう言う結論に達するの!!
むむぅ、それは大いに今後、いいや ”今夜 ”?
徹夜で隅々までーーーー語って貰う、恋の話の、ぶっちゃけタイムだ!
めちゃ美味しい、ウキウキする話
『それに……!』
そう、実は今まで最も気になっていた事ーーーー!!
フレイヤ王女の、惑星トールの、「ラファエル殿下」……
”トールの大天使” と噂される、金髪グリーンの瞳を持つ奇跡の美男子、イケメンを越えるイケメンーーー!
癒しのエメラルドの大天使様!
正真正銘・正統派・由緒正しき本物の王子様の話だ。
一体どうやって知り合ったの?
ーーー”ソウイウコト”はーーーどうしてなのか?……
一切オープンになっては居ない。
確かに下世話と言えば下世話、でもロマンティックと言えば、こんなにロマンティックなシチュエーションは無い訳で……!
シェイクスピアの、超有名悲恋作品。
ロミオとジュリエットも、裸足で逃げそうなお立場のお話し。
何と言ってもーーー
誰が聞いても怖々、顔を見合わせて囁きを交わす、銀河連邦加盟惑星中、最も強国と言われる泣く子も黙る最強軍事国家、惑星トール。
でもって……恐怖の大王陛下が、これが又、彼自身も結構なハンサム……!
金髪で抜ける様に白い肌を持つという、美男子リーズ大王陛下が、全子息中で最も可愛がる、目の中に入れても痛くないと言われている〜
ーーー溺愛する、美しき末の王子様
片やーーー銀河1裕福と言われた惑星フレイ
美と伝統と古式ゆかしい格式でならした、文化都市国家の王家のお姫様。
『スッゴく気になる気になる〜〜〜〜……!!』
つまり〜この2つのある意味ーーー”個性の違う” その道最強番長同士が戦って
結果ーーー彼氏側、”王子様”側が勝利、フレイヤ王女側の王家が倒れた。
「もう終わった関係……って言えば、実際問題そうなのかも知れないけど?
ーーーお腹に宿るベビーちゃんのパパの事、王女様はどう思ってるのかしら?』
そうだ、妊娠していなければ無かった事
”忘れてしまえ” で、良いんだけれども、逃げられない現実だ。
幸いーーー……
「そんな事知らない!」「自分以外の誰かだろ?」
……相手がそう言う ”逃げを打つこと”も、最低最悪の卑怯なことが出来ない訳でも無かったが、そういう事はラファエル王子様はなさらなかった。
それどころかーーー……
「戻って来て欲しい」
「自分と結婚して欲しい」 ……そう仰ってる。
「う〜〜……ん」
現実はシビアで、タダの個人対個人の、ごくごくプライベートのおはなしってだけなのに!
甘い恋の話は、何処行っちゃったの〜っーーーて感じ??
”城” も ”ジャパン政府” 内閣府も。
”かの国”ーーーーフレイヤ王女様に「今すぐにでもトールに行け」と……!
結構な酷い事を望んでる。
ソリャその為に、信繁様はこの病室に派遣されて来たんだろうけれど〜
ーーーーでもあの方は不思議な事に、そう言う話はしたがらない。
一応2度目に来た時に、確かに希望は言っていたけど……
”あれでコレにて終了” って感じ?
しつこく同じ話題をサブリミナル的に、マインドコントロールそこのけでグイグイ持ち出そうとかはなさらない。
ええーーーもう再び、蒸し返したりする気も無い様に見えるのだ。
ただひたすらーーーー
フレイヤ王女様のご健康のみに着眼してるんだよね〜?
見た感じ、懐いたところを!ーーーていう、グルーミング的な感じでも無い。
本当に ”ご機嫌伺い”……
お仕事お忙しいだろうに、噂通り本当に優しい人なんだなぁ〜…』
そこまで考えて、はたと思うのだ
彼女はそういうデリケートな事を相談する相手が
……過去の恋の話
「好きだったの」「酷いと思わない?」「でもね〜!!」
その程度ですら話せる相手が居ないと言う事に!
そうだーーーー……”先輩にかこつけて”
恋の話大会、何でもかんでもぶっちゃける〜マル秘時間、女性だけの会〜を今夜再び企画しよう!!
ーーーー当然! 信繁様の秘蔵映像も、そこら中から頑張って借りてこよう。
手に入る限り!
ーーーそうだ、再びの大開催アゲインだ。
今夜の警備の当直……ナスチャはどうかしら?
そんなこんなの様々な事を、のっぺり素知らぬ顔で考える。
『賢くてしっかりした澪花先輩に相談しよう』ーーーそれが良い♡
”お祝いです”
フレイヤ王女様も、信繁様と仲直りを果たした〜”この絶好のタイミングを逃す手は無いでしょ?”〜
ーーーってね!!
「では今日はこれくらいで」
「もう?」
もっともっとしたいのに〜ッーーーと言わんばかりの不満そうなフレイヤに、信繁はクスッと明るく微笑みかける。
ーーーああもぅ良い笑顔〜〜〜!!
フレイヤはそれ以上何も言い返せない。




