ちょっと休憩 ⑥
「〜と言うことで信繁、今回データ取りもかねてこの後入浴をしておいで。
サウナと冷水風呂と、常温でのクールダウン、タップリ水分を取った状況下でだ
今回は短い〜『お試し』モデルコース、ごく短い短時間コースでやってみよう」
「〜そうは言ってもーーー」
渋る信繁にセツははっきり言いきる。
「でもサーーー今は大変な時期だろ?
もっとワガママに…自分本位でいいと思うんだケドな ”ここの専門家”としてはサ?
どう?
今後に展開される有意義な休息の為ニモ」
「そうですよ〜!
信繁さんの快適の実験、研究の為ですよ!
能率が上がって良い数値が出たならその方が、僕達的にも良いし?
いいですか?
精鋭信繁班は、信繁さんが頼もしい司令塔、リーダーで、僕達頼りなんです!
少しはーーーご自分の体調に気をつかって下さいっっ!」
「しかしこの後、訓練が有るだろ?」
すると雅はーーー”我が意を得たり” !
ニシャッと、そう言わんばかりの微笑みを振りまく。
「そちらも、ノープロブレム ……
子龍さん、ナスチャ、ヨンで、既に始めてます、ギャラリー本当に大騒ぎでしたよ?」
「〜〜〜〜!」
ーーーーーちょっと待て!
オイッッ、俺は一体何分〜「ここで寝ていたんだ?」
ギョッとした信繁に雅はニコニコーーーー!
明らかに確信犯的、更にこう付け加えて伝えてきたのだ。
「大丈夫ですって〜!
新しく黒帯のーーー……!!
ついこの前に、無事昇段試験にパスしたばかりの子龍さんの登場で
もうーーー道場中 ”きゃーーー” でしたし
確か、お披露目…… 皆の前で初めてでしょ?
それに…ナスチャって、やっぱり女子にスッゴく人気あるんですね?
規定に基づき、まとめた髪留めを外しピンを取って髪ゴム1つだけでキリッと〜
キッチリ編んで巻いた髪をほどいて、下ろした髪を高い位置でポニテにした姿は
……僕でも惚れ惚れする位、それはもぅ格好良かったです!!
正に男装の麗人ですよねー!
長身で足すらりと長くて姿勢も元々良いから、胴着のパリッと似合う様と言ったらもぅ〜〜〜〜
そりゃあれだったら、ボーッと女の子達がなっちゃうの無理ないですもんッッ!
ヨンも『何処の暗殺者?』って、独特の雰囲気が凄くって。
でなけりゃーーー ”青い目のお寿司屋さん”?
なんかもーーミスマッチで、僕的に超絶面白かったです!!」
「ーーーー……そうか」
「〜だからそういう顔をしない、信繁、睡眠担当医師としても今のお前、すっごく心配だったサ……?」
「……」
「でなければ今すぐ『入院』を勧告…宣言するよ?〜それはやダロ?
だからさ、せめて今言うボクの言う事を聞いて欲しいんだ、出来るだろ?」
「〜わかったよ」
信繁はーーー……っと、大きな溜息をついた。
「脱衣室はA……サウナ室はAー1、冷水入浴はAー1浴槽ね?
君はそれでいいかい?」
「いいよ」
「〜よし!出たらーー新たに身体状況によって指示を出すから〜!」
「〜了解」
「ゆっくりしてきて下さいね!」
仕方が無い、エイ侭よ!ここまで来たらーーーー従うしか無いかーーー
信繁は溜息をつきつき、雅の満面の笑みに見送られ、セツの指示による奥にある”入浴ブース”に向かう。
入浴ブースは男女別脱衣室と、中間の性に値する部屋、”3パターン”ある。
何せ銀河には様々な肉体を持つ種族がある。
年齢によってや、生存環境によって性別すら丸ごと入れ替わる種すら居るという
3パターンは、そうした職員に対する適切な配慮、自分好みに選択出来る配慮。
そして更にーーー”個別に分けられて”おり、各各それぞれに専門の入浴システムが完備されている。
「合理的」かつ、内部での偶発的な長時間に及ぶ ”出くわし” で、好悪〜
ーーーマウントによる無用の諍いや暴力行為、ありがちなトラブル防止をふせぐ仕様になっているのだ。
『全てが”1”と言うことは……今は誰も使用中は居ないって事か?』
信繁の勘は当たり、適温の、温度湿度設定の室内は、ガランとしている。
入り口にセットされている備え付けタオルセットを手に取ると、敢えて着替えていたスポーツウエア姿だった信繁は、脱衣スペースでテキパキと思い切りよく脱ぎ捨て、フカフカで真っ白なバスタオルを腰に巻く。
剥き出しの素肌に、快適な温められた設定温度が気持ちが良い。
1枚の手頃なタオルを手に取ると、内部にある洗面システムでしっかり水分を含ませて濡らすと、ギチッとギュウギュウ絞る。
「Aー1……は?〜と…」
目的の小部屋は人1人が入ることが出来る個別スペースで、タオルを持った彼が入ると同時にボゥッと音がした。
既に内部は高温になってはいるが更に〜素早く、”信繁専用の設定” が自動で開始された証拠。
壁の一角がパカッと開き、スーーーッとマジックアームが伸び樹脂製コップが差し出される。
中には最適なビタミン分量入りらしき水分が、ザッと内容量約八分目まで注がれている。
「開始しますーーーまず施術者は、コップの中の水分を全量飲み干して下さい。
その後、リラックスして終了時間までお過ごし下さい……」
人工の、柔らかな声質の合成音声の指示が降る。
信繁はその声に従い、本当の利き手である左手の方でコップを取ると、グッと飲み干す。
彼は元々左利きの人間だが、右利きへと幼い頃に訓練しており、普段は右利きとして過不足なく生活している。
結果として、いざとなれば両方の手がこだわらず使える両利きの人間でもある。
だからこそヘリパイとして両方の掌が腕が縦横無尽に動かす事が出来、天才的なクレイジーな操縦が可能とも言える。
空になったコップを差し出すと、マジックアームは器用に掴み取り、再び壁の中に消えていった。
小部屋内ーー……サウナ室内部は全て木材で出来ている。
ブースは結構広めの部屋で、肉体の大きな高身長の信繁でも充分に満足出来る。
狭い感じはしなくて快適で、信繁は頭からスッポリ先程持ち込んだ濡らしたタオルを被り、彼的にサウナの準備は整った。
次第に高温になりーーー……チリチリ肌が焼ける様な刺激を感じる。
頭がボーーーーーっとし、夢現の時間が訪れる。
『熱いーーーーー……』ある種の開放感、サウナ特有、独特のトランス状態。
信繁は頭部と顔を覆う、被ったタオルの下でゆっくり目を閉じた。
例えウツラウツラして、ボンヤリしてまっても、内部には”マイク”が有り、ガンガン意識を起こすアナウンスがあるから、生命的に絶対に安心である。
以前〜過去……!
徹夜続きの業務で、グダグダに疲れ果てていた信繁は、大音量で叩き起こされた事が事実(複数回)あった。
よって今回、それについては経験的に信用しても絶対に大丈夫である。
『子龍はーーーどうしてるのかな?ーーーーたく無茶しやがって!!
ナスチャは〜……それにーーーヨン……は……
あの勇次が、どうして今回、班長会議に代理でいたのか……
……優しい雅には世話をかけた。
話に出てこなかった班員総出で、事務仕事を彼と共にしているのだろう……』
雑多な考えが取り留めもなく……信繁の頭の中をクルクル走馬燈の様に巡る。
サウナでは「何もすることが無い」
その上ーーー脳内が血流がよくなることで、無駄に活発化、活性化する。
ーーーだから浮かんでは消え…… ポンと消えては浮かぶ。
様々な”妄想”? ーーーー炸裂するイメージ……
快楽ーーー
ドーパミン出まくりの、いわば、ちょっとしたナチュラルハイ状態だ。
『……』
ゆっくり瞑想する信繁の頭から〜緩やかに、明日の実技試験の恐怖や緊張〜
急に決定したモヤモヤする試験への戸惑いが
ーーーー『なる様になるサ』諦観へと落ちつく
穏やかなボーーーーッとした ゆるゆるする無我の感覚に身を任せる。
そうだ……物事はなる様にしかならない、ジタバタしたって始まらない。
その時だった。
自分でも予想外の、意外すぎる人物の顔がピカッと突然脳裏に浮かんだ。
ーーーーホログラム映像を見て、嬉しげに微笑んだフレイヤ王女の顔
『あの方は、明日自分が来なくて不審に思うだろうか?』
『……残念がったりするのだろうか?』
……イイヤそれは無い……か
自分の〜思わず咄嗟に頭によぎった、甘い思考回路を慌てて全力で否定する。
『まさかなーーー』
……そうだ、あんな高貴な立場の人間が取るに足らないここの、いち職員の動向を気にするだなんて自惚れも良いところだ。
それにたった、僅か2度しか面会していない人間に対して?
『フッ 冗談だろ……?』
ーーーする訳が無い。
もう大体……俺の存在事 ”不快なものとして” 忘却の彼方
サッサと忘れていたとしても、なにも不思議じゃ無いだろうしな……
フレイヤ王女はーーー現役の艦長時代はもとより。
王女としてレセプションに出席、日々、何十人も何百人も、何千人も、何万人も、あるいはそれ以上の、想像を絶する面会の客人を当たり前にさばき、王族の務め、仕事としてこなしていた筈だ。
そう言う姿は、信繁も大きなパーティ時の両親の姿を間近に見ていたから、容易くイメージ出来るのだ。
彼女も又、そんな日常だったろう。
『しかも猛烈に怒らせてしまったし……』
ーーー顔も見たくも無いと思ってるかも知れない
信繁はフッと口元に笑みを浮かべる。
『俺としては、嫌味とか、馬鹿にするとかそういうつもりで無かったんだが…』
しかし結果は結果だ。
自分も、いささか醜い嫌らしい交渉術を用いてしまった事への、下品な自分自身に対する憤りもある。
気がついたらーーーどうしてか、同じ対等目線になってキツく接していた。
『どうしたんだ自分?
自覚出来ないほど、そんなに内部に疲れがたまっていたのか?
ーーー雅もセツも言う様に、だったら目一杯恥ずかしいゾ コレは……!』
信繁は肩を落とし、ぼーっとする頭でハーーーッと大きく溜息をこぼす。
『一体…… どう言う顔をして彼女と会えば良いのか?』
……ーーーわからない
『ーーーーもう会えないのか』
と…… そう思った途端
『ーーーなんだ?』
小さな心の動揺……奇妙な感情
よぎるーー理解出来ない……
自分でも説明出来ない 不可思議な気分が不意に浮かぶ。
その事にーーーー戸惑う自分が居る
『……』
それは”寂しい” 仄かにーーー……染みる、悲しいという感情だった。
なお信繁は、フレイヤに明日の事情を話すことは絶対に出来ない。
何故なら、彼女はここの特殊収容施設の囚人、収監者だからだ。
「政治的事情により」、と言うこととは、又別の話である。
城内部に勤める人員の予定、各各の業務に関するスケジュールも当然ならば、ましてや、プライベートの細々した、この先々における「予定」
特に ”未来” の、個人情報を収監者に知らせるなどもっての他……!
絶対に有り得ない事である。
当該施設への侵入者の危険……事故事件、逃亡、脱走、脱獄
それらの事への危険性は排除されるのは当たり前、常勤で勤めているスタッフや職員の生命の安全を守るにも当然の処置・規則である。




