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ちょっと休憩 ③

「雅ーーー済まんが。

内勤臨時チームリーダーになってくれ、お前が内々はいつも以上に頼りだ。


それから早急に『不夜城』の瑠架に連絡してー……」


「どうすんの?」


「試験の……飛行艇の操縦に役立ちそうな『何か』〜

急いで定期便にまでに用意して、信繁に持たせてくれる様に依頼しろ。


知ってんだろ?……資格試験、受験すんの」


「ぇえまぁ」


「じゃ頼め、天才瑠架様ならベターな方策、きっと考えてくれるサ」


「解りました、瑠架さんなら喜んで、信繁さんの為にやってくれるでしょう。


子龍さん! ぇーーーっと、条件は持ち運び出来る、小型でポータブルな物ならいいんですよね!」


「そうだ、お前だと話がはえーよ」


子龍がパンと、小気味よく手をたたく。


「じゃ作戦開始だ!!」



「子龍さーーーん、頑張って頭からボリボリ喰われてきて下さいね!」


「るせー、おまいらもボスの信繁が居ないからってサボんなよ?!

遊んでたら桜香に爆裂回転キックさせたるわーーー!」


「これーーー信繁さんが持ってく筈だった電脳資料の全部です」


「済まんなーーー雅♪」


「ヨンは私について来て、”練習場”ーーー錬成道場の準備をするから。


でもさヨンが居れば確かに子龍さんが言うとおり、迫力があるからピリリと場が引き締まるし一石二鳥よねぇ〜


子龍さんが『仮』代理指導員だと、多分、絶対、超ーー五月蠅くなる確定!!」


「……?」


??……な顔の、ヨンの容姿は確かに言う通りである。


白、銀色に近い、前髪は長め、頸を短く刈り上げたプラチナブロンド。

北国の空気の如く冷たく青く澄んだ薄いブルーアイズの瞳、狼?〜いいや鷹の如しの猛禽類に似た人を寄せ付けない孤高の鋭い眼差し。


滅多に笑わない引き締まった顔、加えて、子龍と同じくらいの高身長。

 

要するにーーー誰が見ても恐い顔!!

 

「……?」

そんなヨンは彼女にキョトンと不思議そうに首を傾げた。


「まねーーー直ぐ解るから!」


最近すっかり、「はいはいはいはい!」立候補した、教育係兼面倒見役兼後見が板に付いてきたアナスタシアはくすっと面白そうに笑った。


彼女は身長2m越えなので、意外だが、低身長の彼が、自分の下につくパシリの人員というよりもカワユイ ”弟” か何かに見えるらしい。


ヨンは顔はメッチャ恐いが、実際には中身は、性質が極めてナイーブ……

 

調書に記載のある「妹を守って来た半生」から分かる通り、心根が優しい事を既に知っている。


アナスタシアは学生時代、女子部キャプテンでチームを率い歴任した経験から、元々こうした”人を視る事”に普通に馴れていた。

 

試合中は闘争心が強く負けず嫌い、我の強い部員が〜 一転。

一旦試合を離れると「ええっ!」〜と思う程、驚異の”ノミの心臓”だったりとかある訳で、そういう方面の面倒見が良いからこそのリーダーなのである。


〜でなきゃ「彼氏から30分前に送った電脳メールの返事が来ないんですぅ、ワタシ振られました〜もうダメですぅ絶対無理ですぅ〜」

本気で大泣きで涙ポロポロ姿で泣きじゃくる、面妖なチームメイトの話し相手は務まらない。


人に好奇心とたっぷりの愛がなければ、そんな複雑で、意外にセンシティブで繊細な人間ばかりの、奇妙に気を遣う体育会チームなんか回すことは無理!



アナスタシア × ヨン


……そんなこんなで今や 中々良いコンビに成長しつつある。



**************




定例の班長会議に子龍が出席するとーーーー早速絡まれる。



「よぅ子龍?」

 

「……なんだ」


「信繁はどーした……?ん」


「風邪ひいて休みだ」

 

「ほほーーー鬼の霍乱か、いー気になって、たるんでんじゃ無いか?信繁」



『ぅるせーぞッッ』ーーーーー余計なお世話だ。


子龍は心の中でクソミソに罵倒し毒づくが、こういう場合はあえてにっこり微笑むのだ。


「こちとら こき使われすぎなんで」

 

「フン!」


……元々想定済み

 

信繁班と友好的で、仲のいい班長もいれば、そうでない班も居る。


現在、子龍の目の前に居る彼は、特に信繁を目の敵にし、何かと突っかかってくる敵愾心剥き出しの、嫌〜〜〜な男だ。


生命線であるヘリに極めて優秀な男 ”空也”という性格がおとなしい天才パイロットを獲得してから益々横柄で、態度がデカくなった。


子龍が微笑みながら、チラッと鋭く睨みつけると


「お〜怖〜〜!!」


そう言うと肩をすくめ、さっさと体を翻す。

 

これではまるで子龍が悪いみたいな言い草と、客観的な様子に見える事だろう。


 

「あ〜子龍、早速絡まれたかーー?」

 

「ーーーー何だよ勇次」


子龍は入れ替わりに目の前に来た男に返事をする。

彼は他班にいる若手出世頭のエースで、副班長職である。


ハマッコで気っぷが良く、信繁と子龍は彼とは仲が良く、内々で次期、新班長抜擢候補ナンバーワンは彼だと噂されている。


「何で平のおまえがいんだよ?」

 

「ぅん〜まぁな、お前と同じ?

ウチのポンコツ班長の、代理サーーーーー……」


「言い得て妙だな、でソッチ何かあったか?」

 

「表向きは、うちらも風邪ーー……いいかそれ以上は絶対に聞くなよな〜」


勇次はパチッと綺麗でおちゃらけた、超チャラいウィンクをとばす。

 

明るくライトだからこそ接しやすい、軟派な部分がとても好感が持て皆から人気と支持率が高い男である。



「俺が今から隣にいりゃーーー『アイツ』もどっか行くさ?」


「何で?」

 

「ヤバイホロ写真俺に握られてる〜女絡みのな?ーーーまぁ任せとけって」

 

「じゃぁわりーーーー頼むな? 後で借りは返すぜ」


「子龍ちゃんに、頼まれマシッタ♪」


勇次は日に焼けた、キリッと男前な顔をニマニマほころばせる。


 

2人が並んで仲良く席に着くとそれから間もなく、定例会議は粛々と開始。

 

大きな議題も出来事も無く滞りなくサクサク項目通り進みあっという間に閉会。

 

まるで見事、テンプレの様な荒れる事もない比較的楽な会合だった。



ザワザワする閉会後ーーー勇次と子龍は2人揃って会議室を出る。

 

タイプが全く違う美形2人が並ぶと壮観である。


”会議終了後”にーーーウズウズ『いちゃもん』をつけようと、どうやら狙って見張っていたのか?……


先程のイケズな班長からの、強くギリッと怒りを込め睨みつける視線をヒシヒシ感じたが

 


『フン』 子龍は当然無視した




「信繁ーーーー仮眠室でタップリ休ませろよな?」


 

何だ知ってたか……子龍は小さく首をすくめる。


「〜いつもながら ”地獄耳” だな」

 

「それ位じゃ無けりゃサブなんか務まらんぜッ?」


「ーーー」

 

「じゃな!俺コッチ」

 

「何で購買部に用があるんだ?」

 


長い廊下を歩くと勇次は寄ると言う

 

 

意味がわからない

 

食堂でいいだろう、腹減って菓子でも買うのか?


「ーーー長い付き合いの彼女に別れるって〜今ウチの朴念仁ポンコツ班長、修羅場!


〜〜超ごねられ、必死に機嫌取ってるのさ♪


だってさ、今日、そのコの誕生日、バッカで〜班長忘れてんの!


マジでバカだろ? ソリャ怒るサ!!

 

タダでさえも俺ら生活が不規則で、デートをすっぽかし気味なのに、思わず同情したサ!!


だから『バースデーケーキ』……

俺がコッソリ会議前、予約入れておいたンだわ。

 

んで、もう城の厨房から到着してる筈だ。


ーーーー何とか仲直りしてくれると助かる」



〜勇次はヒラヒラ手を振り、予約品取り扱い購買部のコーナーに入っていった。


「……俺も一応買っとくか……!」


なぁ勇次ーーーお互いに妙に手間のかかる班長を持つと大変だなオイ!



子龍は定期便の中で簡単に食べられる物は無いか?と勇次の後にくっつき店内に入る。


 

「タマゴサンドとフルーツサンド、ミルクティー ……と、オォ有ったぜっっ!」

 

最近やっと時々、手に偶に入るようになったチョコ菓子、黒い稲妻!!


最後の一つだったのを、ウキウキしながら手に取る。

それを見て勇次が面白そうに口を挟む。



「勝負食シリーズか?信繁の」


「あぁ」


「ははは『相変わらず』だなーーー信繁の好み。


しっかし〜……実技試験ずれ込んで大変だな?

『頑張れ』って俺からもエール贈ったって伝えてな?

受かったら絶対合格パーティ開こうぜ!


……よっと!」



結構な情報通ーーーー


でも見た目マンマの、気っ風のいい男前勇次は両手いっぱいの、受け取って来たばかり、後はレジで会計を支払うのみの超特大サイズーーー


カラフル巨大ケーキ箱を捧げ持ち、楽しげに子龍にカラカラ笑った。


子龍は苦笑する。

「んじゃまぁ、今日はやらしい奴にあれ以上絡まれなかったから、コイツはそいつのお返し分だ。

めんどくせーソッチ案件も頑張れよーーー」


とエールを送り、ふんふんと鼻歌まじりで自分の会計分と共に、勇次の巨大ケーキ代もご機嫌で支払った。


なにせ子龍は親子関係最悪だが、こう見えてお金だけは潤沢にある家庭出身の子弟だから、これ位どうということはないのである。



「ラジャー♡」


勇次は、ピッ!と、整う顔の隣に敬礼のハンドサインを添え、更に「サンキュー♪」


ご陽気にフランス風の投げキッス、子龍に向けて掌でフワーッと優しく吹き、手を大きくフリフリ賑やかに去っていった。



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