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ちょっと休憩 ①

信繁はフレイヤの居る病室を出ると真っ直ぐに班員が待つ、コンピュータールームに向かう。


今現在、自分が有休を取る明日の業務の打ち合わせをしているはずだ。


「〜よ〜…!相棒!首尾はどうだったか?」


「ーーーー」


「?」


「子龍、取りあえずこれの解析を頼む。

……有り難う、確かに役に立ったと思う」


信繁は。各種手荷物や……ペタンと貼られた”子龍の私物”である ”行動観察機器” を、指先で注意深く剥がし子龍に丁寧に返す。


「ーーー……すこし仮眠を取る。

子龍 悪いが40分いいか?」

 

「はいよーー」


「行ってらっしゃい信繁さん!

……凄く疲れた顔してますから充分休んで来て下さい

”大切な明日”があるでしょ?!


後はーーー僕達で進めておきますから!」


「済まないな雅」


「お疲れーーーーー〜〜〜!」

 

「お疲れ様〜!」


信繁はバックの頼りがいのある班員達の声援に、振り返らず手をヒラっと振ると、無言でコンピュータールームを後にする。

 


「……何があったのかしら?」


「大分ーーーあの様子じゃ揉めた様だな」


「なんで?」

 

「わけわからんっっす!」

 

「あ〜〜〜〜どうして?」

 

「・・・・・・」


「そんじゃ、今からそれを調べてみようぜー!」


「今から!、それ子龍さん早すぎなんじゃ?」


「ーーーー班長居ないのにですか?!」


ザワザワ響めくメンバーを余所に、子龍はサッサとテキパキ映像を見る為のセッティングをし始める。



「さて〜と、一体どんな ”お宝”が撮れてるのかーーーだぜ?

信繁を『仮眠室』に追いやる位の〜な?」


子龍はニンマリ ふっふっふっふっと笑う。

 

「子龍さん、何だか桜香が獲物仕留めた時みたいですよ〜〜!」


雅がぞぉ〜ッとした顔で呟く。


「恐っ!」

 

「お前”前世” ぜってー〜猛禽類だぜ?

千夜一夜物語のシンドバッドの冒険、妖鳥鷲なんじゃねーかーーッ?

夜な夜な、血がドロドロ滴る塊生肉、うひゃーって引き千切ってそうだ」

 

「だよな?」

 

「…ぇえ」

 

「似合いすぎ」


「ぅるせーーーッッ、桜香は鳩丸ごと食わねーと、ビタミンと栄養不足で死んじまうわー!


オオタカに栄養スカスカな、塊肉なんか食わせんじゃねー!!」



桜香というのは子龍が非常に可愛がっている、キッキと可愛らしく鳴く「オオタカ」の名前だ。


……ロシアからやって来た〜お嬢様である。


現在、黒龍や白龍の飼育スペースと隣接する、広々空間で悠々自適に生活している。


刷り込みで、人に最初から馴れる様、大切に育てられた猛禽類の事である。


何故そんな遠い国から?かというと、ジャパンの法的な問題、野生動植物における保護法に抵触するからで……


元々桜香嬢は、子龍の中1時の、書家で鷹匠の恋人が管理者だったオオタカで。


クラスメイトの元ライバル〜後に恋人が、堂々天寿を全うし寿命で亡くなった祖父、彼女の鷹匠師匠だった人物から託され、まるで半身の如く愛していたパートナーだった。


しかし真剣に愛した恋人も不幸が襲い、不治の病で余命宣告を受け、唯一桜香譲と親しかった彼に管理の白羽の矢が立った。


オオタカは繊細な感性の生物、誰でも管理が任せられるというものではない。

恋人は、自身の両親では無理だと判断した。


というのも”配偶者”とーーー特に雌は。

オオタカ側が「夫」と認識しなければ上手く行かない。


でなければ〜 可動式の便利な止まり木としか思っていない。


ーーー強度の孤独から、繊細な為ストレスから最悪体調を崩しーーー落鳥

(鳥類が死す事を、こう言う)


「それは絶対に避けなければ」と恋人は考えた。


今は亡き祖父から数えて、トータル2度目の譲渡先……

「彼女が不安にならない」〜

安定すると言う意味でも子龍しか該当者がいなかった。


オオタカは、多くは12〜プラス数年程が寿命と言われるが、個体によっては20年以上生きるものもいると言われている。

 

子龍が恋人に変わり、日々丁寧に愛し、几帳面な程 大切に面倒を見ている。


桜香との、その”付き合い”は、業務バディの信繁よりもうんと古い。


狙撃手も担当する子龍は、別の顔として、鷹匠の傍流派所属以外〜は、今は亡き恋人と同じく新進気鋭若手「書家」でもある


城主の執務室壁面に恭しく額装して飾られている、来客誰もが感嘆してほ〜っと眺める、豪快な薄墨の巨大書の額は彼の作品だ。

 


「まぁ……んなゴチャゴチャ言ってないで見ろよ」



子龍は”専用カード”に、ぺたりとカメラ事丸々貼り付ける。


「そんなんで、いいんですか?」

「いいんだよ」


子龍は小さなリモコンを手にするとーーー……

 

「”編集無し”で、さてーー…と、何が写ってることやらーーーーーー!」


小型再生機にリモコンを向け、電源をピッと入れると、カード差し込み口に専用カードを真っ直ぐ挿入。


最初はふーっと壁際中空に映像が浮かび上がる。


立体では無い……平面の映像、部屋の人間は固唾を吞み一斉に見つめ始める。



「ーーー結構上手く撮れてるな」



「ですねぇ」

 

「ーーーどうやったんでしょうか?」


「謎ッッ」

 

「この感じでは、腕組みしたんじゃねーーー?

……男よくするしーーー

偉っそうで違和感ないだろうし?」


「成る程ッッ!」

 

「さすが〜〜〜〜信繁さん!」

「班長やるぅ〜!」


ワァワァ大騒ぎの中、映像はゆったり進んで行く。


「ーーーー……え?」


「〜どうしちゃったの?班長?」


「何いってんだ?信繁さん」

 

「……ッッあんの馬鹿〜ーーーーっっ!」


「……!」



映像をウキウキワクワク見つめていた信繁班メンバーは、一気に騒然となる。


ーーーーそれはそうだろう

子どもや女性には無条件に優しいところがある信繁が


それが!よりにもよって妊娠中の女性に、ああしたキツイ態度を取るなど、彼率いるメンバーですら信じがたい物を見る気分だったのだ。




ーーーーー有り得ない




現に今までそんな事は1度足りとも無かった。

 

確かに信繁は、城襲撃犯には鬼神の如くの戦闘員だったが、少なくとも病棟に入院中の女性に、ああいう無常な態度をするのはおかしい。


〜「と言うよりも変だ」

 

信繁班メンバーは皆そう考えたのだ。



「ーーー……ーーー絶対に変ですよ?

あんな風に接する人じゃ無いですよね?子龍さん…


僕とは違う手法の ”理詰め”はまぁーーー

退路を着実に封鎖する頭脳戦、戦法は、賢いあの人らしいっちゃらしいですが。

 

でも何だか、『らしくない』


それに……僕の目から見ても、チョイ恐いし?


正論で押し切って、言いっ放しだなんて……しない人でしょ?


〜僕されたこと無いし。

言ったとしても、必ず逃げ場を用意してくれるもんっっ!」




「……」




「〜ちょっと子龍さん!!」

「ってぇめー子龍〜〜〜!」




「ーーーーー何のことやら」



「〜〜!っちょっと〜〜!子龍さん!」


「コイツ!」


「あーーーーーーーー」

 


「〜……ッッ 『あ〜』じゃないッッーーーー

!子龍さんなんか絶対知ってるんでしょ?!


隠さないで僕らに教えて下さいよっ!」



「ーーー……ぁ〜〜〜〜〜……」


 

「『ぁ〜〜〜〜』?」


「ぉまえだって こえ〜ぞ!雅」


子龍は雅の容赦の無い追求の舌鋒に、急に自分の形勢不利と見たのか、天井の明後日の方角を見始める。


おまけに形の良い唇を尖らし、ヒューヒュー♪、実にわざとらしく綺麗なハイトーンの口笛なんかも吹き始める。


バカにされた感じに、雅の綺麗な笑顔がヒクッと引きつる。


桜桃みたいなプルプルの唇がスーーーッとアルカイックスマイルに持ち上がる。


「サァ〜楽しい楽しい告白タイムですよ…?

いいですかぁ〜?

仲良しこよしの僕達の間に、隠し事は無しですよぅ〜」



「しゃーねーなぁーーーーー…」


子龍はポリポリ頭を掻いて渋々告白する。


「明日サァーーーー”無し”になった、信繁の奴」


「『無し』って……え〜〜っと、資格試験の、”実技の予行演習”がですか?」


「そっ」


「?じゃぁ明日出勤なんですか?信繁さん」


「ーーーそれは違う、有給で休みだ」


「?」


「どう言う事?」


「折角取ったから?」

 

「まぁ堪りまくってるしーーー?、人事課から文句言われたとか?」


「いつもじゃんそれ」



「信繁サァーー試験明日なんだわ」



壁にもたれかかっていた子龍は飄々としながらも、習性?

キュッと長い腕を組んで、しかも嫌みな程長い脚をヒョイッと持ち上げる。



「『明日』って? 何言ってんですか?来週でしょ?

いい加減な嘘、ホラで適当な誤魔化しは僕よくないと思いますっっ!!」


キッと言う顔で雅は子龍を睨みつける。


「ぉ〜〜〜何をやっても可愛い顔は変わんねーぞ? お前お得な奴♪」


「〜〜〜〜〜〜!!」


「嘘じゃねーぞ、本当の本番日、台風来るんだわ。

 

でーーーー……受講生の生命の安全を取って、前倒しにしたんだってさー

信繁が、ブツブツぼやいてた。


”いいですか?”って聞かれたから、”いいですよ”ーーーって賛同したらしいぜ?


でーーー電脳筆記試験トップの奴、アイツのO.K.のせいで『決定』だってさ?


”ノーと言えないジャパニーズ” ってか?信繁


ハハハハハハハハハハーーーー」



「〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

「ハハハハハって……!不憫すぎるだろっっ!それって」


「何で順延じゃねーんだ?普通ソーだろうがっっ!」

 

「班長〜〜〜〜〜〜」


「……気の毒」


「ぁああーーー…」

 

班員皆は口々に(ヨンも含めて)思い思いの感想をてんでに言う。


「そうですよ〜〜〜?

そう言う場合、天候不良は大抵順延で次週〜って言うんじゃ無いんですか?」


雅はカワユイホッペをパンパンに膨らませてジットリ……子龍を睨みつける。


「まぁさ、そうなんだよ、『理屈』ではサ。

だがこういう時、屋外でのが絶対条件の試験は融通が利かないよな。


『来る』ーーーんだよ、台風が」


「それさっき聞きましたッッッッ!」


雅はまた同じ事を!とムッとするが、子龍はケタケタ笑う。


「……じゃなくって、その『順延予定』の日にサ、来襲、あくまでも予想ではあるが、出来たばっかりの『卵』が確認されたんだってさ、それも”2コ”」


「ーーーーーナニソレ」

 

「どうやら時間差で、バラッバラで来そうな〜コイツが、結構デカイらしい。

そりゃ最新気象衛星でも確認出来るくらいだから、そうなんだろうな。


で、資格試験合格をお題目にしていた、資格試験取得講座の有名スクール側と。


航空機飛行艇試験の主催側、つまり政府省庁がさ……

これはヤバい事になったって緊急協議の結果


ーーー『前倒し』なのさ。


因みに順当に『順延』したとしても精々2度〜で、後はダメだ」


「なんで?」


「その後は、他にもレベル難易度の違う、別の飛行艇の試験がギッチギチに会場使用に控えてる。


つまりーーーケツかっちんなのさ。


信繁運が無いよな〜

前倒しでなけりゃ、ハイさようならで、中止。


”ぁあお気の毒に〜〜〜!では済みませんが『半年後』にもう1度。

絶好調にコンディション整えてどうぞ〜”


いらっしゃいませ〜らしいぞ?、んなバカな話を呑めるかよ!」


「〜〜〜〜!!」

 

「マジっすか?!」

 

「ねーわ」


「アァそうさ、ドンだけアイツが貴重な休み時間をぶっ潰しエネルギー注ぎ込んでトライしてきたか!


そんで、多少条件が悪いがテンションの高い気合いの入った状態の今、カタ付ける事にしたんだってさ」


「ーーーーふーん」


「で、雅 ”今度受ける奴”に通ったら〜」


「『受かる』と、ーーー通ったら?」

 

「ナニナニ?」

 

「どうなる?合格するとッッ!」


「ーーーー銀河の何処でも通用するライセンス

飛行艇パイロットとして飛べるらしいぞ?」


「ひぇ」

 

「スッゲ〜」


「驚くのはまだ早い、でもって更に更に腕を磨き『進化』すればッ!

超高難易度の『宇宙航海士』〜


ホラあれ、国防とかが所有する〜

宇宙巡洋艦とかの操作操縦職務業務に携わる、資格試験受験資格を得ることになるのさ!

 

どうだ〜〜スッゲーだろ?男のロマンだ!!」


「女だって格好いいと思うけど!」アナスタシアがぷんと鼻を鳴らす。


「まぁそうだよなーー……わりー〜ナスチャ


ともかくアイツ、航海士の中でも”最高峰”の、国防の専門の隊員でもそりゃもぅ滅多に受からないって言う1等航海士。


どうも狙って視野に入れてるらしい。

俺も流石に聞いて驚いたさ


でももし!

入手、『合格』したらサーーー”飛べる”んだぜ?


自分の腕1本で銀河の星座、『星々の海』をーーー」


「凄い!」

 

「信繁さんそんな立場に今居るんですかッッ!」

 

「宇宙……地球外かぁ……ルナでいいから行ってみてーよなぁ」


「子龍さんはあっちこっち、外交官の息子だから行ってるんでしょ?」


「『そう』だが、『そうでもない』」


「?どういう事?」


「んなちびっ子の時の記憶なんか役に立つかよ

だがさーーーもしも何かで信繁が宇宙に飛び立つ時〜”きっとこのメンバー”だろうな。

馴染んだ人員の方がやりやすいし、チームワークも完璧

 

航海士以外の仕事のアテは山程有るだろうし?

どうだ夢があるだろ?」

 

子龍の話に皆、目をキラキラさせる。


そんな凄い魅惑的な話って美味しすぎやしないか?

仕事……


つまり高額な旅費を払わずに、業務の一環としてタダ


しかもーーー 

一生1度と言っていい大冒険の可能性が出て来たのだ。

 

明るい興奮が場を満たした。



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