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雅の考察 ④


「ーーー……」

 

「すげぇ」

 

「……」

 

「女って怖い」



「フレイヤ王女様がこの身にまとってる素晴らしいドレスは、ラファエル殿下が今まで1度も見たことが無い〜っていうか。


そもそも誰も今まで存じ上げない御衣装です。


フレイ王家のレディが。

〜公式行事式典で着用する事を、内規の『しきたり』で定められた、王室正式な特別の、床にトレーンを引く御衣装です。


もっと長いトレーンでうんと格を上げて、メイドがずっと着用時につききりの方もいらっしゃいますが、王女様はそういうのはお嫌いみたいですね。


デザイン的には、ベースはプリンセスタイプと言い習わす、白絹のロングドレスですね。


様式は大礼装のローブデコルテ、イブニングドレスの最高礼装です。

 

格式が高い行事には、お昼間でも着用が可能ですね。


メダルと房飾り付き、薄いブルー袈裟懸けの、右肩から左下方への斜めがけサッシュベルトが本当に威厳があります。

 

それもその筈、あの日の”メダル”は、艦長に正式に就任が決まった事で〜


”任命式”で

国王の御父上から直々に贈られた、『勲章』ですからね。


レディはこうしてーーーー

多くの王室女性は勲章をドレス姿の場合、優雅に身に付けるんです。


何処の国の王室もそう!

綺麗で〜素敵ですよね……

シルクサテンの色がキラキラ反射して、美しい瞳を更に引き立てています。


勲章を身につけるくらいの立派なお式〜格式あるパーティーですので参加者皆、男性も女性も、それに準じたドレスコードでした。


袖もスカートも膨らみ過ぎず、むしろスッキリタイトで素朴。


パニエも大げさにパンパンな張りを作らず上品な膨らみに抑え、行動派の野性味溢れる彼女にとても似合っています。


ドレスのチュールの透け感も、申し分有りません。


手刺繍の飾り物も、チュールレースの分量も過剰でなく適度、寧ろ少なめなのが返って瑞々しくって堪らなく可憐です。


絶妙に開いたデコルテ

 

細い頸元を飾る〜天然シードパールの至高の芸術品。


王家の紋章を形取る、細密で見事な花房のネックレスが本当にお綺麗に、健康的な肌理の細やかな肌とピッタリ馴染んでます。


指先で思わずーーーそっと触りたくなる、頸に唇を思わず這わせたくなる、誘うような艶やかさ。


全身内側から光り輝く、この清らかで、どこもかしこも眼を引き付けずにおかない崇高さと繊細さはどうでしょう?


これで、彼女に対して


”真剣に恋に落ちない”ーーー男性なんか、僕に言わせれば絶対おかしいです。


ラファエル殿下は生涯2度目の、本心から再び、同じ相手への熱烈な恋に身を焼いたのだと感じます」


雅は感にたえない風情でうっとりと断言する。



「そりゃこんなに美しい、憧れ続けて来た姫君を目の当たりにしたら、頭の中でウニャウニャ男の理屈でこしらえた、小賢しいコ理屈なんかぶっ飛ぶわなァ」

 

「俺だって惚れ直しちゃう!」


「自分見る目はホント正しかったーって自画自賛で天晴れって思うよなぁ♡」


「マジでダイヤモンドの原石みたいなお姫様だよー」


急にザワザワ、部屋中盛り上がる様子に雅は深く頷く。



「ですから、だからこそ王子様の心よりの真剣な純情にフレイヤ様も、流石に断り切れない、熱情に抗えきれなかったんだと思います。

 

だって相手は本気で自分に恋心を捧げて、出来うる限り誠実に向き合って来てるんですよ?


重いと取るか、鬱陶しくて邪魔くさいと感じるかは人それぞれ〜ですけど。


それにもし彼に、瞳に言葉に、少しでも打算の影が浮かんでいたらフレイヤ姫も決してなびかなかったと僕は信じます。

 

数多くの華やかな祝典の場所でも、頑なに流される事が無い姫。


そんな本来理性的なタイプだからこそ、誰とも今までおつきあいしなかった、清純で真面目なレディです。


ええ……ホント、プロファイリング的に信繁さんの仰るとおりです。


で〜ラファエル王子様も、耀く懐かしい思い出からまるで抜け出してきた様な。


ずっと自分が心に思い描いてきた通りの、気高く綺羅々かな、誠実な姫君が麗しく自分に微笑んで。


”長年の苦しい恋心を受け止めて”


優しく話しかけてくれた段階で、何もかも頭からパンッと、ことごとく弾けてふっ飛んだんだろうな〜っと思います。


大王のお気に入りという自らの重大な立場も

 

確実に今後起こりうる両国の不穏な関係も


”殺し合うかも知れない”……可能性も。


ーーー何もかも飛び越えてしまっての超越の先の、物狂おしき情熱があって。


 

当然、避妊はしたんでしょうけれど、おそらく上手く行かなかった。


総てにロミオとジュリエットの如しの、目も眩む熱情が勝ってしまった。



寝所でのロマンスが、甘い情熱が穏やかに過ぎた後。


ーーーー殿下は全然疑わなかったでしょう

腕の中の可愛い愛する人に、自分の気持ちが通じてる事に。


だからフレイを去り、”自分についてきて欲しい”


簡単にポロッと言ってしまう。


そりゃぁ驚いたでしょう?フレイヤ王女様は。


『え?……何言ってるの?私の艦長就任を否定するの?』と。


『私に王立宇宙軍を辞めろって言う事?!』

 

『やっと得た仕事〜夢の実現に向けてこれからじゃないの!』


『……何だガッカリ! この人もタダの男だった訳ね!』


〜〜〜な〜んて一気に夢が覚める。



彼女にしてみれば『意味がわからない』


でも殿下にしてみれば理由が話せない訳ですよ、絶対に。

ーーーー明らかに分が悪い。


風雲急を告げる、内情的には滅茶苦茶に不安定な国家の有様、自身の父親のGOサインひとつで、いつ戦争が勃発するかわからない……

 

元々彼、軍の中枢どころか國落としの作戦を過激に練りに練っている人達の側付きとして。

日々刻々どんどん動く状況を目の前で見聞きしてるだけに。

 

ーーー気が動転するほど焦った事でしょう。


 

そこでーーーー……多分大いに揉めた。


喧嘩になった〜とまでもいかなくても気持ちがプンッと擦れ違ってしまった。



でーー……現在です。


こう考えれば〜世紀の恋〜


大恋愛〜と言う噂にも、全然矛盾はありません。


その割にフレイヤ王女様が、お噂のお相手であるラファエル殿下の元に戻りたがらない点も。


それでいて、相手をそしる憎しみを仰ったり、ふたりだけの秘密を晒したり。


『騙された』だの、激しい怒りをぶちまけたりしない実に奇妙なご様子も


ーーーー全部納得が出来るんです。



……戦争は戦争、別物として。


あの夜、口を濁して自分に多くを語れなかった理由、今になれば相手が抱え込んでいた辛い事情全てがわかって。


自分の身を案じ、ひたすら情熱だけを捧げてくれた殿下に対する罪悪感。


寝所で酷い言葉を多少は投げつけたと思います、自分の姉達の行動パターンを連想すると。



〜だって常識的に考えてもみて下さい。

 

大事の前の少時、幾ら大王様お気に入りの王子といえど、軍部の重大な情報漏洩の疑惑の罪で密かに処刑、彼、暗殺されたかも知れないんですよ?


でもラファエル殿下は、自分の命よりも恋する人の安寧を選んだんです。


彼を誤解し酷い酷いと、おそらくは無闇に一方的に責め立てた自分と。

奉職する自軍との板挟みになって、どんなにか苦しかったかの想像。


彼女も軍籍だけに、ふたつに引き裂かれる胸の内を理解出来、察して。


真剣に向き合おうとしてくれた、誠実なあの素晴らしい思い出の夜の記憶。


 

だって普通だったら、一番恥ずかしくって突っ張り隠したい感情でしょ?

特に地位も名誉もある高貴な男性です。


でも自分を想う気持ちには嘘をつかず、何もかもさらけ出して、ただ恋心を打ち明けてくれた彼には悪感情は決して持っていない……


『でもイヤ、あの国には私、絶対行きたくない』


王女様、妊娠している現在、一言も中絶したいとは言っていないのでしょ?


 

ーーーー僕の考えがおおよそ事実ならば。

姫様が御子の出産を迷うことなくお選びになられた尊いお気持ちも、だったら理解出来ます。


ーーーー…人としてそうじゃないでしょうか?


純潔を是とする国家のお姫様。

 

なのに結婚せず、私生児を産んだって誹られて。


『なんてふしだらな女だ!』


『自分の国を滅ぼし、御父上や母上を殺した仇の息子の赤子だなんて、よくもまぁヌケヌケと、この恥知らずめっ!』


……って、非難囂々、全国民から今後憎悪と共に言われることなんか彼女は賢い故にわかりきってると思いますよ?

  

そんなの先刻承知

だけど……覚悟を決め、腹を据え、なんとか産もうとしてる。


僕〜健気な方だと思います。

真っ直ぐで純情でーーーー強くって。


僕のただの個人の意見ですが、微細ながらお力になりたいと感じます」



雅はそこまで言うと俯き加減の顔を上げる。

 

スーッとキラキラ光る眼差し、

意志が強く、まるで生命の燦めきを放射するかの凜と透き通る表情が現れる。


眩しいーーーとても良い貌


ただ顔立ちが天使のように整ってカワイイだけの雅はそこには居ない。



『参ったな』


『コイツのこの表情に俺っち弱いんだよねー?』


『っったくチックショウしょうが無いなぁ……』


『まぁ、お人好しの、ウチの班長もああいってるしなぁ〜』


見かけは厳ついが心優しき男達、胸の内で皆ブツブツと呟くのだ



「じゃさ、何とかしましょうよ!信繁班長!」

いっとう最初に口火を切ったのはアナスタシアだった。

 

「具体的には?」


「ンなの、これからジックリ考えようゼ、皆でサーーーッ!なぁ相棒」

強かな子龍も信繁に同意同調する。



「但しーーー……条件がある」


「何だ?」



「お前は『惚れるな』よ、絶対に、お姫様に」


「ーーーーーーわかってる」



信繁はゆっくりと、子龍の念押しに頷いた。

 


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