雅の考察 ②
「流石にご自身専用艦……
王家の紋章の、でかでか華やかに目立つペイントをほどこした艦を押し立てて、タダでさえピリピリする雰囲気のフレイに乗り込むことは出来ません。
そんな事断じて無理!
だって、大王お気に入りの末息子が直でやって来るんですよ?
フレイにしてみれば『すわ戦争?!』
トールにしてみれば機密漏洩の『裏切り者?!』
大体訪れる〜フレイに渡る事をソモソモ渡航を最初から父や軍部に止められるに決まってます。
ですから無用の混乱をさせぬ為〜でも自身の要求を確実に通す為。
先に、トール・フレイ両国と友好を結ぶ他惑星にまず自艦で何気に渡り、そこの有力な諸侯の”コネクション”で
ソッチの『客』、就任パーティー招待客の、更に『ゲスト』扱いとして入国。
”ココにはついでに寄りました”
秘密の『お忍びで』〜フレイに渡ったらしいですね。
だからキチッとした正式の記録なんてそもそも無い。
トール政府もフレイ政府もノーガードだった。
事態が露見してからは絶対に ”もみ消し” 行われただろうし?
ーーーその……シンパは、手引きした人間 『人物』は。
”彼の子息” が、殿下の学生時代に特に親しくつき合ったご学友……
トールで共に学んだ元留学生です
友人の……それ相当の強烈なパワーを持つ父君。
正に正しいコネの使い方ですよ」
「成る程」
「雅?……じゃあどうして王子様がフレイに渡ったって言えるんだ?
チャンとした証拠はあるのか?」
「えぇ……
電脳ジャーナルとかの正規のものは調べてもどうにも……全くアップされてませんが
『招待客』の自慢げな私信の写真の中にあったんです。
ホラ見て下さい?
これ、かなり〜ぶれてますが
諸侯からの削除依頼を零れた”貴重なお姿”です
それから『これ』
このハッキリ電脳ジャーナル記事にも小さく写ってる人……
そうこれ、殿下の僕〜側近でしょ?
……ノーマークだったんですね。
僕だったら彼のも一緒になんとか消しますが。
この方は王子様の信頼篤い『乳兄弟』で、どんな時も影の如くピタリと付き添われてる事で有名な高位の方です。
この方がパーティー会場にお見えになってるのに、場に、本命の『主人』がいらっしゃらないのは正直おかしく思うんですよ?
矛盾してます
まぁ『親書』ーーー
証拠が電脳に残らないお祝いの贈り物を……!
”手書きの何か”と ”プレゼント” を。
『命ぜられて直々に届けに行っただけ』
言い逃れしようとすれば出来ない事も無いですが如何にも苦しい言い訳ですね」
雅は先程の11歳の姿のホログラムに被さるように、証拠だという別の肖像映像を隣に並べる。
続いて現在の、キチンとピントの合った美しい王子の近況ものも、比較対象の為に丁寧に中空に投影する。
当然、側近と見なす男性の昔と今と、記事の映像〜 招待客の撮った物。
それも空間に段差を変えて手際よく並べる
「ーーーー成る程な、間違いないだろう」
信繁の答えにコクンと雅は頷く
「殿下はごく少数の側近グループ〜
乳兄弟以外は、コドモの頃から彼を御側で守ってきた、最早家族と言って良い優秀なベテラン護衛官、彼等を連れてフレイヤ姫に面会したようです
もしもーーー……ですよ?
世界でもとっても有名な綺羅々かで美しき貴公子が、それもです
クリーンでスキャンダルの欠片もない美男子がですよ?
自分が晴れて主役の晴れがましい、嬉しくって心躍る栄光の絶頂で、そういうタダでさえもウッキウキの華やかな場で。
高級シャンパンが大いに浴びる様にふるまわれる、信じられない高揚感に充ち満ちた心境の場で。
『ずっと貴女を、子どもの頃から憧れていました
私には貴女だけです
結婚を前提におつきあいしてくれませんか?』
……ねぇナスチャ?
これが ”子龍さんみたいな男性”だったら、ふざけてるっていう考え方も出来ない事も無いです。
『何かの”どっきり”〜?』
『エイプリルフール?』
で、冗談として適当に済ますかも知れないけど?
性格が ”信繁さんみたいなタイプ”
凄く綺麗なブロンド巻き毛のグリーンアイズ。
まるで宗教画から抜け出したエンジェルみたいな男性に、滅茶苦茶大真面目に
『愛してます』
『私には貴女だけです』って告白されたらどうする?」
「ぇえっとそれは〜ーーーーーー」
「ォイ〜雅! そりゃないぜ?」
「ーーー何で俺なんだ?」
ブツブツ言う、顔立ちが整いまくりの上司達に雅はヒョイと頸をすくめる。
で、その場にいた班員は一斉に各各口々に自分の意見を話し出す。
「そりゃ〜この映像みたいな男の子に『好きです』って告白されたらサ。
俺、異性愛やめる自信があるぜっっ!」
「俺も!!今すぐバイセクシャルになってもいい!」
「俺も俺もッッ!!」
「……馬鹿じゃないの?!」
「でもナスチャ……正直どう?キッパリ断れる自信があるの?
ーーー聞かせてよ。
もしもナスチャだったら、フレイヤ王女様の御立場だったら『どうするか?』って?」
「うーーー!」
雅が一切茶化しのない真面目な顔で、節操のない浮かれる同僚に憤然と息巻くアナスタシアに静かに尋ねた。
「それはーーーそれは……」
「ねぇ、パーティーでは楽しいお酒も多量に入ってる。
華やぐ祝電、振るように浴びせられる、自分を褒め称える、お祝いの言葉……
重いストレスから解放された、滅多にないキラッキラの晴れがましい席。
ーーーそんな時の……絶妙な頃合いの告白だよ?
相手は銀河1の評判の美青年
貴女は私の初恋の女神様だったって
しかも ”貴女だけが好きだ”って言ってるし……?
『結婚前提でおつきあいして下さい』
そう言う状況で『つい、よろめいたりしない』って言えちゃう?
ついつい ”勢い” で、普段絶対しない事を『やらない』自信ある?
後からヤバっ……
『しまったっ〜』ーーーーて思う事したことないかな?
まぁ真面目だもんね、ナスチャは……」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ」
子龍はサラサラと髪を掻き、フンと呆れたような声で文句を言う
「そういう、絶対的無理な事言うなよ?
ーーーって いってぇ〜〜〜ーーッッ」
信繁はバコッッッ!と親友を思いっきりはっ叩く。
「ぶつぞっ!」
「ってめー、コラぶってから言うなよっ信繁っっ〜〜〜〜!」
”古典的お約束”、のやり取りを繰り広げる、実に大人げない2人の上役に雅は肩をすくめた。
でも本音では〜ちょっと羨ましい。
信繁も相手が子龍だからこそ、少年みたくギャンギャンのびのび自由に感情の羽目を外すのだ。
彼は他の人間には絶対に、こんな砕けた事はしないのだ。
部屋に詰めた大人達にはそれが重々わかっていたから、つい何だか微笑ましい友人関係にくすくす笑う。
部屋の空気が さらにワイワイガヤガヤ明るくなる。




