信繁班の作戦会議 ②
「じゃっ、今からちょっとこれを見てくれ。
惑星フレイ旧王家、第5王女フレイヤ様のデータだ。
各各気がついた、様々な意見を聞かせてくれ!」
信繁は、班員全員に自分が特別に預かった王女の㊙︎資料を閲覧させる。
彼等も護衛とは云え、樹海でハッキリした容姿を見たわけでは無かったからどうしても必要な事だった。
「ふーん…」
「何だか格好いいと言うよりも、異常に凄いって言うか〜」
「ですよねぇ……〜」
「ぁでも、綺麗な髪のかわいい子じゃないですか!?」
「アァそれだが、今はこの髪はぷつんと切られてる。
資料説明には無いが、拘束後トール軍部の命令で、嫌味で残念な方法でカットされたんだろうな
切り口が相当荒れてたから、きっと素人。
目立つ女が嫌いな、無骨な男が切ったんだろうな、ありがちなパターンで推察するると」
「え〜〜〜〜?可哀相!!」
ナスチャは整った綺麗な眉間に皺を寄せる。
「今後、班長の担当になるんでしたら、様子を探るべく病室の警護に俺らが入った方が良いんじゃ無いんすかっ?」
「いやーーそれはどうかなーーー」
信繁はふーむと顎に手をやる。
「かえって警戒されて、上手く行かない可能性がある。
あの王女様は相当勘が鋭いし、変化球的なイレギュラーな行動も出来る、なかなかの戦術家だ。
もしもここの班員が偵察目的で自分に配備されたって気がついたら、益々頑なになると思う」
「今そんなに気が立ってるのか?」
「あぁ……山猫みたいだった」
「ふー〜〜〜ん」
子龍がフンフン成程と言った感じ、スラリと長い腕で腕組みをするのだが、嫌みな程格好いい。
「じゃぁさ、信繁さん、”数少ない女性隊員”ーーーって事で。
理由のあるやむを得ない条件的、ナスチャを夜間とかに送り込むとか〜
やっぱり〜〜〜
スウスウ寝てる直ぐ近くに見知らぬ男性がいると落ちつかないでしょ?
〜そんな大義名分が出来るじゃないですか?」
「「「お〜〜〜〜〜〜〜!!」」」
雅発案のそれを聞いて幾人かが賛同する。
「それいいじゃ無いですか!班長〜!」
「いっくらなんでも、全く関係者がいなすぎるのも、それはそれで如何にもでワザとらしくないっすか?
ヤッパ見せつけ、リアリティーも大事ですって!」
「そーですよぅ〜!
ソモソモ彼方さんもその道のプロ!な訳ですから、逆にナスチャを通じて、自分が知りたくて堪らない信繁さん情報を、引き出そうと試みると思いますよ?」
「王女様気分が悪い頃だ。
そうだろ? 好奇心がたっぷり満足する格好の暇つぶしさせてやれよ」
「わかった子龍、配置を1度城主に提案しとく。
確かに夜間はいいアイディアだよな。
彼女が、夜型かどうかはわからないが、人によっては気分がアップダウンしやすい躁鬱が激しい時間帯になる。
同じ性別なら、声が掛けやすいかも知れないしな」
「任せておいて下さい!」ナスチャは元気よくハキハキ嬉しげに笑う。
「でもなるべく自然体で頼むな。
ウチの班員であることは隠す必要は無いが、今ここでの話は内緒だぞ?」
「わかってますって!信繁班長」
その時だった、突然いきなり子龍から物言いが入ったのだ。
彼はニヤッと、整いすぎの綺麗な顔で悪魔みたいに笑う。
「あのさぁ、俺から1度お前に聞いておきたい。
だがーーーー絶対に嘘は無しだぜ班長?
お前、こう言う、婚前交渉の果ての妊娠〜”避妊もせずだらしがない”っ〜て、元々性格的に嫌いだろ?
そう言う部分はどう思ってる? ”自業自得” ”自己責任” ーーーか?
本心では滅茶苦茶、状況を軽蔑しているのに、誤魔化しの甘ったるい事言われた日にゃ 相手はいい面の皮、迷惑だ。
さぁて、さてさてさて、どう思ってるんだ? 優等生班長さんよ??」
「ーーーーーそれは」
「姫に嘘をつき通すつもりなのか、別にそれならそれで構わんゼ?
世の中 綺麗事じゃ収まらん、どうせグレーな事ばっかり、答えのない世界だ。
しかしお前の心の中の真実はどうよ?
どうせ事が本格的に始まれば、お前の下に付く部下の俺達は、どうあっても真剣なフォローに回らざるをおえなくなる。
何時もの事だ わかるだろ?
だからこそサ、俺はお前のーーーー『どう思ってる』か?
なぁ相棒、キッチリハッキリ、本心本音の所を聞きたいんだ。
サァ言えよ? 俺の相棒、今ここで。
ここなら何言ったって洩れたりしない、誰ももらしゃしねーぜ?
でもいいか? 誓って本当の事を話せ俺達にーーーー今すぐ」
相棒の子龍は信繁にストレートに、実に聞きにくい問いを投げかけた。
しかし信繁の真っ直ぐな善良な性格を熟知する誰もが、実際にモヤモヤと心の中で、今回の事について疑問に思っていた事だったから尚更皆、息をのむ。
シーーーン
溜まり場の室内は静まり返る。
「そうだなーーーーーーー
俺も概念としてはそうだ、お前の言う通りだ、否定はしない。
だがーーーー」
子龍の厳しい追求、問いかけに対し、信繁はボソッと暗く言葉を落とす。
「『だが』ーーーー何だ?」
「目の前に居る、息も絶え絶えで食事も満足に取れず、今正に苦しんでいる最中の相手に偉そうにーーー
子供を産むことのない男の自分が、個人的な考えを押し付けようとは思わんぜ?
弱ってる相手にするのはフェアじゃないし、大体が今するべき事じゃないだろ?
第一、人生そうそう理想通りには行かない。
人生、『まさか!』 ーーーソイツの連続だろ?
俺だって『まさか』ーーーー!
自分が家中皆殺しの凶悪殺人犯として、あと少しで極刑、死刑になりそうになるだなんて夢にも思わなかったさ。
思い返しても悪夢みたいな日々だったよ」
「ーーーーーふぅん」
「この王女様、多分、今まで脇目も振らず勉強ばかりの人生だったろうな。
脳内の訓練だけでなく、体を使う技能も卓越してるのがその証明だ。
体を使う訓練はストイックに自分をコントロールして生活を律し、自分に厳しく負荷を課せなかったら、とてもこうはいかない。
しかも殆ど、周りは上に行けば行く程、肉体も身体能力も才能も、ぶっちぎりに卓越した、選りすぐりの男性ばかりが自分の相手だ。
ナスチャ程、恵まれた身長と体幹が生まれついてあればともかく。
彼女の身長のレディで、空挺目指してトップに立つには、十二分に恵まれているとはいえない。
日常的に男連中からの嫉妬〜
排斥とか嫌がらせとか、相当な逆風も普通にあったと思うぜ?
ーーーにもかかわらず、負けなかった。
幾ら王家の人間だって言っても、艦長になることは簡単じゃなかったはずだ。
正直恋愛どころじゃないだろ
経験的に、そう言うタイプの真面目な人間が、子龍の言う様な立場に〜
『どうしてこんな事になった”のか?』 俺にもわからない、理解出来ない。
何故ならば、彼女のタイプが1番しそうにない人種だと思うからな。
一体全体…… 本当に何があったんだろうな?
言いたくは無いが ”無理矢理”とか ”騙された”
ーーー無知を利用しつけ込まれた、一服盛られたんじゃないといいが?
自分はコッチの可能性の方が、現実には実際高いと睨んでいる。
美しい『相思相愛』じゃなくてーーー実態は」
信繁はひと息に話すと、小さく溜息を吐く。
その表情には微かな憐憫と痛ましさ、心配、隠しても隠しきれない優しさが滲み出ており、今語ったことが信繁の本心だと裏付けている。
「……ふぅんーーお前らしいな、悪かった。
済まんーーーつい嫌な事言った、ゴメンな?俺の親友、大切な相棒」
散々悪態を突きまくった子龍は案外サッサと謝罪する。
「別にいいぞ」
何時ものお約束の様に、信繁の方もヒョイッと肩をすくめ、その対応に周囲にホーーーーッと緊張がほどける安堵の空気が流れた。
口の悪い子龍はしょっちゅう毒を吐く。
が、こう言う、後を引かないサッパリした竹を割ったような気質が美点である。
信繁もそう言うところが内心とても気に入っている。
思わずカッ!と、乱闘じみた大喧嘩になる寸前、いつも子龍は自分が納得出来れば無茶な意地を張らず、必ず自ら折れるのだ。
信繁とは和やかに常に関係が修復出来、良好な関係を築けた。




