信繁班の作戦会議 ①
「え〜〜〜?何やってんですか信繁さん!
大切な試験の実技……って、実地の予行演習って確か明後日ですよね?
信繁さんわざわざこの前、有休まで取って準備に当ててんのに〜〜!
僕らだって邪魔しないよう、試験勉強に集中させようとすっごい気を遣ったのにぃ!」
ようやく信繁が現在「信繁班」の詰め所化している、某コンピュータールームにたどり着き、カクカクシカジカ〜
城主から命じられた業務を掻い摘まんで説明すると、技術士枠で採用の雅が高い素っ頓狂な声を上げる。
〜現在、他の班員達と記録を検証中の雅〜
信繁の相棒〜
子龍が指揮を執った、本日訓練内容の総括を、目にも止まらぬ手さばきで俊敏にタッチパネルを駆使して記録の真っ最中だった。
子龍は?と言うと〜
「アレレ?中々帰ってこないなぁって思ってたら、なんでいきなり、そういう突然、超ーーー面倒事になるんだよ相棒??」
城女性スタッフ達がうっとりした瞳で、キャァキャァ騒いではばからない漆黒の髪を、これまた彼女達の心をキュンキュンざわつかせる長い綺麗な指でサラッと掻き上げる。
事情を知り、美しく気味が悪い程整った貌が、スゥ……と一気に険しくなった。
「馬鹿か〜〜〜たく信繁ぇーーーー
第1それ、俺ら防衛を担当する部署の業務内容じゃないだろ?
法曹か精々、行動心理分析の奴らの仕事だろ?
カーーーーッ、何で持ってくんのかなぁ〜〜全くの畑違いの仕事だろ?
なんで押し切られる?!
あのドS魔女に、いい様に押し付けられたんだろ?!
それにだ、他の課のしくじった事の代行、尻ぬぐいまでどうしてしなけりゃなんないんだ?
アァぁーーー?
ひょっとしてお前サァ、これってもしや事後報告か?!
さては俺達にこうして話すって事は、もう受ける気満々なんだろ?
完全にその仕事っっっ」
「ーーーーーーーー」
黙り込んで極めてバツが悪そうに、チラッと部屋の天井を見上げた信繁。
子龍はそんな自慢の相棒、優秀な班長の様子にギャ〜〜〜ッと吼えた。
「オイオイ勘弁してくれよー」
「げ〜〜マジなんかよ〜……」
「カーーーッッッ嘘だろ班長?」
「あ〜〜〜まぁた、こき使われてぇぇーーー……」
小さな部屋を埋め尽くす高身長の厳つい隊員達は、毎度毎度のこととはいえ、各各柄にもない繊細な溜息を漏らす。
しかしーーー
今回のこれはあんまりにも班長、もしかして人が良すぎなのではないだろうか?
「でもさ? よっぽど困ったって事だよね?信繁班長。
あのですねぇ〜私だったらプンスカヘソ曲げて。
でもどうせ、誰かに説得されるんだったらぁ、班長みたいな人に『お願い』されたいと思うなぁ〜
『そのへんを汲み取ってね♡』って今回頼まれたんじゃないのかしら?
大体、交渉人の人達、どっか、や〜な人を見下した感じで私好きじゃないし?
私だったら班長がいい! あんな人達ヤダっっ!」
拳を握りしめ力強く言い切ったは、信繁班で最も長身、身長が信繁を越える驚きの2m越えの父系がロシア人ハーフ、ワンサード(one-third。1/3の事)であるクォーターの女性隊員アナスタシアだった。
既に腰の位置が違う〜〜全然違う!!
彼女は自分の事を
「”ナーシャ” ”ナージャ” ”ナースチャ”じゃなくって、ナスチャって呼んで♪
『ス』は小さめな発音で言うと、絶対プリティ〜だと思うの♡」
愛称を「その方が可愛いから!」
明度も彩度も高い、ピカピカのマロンカラーの長い髪を丁寧に編み込んだ小さな頭をフリフリ〜
キラッキラに綺麗に澄んだ水色の眼を嬉しげに瞬きしながら、事あるごとに言っていた。
ーーーーと言うのも無類の「カワイイ物好き♡」
某競技、元オリンピアンの彼女は目下、爆発的ヒット中の子猫ヌイグルミに夢中だ。
そうした性分、豊で柔軟な感性の実にアナスタシアらしい優しいナイーブな意見に信繁は耳を傾けた。
「???しかし本当にそう言う理由なのか?」
女性の心理は今ひとつわからない。
「まぁ確かにナスチャの意見も一理あるかも?だな
知に納得出来ない〜
交渉に失敗したとなると、やっぱ最後は『色仕掛け』って奴?」
ーーー子龍の突っ込みは、身も蓋もない。
「ッッ〜〜色仕掛けって、それだったらお前、子龍の方が遙かに適任だろ?」
「え〜〜ダメですよ、信繁さん」
雅は「え〜〜〜?」
眉をしかめてブイッと口を尖らせる
「だって言うこと聞く代わりに僕だったら……!」
「????」
『だよなぁ……』
信繁以外、その場の人間は全員一致で、雅が言わんとする続きを素早く察する。
「『結婚して!』ーーーって言うと思います!!」
雅は自信たっぷりにフフンと鼻を蠢かす。
『『『『ーーーやっぱり〜ぃ……!!』』』』
そう、フレイヤ王女は惑星トールに「待つ人」が居る身なのだ。
これ以上、”益々揉める元”ーーーは作らないに越した事はない。
「昨日僕が、執務室に信繁さんの事をこき使い過ぎっ、いい加減にしてって直訴に行ったせいでしょうか?
そんで敢えて嫌がらせで信繁さんに〜〜〜??」
「いいやそれは無いと思う、雅」
信繁は自分の行動の責任を感じてしまい、ションボリ項垂れてしまった様子に対し、力強く断言する。
「そうでしょうか?」
「あぁ今回そんなんじゃないよ」
信繁は尚も不安そうに言いつのる雅に、ニコッと自信たっぷりに微笑む。
茶色っぽい瞳がキラキラッと悪戯っぽく輝く、たまらない微笑み。
邪気など何処にも見当たらない。
雅は堪らず下を向く。
〜絶対に認めたくはないが、やっぱり憧れの自慢の班長は、確かにこの作戦最適任者かも知れない。
『だったら、少しでも良い方、早く行く方に協力しなけりゃいけないですね!』




