2 予知夢
本日連続投稿です。ご注意ください。
私は侍女を連れ、王都の屋敷を出て日課の散歩を今日も楽しんでいた。
初春のまだ冷たい風を全身に浴びながら、大きく息を吸い川縁を歩く。
川は冬から春へと移ろう柔らかな日差しをすべて吸い込むように濁り、風光明媚な観光地に流れるそれとはまるで違っていた。
都会の川だ。
向かいから、買い物帰りだろうか。籠を持った女性が、子供と手を繋いで歩いてくる。
「お母さん、おうちまだー?」
「まだよ。もうちょっと頑張って歩いて」
「お母さんー、ここくさいよー」
「えぇ? ……あぁ、そうね。川から臭いが上がってきてるのね」
風に乗って、2人の会話が耳に入ってきた。
(臭い……気になるかしら……?)
王都生まれ、王都育ちの私には、その感覚がよく分からなかった。
そう思ったまま、親子とすれ違い、歩き続けようとした、その時──
「あなたは、エルンシュタイン農業社社長のご令嬢ですか?」
不意に背後から声をかけられ、私は足を止めて振り向いた。
「えぇ、そうよ。あなたは……?」
逆光で、相手の顔はよく見えない。
厚手のコートにハンチング帽、ウールのズボン。労働者階級のありふれた服装だった。
「あなたに恨みはない。だが……君も、そちら側の一人だ」
意味を理解するより先に、腹部に強烈な痛みが走った。
「っ!? あっ……ぐぅっ……!!!」
視線を落とすと、お腹からナイフが生えていた。
違う。刺さっている。
私は、刺されたのだ。
景色が、ゆっくりと沈んでいく。
女性の悲鳴が聞こえる。
先ほどの母親か。
周囲は私と男をただ遠巻きに見ている。
「誰かっ……助けっ……!」
まるでこの瞬間だけ時間が引き延ばされたかのように、周囲の動きがスローモーションで見えた。
地面に崩れ落ちた私は刺した相手の顔を見ようとして地面から視線を上げた。
相手は、刺した時の姿勢のまま微動だにしない。
逆光で顔は見えなかった。
ただ、その左手の薬指──蔦のような意匠の指輪が、なぜだか異様なほど鮮明に目に焼き付いた。
そして、そのまま、
私の意識は、闇に落ちた。
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