第1章妖怪飛脚 とある男 その5
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# とある男 その5
今回、YOSIWARAの街角において、二本の刀を腰に差した、とある男というか、案山子男と、河造が、ついに遭遇したという話まで話していたのだが、この遭遇について少し話しておく必要がある。
とある男というか、案山子男は、それがYOSIWARAで評判になるほどに、雨が降っても、風が吹いても、何日も何日も郭生まれの河造が、YOSIWARAの通りに姿を現すのを待っていた。
とある男というか、案山子男は、ついに、河造がYOSIWARAの通りに姿を現すのを見て、「ヤッタ!」と思った。とある男というか、案山子男の念願はついに叶ったのである。
とある男というか、案山子男は、自分の方に歩いてくる河造の元に駆け寄り、小柄の河造を両手で抱きしめ、そして、自分の頭上:宙高く抱え上げた。
一方で、郭生まれの河造の方では、YOSIWARAの通りを自分の考えに没頭し、歩いていると、突然得体の知れない何者かが自分のところに駆け寄り、自分を怪力で宙高く抱え上げたのである。それは、河造にとっては、あまりに突然のことであったので、河造の身体は完全に硬直してしまった。河造は、ようやくとある男というか、案山子男が、河造を地上に降ろすと、地面にへたり込んでしまった。
獣の餌食になった小動物のように、自分に襲いかかってきたものの姿を見極めた。
「富三!」
富三というのは、とある男というか、案山子男の名前であった。
覚悟はしていたが、バチ当たりなことをやった報いを受けるときがきた。身から錆とはこのことだ。そう、河造は、思った。
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ことの始まりは、一年ほど前のことである。一人の使いが、河造のところにやってきた。使いが河造に言うには、使いの村で、ひどい病人が出たということだ。その病人というのは、村の代表を務めている人物で、河造のことを知っているという。それが富三であった。富三は、長い間患っており、最近では、病はいよいよ重くなり、床で寝込んだまま、食べ物にもろくにないという。村では、富三に今死なれてはならないので、村の会合で、富三を医者に診てもらうことに決めたという。村のものたちは、富三を医者に診せるにあたって、富三の村には十分な診療代を払える金がなかった。さらに問題は、富三をどの医者に診せれば良いかという問題であった。
富三の村から、河造を訪ねて使いの者がやってきた。河造に言うには、富三という人物の病を診て欲しいという。
河造は、天下に何人もいないような優秀な医者であると、富三は、信じているという。
河造の方では、富三という名前には、覚えがなかった。
河造は、医者のような仕事もするが、自分では、自分のことを小説家、少なくとも物書きをもって任じていた。確かに、河造の作品は出版されていた。
医術に関しては、河造は正直見よう見まねの力量であった。
しかし、収入の道と言えば、親が河造のために残しておいてくれた蓄え、不動産から得られた定期的な収入があるだけだった。しかし、そのような収入だけでは、河造の遊び人生活はまかなうことが出来ず、河造は、借金やたかりの常習犯であった。
河造は、ハッキリとした確信も持手ないにもかかわらず、金ほしさに使者の申し出を受けて、富三の診療のために、人里から離れた富三の村へ行くことにした。




