第1章妖怪飛脚 とある男 その3
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とある男 その3
とある男の姿が、YOSIWARAの街角のあちら、こちらと場所を変え、出没するのが見られるようになって何日もの日が過ぎた。
そして、ついにその日がやって来た。
そして、ついにとある男は、自分の探していたものを、YOSIWARAのとある街角で発見したのである。
とある男は、自分が探し続けていたものをついに見つけた喜びのためか、彼は案山子とあだ名が付けられるほど、存在感のない影のような男なのだが、このとある男の表情に言いようのない激しい感情があふれてきた。
とある男は、青二才の遊び人風の身なりの男に手を振った。とある男が、手を振った相手である青二才の遊び人風の身なりの男も、とある男に手を振り返した。
二人の男は、互いに駆け寄った。
とある男の前に現れたのは、YOSIWARAのぼっち男として知られる人物であった。
このぼっち男をYOSIWARAの人たちは河造と呼んでいた。河造は、YOSIWARAの名のある遊郭のひとり息子として生まれ、その遊郭という一家の家業を引き継ぐものとして期待されていたのだが、河造は、幼い頃からひどく病弱で、成人するまで生きていることはないだろうと医者は診断していた。いろいろな占い師に占ってもらっても、それらの占い師たちは、誰もが決まって、河造の人相や手相から、夭折、つまり、早死にの人間の特徴ばかりを読み取ってしまうのであった。
そして、医者や占い師たちは口をそろえて、河造を遊郭の主人の跡取りとして期待するのではなく、河造本人の短い余生を本人の好きなように生きさせてあげるべきだと口をそろえてすすめた。河造の両親は、そういうことから、家業の遊郭を自分たちの代で廃業することに決めて、河造本人には、河造が好きな学問の道を歩めるように、河造のために財産を残すように心がけた。
結局、河造は成人するまで生き延びた。河造は、成人しても死ぬ気配は見られなかった。河造は、成長して何の仕事も身につかない大人になった。
河造は、その頃、YOSIWARAによく見られた「自由人」を気取った。当時のYOSIWARAの「自由人」と言えば、乱暴ものが通り相場であったのだが、河造は、そういう荒くれという類の人物ではなく、繰り返すが典型的な、青二才の遊び人という若者であった。ただ、河造は、屁理屈ばかりをいうので、河造と付き合うのは骨の折れることであった。




