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第1章妖怪飛脚 とある男 その2

ゆっくりですが、着実に書き進めていきたいと思います。

# とある男 2


いかにEDO時代のこととはゆえ、とある男が常に放つ異臭。とある男を覆う干からびた泥パック状態のどろの事態は、これがいかにEDO時代の人々にとっても、尋常ならぬものに思えた。


このとある男というやつは、どういう次第で、干からびた泥まみれの状態を維持するのであろうか? 自分の悲惨な状態が気にならないのか?


とある男の一文もないすっからかんの財布が第一の原因であろう。


しかり、とある男が、風呂に入る金がなかったとしても、水浴びできそうな水場など、探せば、そこらにいくらでもある。


それでなくとも雨に当たれば、いくらかでも、とある男のその身体全体を覆う土塊つちくれの幾分かを落としてくれそうなものである。


確かに、とある男は、雨をおそれてでもいるかのようである。


とある男は、雨が降り出すと、必ず自分の近くに軒下のきしたなどの避難場所を探して、そこに駆け込むのである。


あるいは、自分のねぐらである寺社の床下などに駆け込むのである。


さて、明らかに、一文なしではあるが、とある男は、物乞いではない。


YOSIWARAには、YOSIWARAという繁華街が日々に生み出す生ごみを当てにして、その生ゴミで空腹をなんとかしのいで生きている物乞いは多い。


YOSIWARAでそういう物乞いは、普通に見かけるのであるが、とある男をそのような物乞いと一緒にしてはならない。


とある男は、物乞いたちとは、違った行動をとり、もとより物乞いたちとはたもとを分かっている。


とある男は、徒党を組むことはまったくない。


物乞いの群れの中には、とある男を見かけない。


では、とある男は、どうやって食っているのか、誰か、とある男の世話をしている人間はいるのか?


とある男は、謎の多い男である。


家族は?


いったい全体、口はきけるのか?


ところで、YOSIWARAの噂によると、とある男と、口をきいた人物がいるという。


身元を確認するために、とある男は、役人から事情を聴かれていたのだ。


それが真実であるかどうかはさておいて、このとある男の言い分に従うと、とある男は、ある人物を頼ってとある男の田舎からEDOに出てきのだという。


EDOに出てきた理由に、「仇討ち」というのがあるらしい。


「仇討ち」と考えると、とある男の腰の二本差しの剣の理由が分かる。



また、別の話であるが、これもまゆつばものの話かもしれないのだが、


とある男を、ここまで育てたのは、正体の知れない魔性の者。息絶えた侍と、そのとなりで死んでいたその妻らしい女性。その腕に抱えられていた赤子。この魔性のものが、この赤子を連れ去り、大切に育てたという話のほうがしっくりくる。


正体の知れない魔性の者に、つまり、この時代の流行の言葉で言えば、「妖怪」。この「妖怪」が、捨てられていた赤子を拾って育てたということである。



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