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午後になり姫様とお菓子作りの時間になった。

決して広いとは言えないキッチンに美しい姫様が居るのに違和感を感じつつ用意をしていく。

姫様には私のエプロンをお貸ししたが、少し使い込まれたもので申し訳なくなった。


「こんなエプロンしかなくてすいません。もっと可愛いのがあればいいんですけれど」


シンプルなピンク色のエプロンなのに姫様は喜んでつけてくれた。


「エプロンなんて初めてよ。ありがとう」


エプロン一つでお礼を言ってくれる。

王族というのは独特のオーラがあるのか、美しい姫様だからかお礼を言われただけなのに大変ありがたい気持ちになる。

気を取り直して、机の上に用意した道具からボウルを出して姫様の前に置いた。


「この中に薄力粉とバターを入れてこの道具で斬るように混ぜ合わせてください」


姫様は言われた通りに綺麗な手でボウルに入れた薄力粉とバターを混ぜ合わせた。


「で、水を入れますね、これは少しです」


水を入れて粉がひとまとまりになった。


「これはしばらく寝かせておきます。パイシートができあがります。待っている間にカスタードクリームを作ります」


「段取りがいろいろあるのね」


「準備と慣れですかね。カスタードは牛乳、砂糖、卵黄、バニラビーンズですこれを混ぜ合わせて火にかけます」


姫様は用意しておいた材料を計量カップで量って鍋に入れて行く。


「そろそろいいですかね、これを冷ましますので机の上に置いておきましょう。火傷に気を付けてくださいね」


私の注意を聞きながら姫様はおっかなびっくりという感じで机の上に熱い鍋を置いた。

見ている私も鍋をこぼしてしまうのではないかとはらはらしてしまったが大丈夫だった。


「ではパイ生地を伸ばしていきましょうか」


置いておいたパイ生地をボウルから出して板の上に粉を振っておいた。


「粉を振っておくとくっつかないんですよ」


私の説明に姫様は真面目に頷いてくれている。


「この麺棒で薄くのばしてください」


箸より重いものを持ったことが無いのではないかと思うほど細い腕で姫様は麺棒でパイ生地を伸ばした。

それを型に入れる。

キッチンの片隅に保存してある大きなビンを取り出して机の上に置いた。


「これは私が春に作っておいたチェリーのコンポートです。砂糖で煮て保存しておいたものですね。これを今回は使いましょう」


スプーンでビンから甘く煮たチェリーをお皿に盛る。その一つを姫様に渡した。

真っ白な手のひらに置かれているチェリーを戸惑ったように見ている姫様。

姫様はつまみ食いなどしないのだと思いついたが私は平静を装った。


「どうぞ、食べてみてください」


戸惑いながらも姫様はチェリーを口に入れる。


「とても甘くておいしいわ」


「果物をこうして保存しておくとお菓子料理などに仕えて便利なんですよ」


「そうなのね、私が結婚したらサラにレシピを教えてもらいたいわ」


「喜んでお教えしますよ」


コンポートしたチェリーをパイ生地乗せてもらいあらかじめ余熱しておいたオーブンへと入れる。

さすがにオーブンは熱いので私がやった。

チェリーパイが焼きあがるのを待つ間、朝採ってきたミントとレモングラスのハーブティーを入れる。

キッチンに座っている姫様の前にカップを置いていると、アルベルト様がやってきた。


「いい匂いですね」


「サラに教えてもらってチェリーパイを焼いているのよ」


ニッコリと笑う姫様にアルベルト様は頷いた。


「なるほど。ところで荷物が届きましたよ。姫様のお着替えなどが入ったカバンはお部屋に置かせていただきました。あとで確認をしてください」


「バイウェイが来たの?」


目を輝かせる姫様にアルベルト様は首を振った。


「違う人です」


「そう」


ガッカリしてしまった姫様に私はお茶を淹れた。


「アルベルト様もハーブティー飲みますか?」


「今朝採ったやつか。ありがとう」


椅子に座ったアルベルト様にもお茶淹れて私も前に座った。

アルベルト様の手には大量の書類の束。


「姫様のお荷物と一緒に仕事も渡された。たまっていた書類をやらないとな」


「大変ですね」


「姫様にもありますよ。公務系の書類が」


「後でちゃんとやります」


しょんぼりしながら姫様は頷いた。

アルベルト様はお茶を一口飲んで私に笑みを向けてくれた。


「美味しいな」


しばらくして焼きあがったチェリーパイを取り出して切り分けた。


「冷めてからの方が美味しいと思いますけれど、どうぞ」


姫様はチェリーパイを一口食べて美しい頬笑みを浮かべて私を見た。


「とてもおいしいわ。ありがとう。こんな私に教えてくれて」


金色の美しい瞳からポロリと一粒の涙がこぼれた。

お菓子作りを教えただけなのにここまで感動してくれるなんて。

私は慌ててハンカチを差し出すと、姫様は受け取ってそっと拭いた。

涙を流す姿すら美しい。


「確かにおいしいですよ」


アルベルト様も一口食べて褒めてくれた。

チェリーをフォークに差してまじまじと見つめている。


「これ、コンポートにして保存しているの?」


「そうです。よくわかりましたね」


私が言うとアルベルト様は頷いた。


「俺の田舎の祖父の家でもいろんなものを保存していたから。懐かしいなぁ」


目を細めてチェリーを見て一口食べた。


「種を取り出す作業が大変だったな」

「少し面倒ですよね」


アルベルト様の田舎の話を聞きながら私たちは午後のお茶を楽しんだ。



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