↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/109

第95話 花開く笑顔

ルシアン再び。

今回は湊も一緒です。


サクヤヒメと呼ぶ理由を、ルシアンがさらに熱く語ります。


ロビー。


宿泊客への案内を終えた咲也が顔を上げる。


そこで男とサングラス越しに目が合った。


シアトル・ノクターンズのキャップ。

整った顎の輪郭。


男が微笑む。


「やあ、サクヤヒメ」


咲也は目を閉じた。


やめろと言っても、その呼び方は変わらない。


営業用の笑みを浮かべる。


「こんにちは。ミスターヴェルナー」


「お部屋はいかがですか。

お困りのことはございませんか?」


ルシアンは満足そうに頷いた。


「ああ。無いよ。

さすが日本だね。

細かいところまで行き届いていて、自宅より快適に過ごせているよ」

ハハっと笑う。


「それは良かったです」

思わず口元が綻ぶ。

宿泊客からそう言われると、素直に嬉しい。


「ただ」


「君が一緒にいてくれたら、もっと快適なんだけどね」


さらりと言われ、


げんなりする。


だが顔には出さず、


曖昧に微笑む。


とりあえず流すのがベストだ。


まともに相手をしていたら疲れる。


ルシアンは楽しそうに笑った。


そして。


咲也の手に触れようとする。


その時だった。


「こんにちは」


穏やかな声に、ルシアンの動きが止まる。


咲也が目を瞬いた。


「蒼井くん?」


いつの間にか、湊がすぐそばまで来ていた。


ルシアンへ軽く会釈する。


柔らかな笑み。


失礼なところは一つもない。


だが。


その立ち位置が絶妙だった。


咲也のすぐ隣。


結果として、

伸ばしかけたルシアンの手は行き場を失う。


ルシアンが不思議そうな顔で首を傾げた。


湊は変わらず微笑んでいる。


「お知り合いですか?」


咲也へ尋ねる。


「宿泊のお客様だよ」


咲也が頷いた。


「ひどいな。サクヤヒメ。

そんな他人行儀な……」


「サクヤ……ヒメ?」


湊がキョトンとする。

「ああ。気にしないでくれ。こちらのお客様の、癖みたいなもので……」


「よくぞ聞いてくれました」

しかし咲也の話を遮り、ルシアンが両手を広げて、得意げに話し始める。


こうなると止まらない。

諦め混じりのため息をつく咲也をよそに、ルシアンは楽しそうに続ける。


「正式にはコノハナノサクヤヒメノミコト。

日本神話の女神の名前さ。

桜の花の語源ともされていて、それはそれは美しい女神なんだよ」


「それがなんで高宮さんなんですか?」

湊が首を傾げる。


ルシアンは、ばっと咲也へ手を向ける。


「彼が笑えば、スタジアムが沸く。

まるで花開くようにね。

その魅力は、かの花の女神の化身と言っても過言では無いね」


ーーいや。過言だろ。


心の中で、思わずツッコミを入れる。


頭が痛い。そっとこめかみに手をあてる。


「だからサクヤヒメなのさ」


「なるほど。

高宮スマイルですね」


湊は顎に指をあて、呟く。


「確かに……そうですね。

あの笑顔は魅力的です。とっても」


目を細めて深く頷いた。


「は?」


ーー今なんて言った?


顔が熱い。

なんだろう。

ルシアンに言われても、なんともなかったのに。


湊を見られなくて俯く。


「そうだろう」

ルシアンの満足そうな声が耳に届いた。

ルシアンの褒め言葉は平気なのに、

湊に褒められると照れてしまう咲也でした。


次回は、ルシアンと湊の意外な過去が少しだけ明らかになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。