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第87話 帰る場所
帰宅後の湊の話です。
夜更け。
湊は静かに部屋の鍵を開けた。
リビングは明かりだけが残されている。
冷蔵庫を開けると、ラップのかかった夕食が並んでいた。
咲也が用意してくれたものだった。
小さく笑みがこぼれる。
シャワーを浴び、温め直した夕食を静かに食べ終える。
食器を片付け、部屋の灯りを落とした。
⸻
寝室。
湊は、静かにベッドへ入った。
隣では咲也がこちらに背を向けて、穏やかな寝息を立てている。
その背へ、そっと手を添える。
ゆっくりと頬を寄せた。
規則正しい鼓動が伝わってくる。
それだけで、不思議と心が落ち着いた。
「……蒼井くん?」
半分眠ったようなくぐもった声。
「おかえり」
その何気ない一言が胸に沁みた。
「……ただいまです」
小さく返した。
そして、そっと抱き寄せた。
咲也が小さく身をよじらせた。
「……くすぐったいよ、蒼井くん」
思わず微笑んだ。
愛おしい。
もう少しだけ、この温もりを感じていたい。
湊は目を閉じた。
――いつか。
ちゃんと、話しますから。
湊にも、新しい「帰る場所」ができたようです。




