第81話 ベルの鬼
遅い昼休憩の続きです。
その頃ロビーでは――。
ロビーへ戻る。
違和感。
静かだ。
この時間帯はまだ忙しいはずなのに。
代わりに。
疲れ切ったスタッフ達がいた。
司がこちらを見る。
「おかえりなさい……」
「どうした」
いつも元気よく輝いている瞳がくすんでいる。
「高宮先輩……」
佐久が泣きそうな顔で見上げてくる。
「支配人を止めてください……」
その後ろ。
支配人が爽やかな笑顔で立っていた。
「おかえりなさい、高宮さん」
「ただいま戻りました」
「ちょうど良かった」
支配人が微笑む。
「古澤さん達が少し疲れたみたいで」
「少しじゃありません」
古澤が肩で息をしながら言った。
「全力で回すものだから、みんな休む暇もなくて」
「あら、そう?」
支配人が首を傾げる。
「でも、みんなできちゃったよね。すごいじゃない」
古澤は言葉を失った。
がっくりと肩を落とす。
咲也は思わず苦笑した。
「ありがとうございました」
「おかげで落ち着いてますね」
「いえいえ」
支配人が手を振る。
「どういたしまして」
それから周囲を見回して、
「じゃあ僕は自分の仕事に戻るね」
にっこり笑う。
「嫌われそうだから」
「自覚あるんですね……」
司が小さく呟いた。
「ん?」
「なんでもありません」
支配人は楽しそうに笑う。
「じゃあ、みんな頑張ってね」
軽く手を上げると、
そのままロビーの奥へ消えていった。
しばらくして。
咲也が手を叩く。
「じゃあ、仕切り直しましょうか」
全員の視線が集まる。
「みんな、だいぶ疲れたでしょう」
司が力なく頷いた。
「少し力を抜いていきましょう」
「うぅ……」
司が机に額をつける。
「高宮先輩が帰ってきてくれて良かった……」
「本当に鬼でした」
佐久も隣で何度も頷いていた。
古澤が苦笑しながら司の肩を叩く。
「俺も同じ気持ちだ」
「うう、古澤さん」
感極まったような司の声に、
咲也は苦笑しながら持ち場についた。
古澤さん達、お疲れ様でした。
なお支配人に悪気はありません。




