第78話 似たもの同士
今回は少しだけ、本編の合間のお話です。
少しだけ寄り道にお付き合いください。
数日後。
早輝の自宅。
テーブルのスマートフォンが震える。
手に取り、画面を見る。
「もしもし」
通話ボタンを押し、少し間を置いて声をかける。
電話の向こうからは、低い声が返ってくる。
「うん。僕だよ」
思わず漏れるため息。
「もう。遅いよ。
こっちから何度も電話したでしょう」
「和葉が来るなら教えといてよ。
心臓止まるかと思ったじゃない」
静かに相手の話を聞く。
「え? 知らなかったの?」
「家を空けるとは聞いてたけど、行き先までは聞いてなかったって……」
思わず笑ってしまう。
「ちょっと何よ、その放任」
「まあ、和葉も大人だしね」
ふと、言いたかったことを思い出す。
「それとさ。説明雑だったでしょ?」
「和葉、幹久が父親だと思ってたよ」
「あ、いいから! これ以上、何も伝えないでね。よろしく」
「ちょっと……何、その沈黙」
「……え?」
「ああ……うん。次の仕事ね」
「……そう。和葉に任せるのね」
「そっか」
「橘が主導するのね。
圭介も、頑張ってんだね」
少し考えてから笑う。
「うん。邪魔しないようにするよ」
再び相手の話に耳を傾ける。
「え? 湊?」
「ああ、元気だよ」
「好きな人もできて、幸せそうだよ」
思わず口元が緩む。
そのまま続ける。
「ねぇ、僕が言うのもなんだけどさ」
一度言葉を選ぶ。
「……湊と話した方がいいよ」
「ちゃんと伝えないと」
少しの沈黙。
「ねぇ、兄さん」
「誤解されたままだよ」
また静かに相手の話を聞く。
「え?」
「いや、僕はいいからって……」
「あ、ちょっと兄さん!」
ツー、ツー、ツー。
通話が切れる。
早輝はスマートフォンを見つめ、小さくため息をついた。
「本当にもう、しょうがない人だな」
思わず苦笑が漏れる。
バーで湊と和葉が似ていると言ったことを思い出す。
ーー僕たちも似たもの同士だ。
「ねぇ、兄さん」
呟く声が溶けて消えた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回からは再びホテルでのお話に戻ります。




