第73話 賑やかな夕暮れ
今回は少し息抜き回です。
賑やかな桐生家へ遊びに来た湊。
笑い声の絶えない、桐生家のひとときをお楽しみいただければ嬉しいです。
桐生家。
夕方。
インターホンを鳴らす。
「はーい」
夏希が玄関を開ける。
「いらっしゃい、湊くん」
「こんにちは。お邪魔します」
靴を脱ごうとした、その時だった。
「湊くん!」
「……湊くん」
リビングから海斗と陸斗が駆けてくる。
勢いそのままに飛びつかれ、
「わっ」
湊は慌てて二人を受け止めた。
思わず口元が綻ぶ。
「こんばんは。海斗くん、陸斗くん」
二人は満面の笑みで頷く。
「こんばんは!」
「……こんばんは」
その様子を、少し離れた廊下からじっと見つめる視線。
ひょこっと顔だけを覗かせている。
「……」
清吾だった。
夏希は振り返ると、呆れたように言う。
「また『お父さんより湊くん』って拗ねてるの?」
「だって、なんでそんなに懐いてるの……やっぱり僕が家を空けがちなのがいけないのかな」
しょぼんと俯く姿は犬のようだった。
夏希は困ったように見下ろし腕を組んだ。
まるで、「しょうがない人ね」とでも言いたげに、口元はわずかにほころばせる。
「何よ。私の愛だけじゃ足りないの?」
夏希の言葉に清吾はパッと顔を上げた。
「夏希さん!!」
叫んで抱きつこうとした清吾だったが、夏希にあっさりかわされた。
その勢いのまま、双子の前に倒れ込む。
「お父さん!」
「何、何?アクション?」
「僕もやる!」
「……やる!」
今度は二人そろって清吾へ駆け寄った。
清吾は勢いよく身を起こすと、
「よし!アクション!」
叫び、嬉しそうに二人を抱き上げ肩車する。
「高い高ーい!」
「きゃはは!」
「……あはは!」
笑い声が部屋いっぱいに広がる。
その様子を見て、湊も自然と笑みを浮かべた。
「こら、家の中でやらない」
夏希がぴしゃりと言う。
「はい。ごめんなさい」
清吾は素直に双子を下ろした。
「えー、終わりなの?」
「……もっと」
「ごめんな。
危ないから、お外に行った時にやろうな」
双子の頭を撫でる。
「相変わらずですね」
湊が小さく笑う。
夏希が苦笑した。
「ええ。子どもが三人いるみたいでしょ」
「え?それどういうこと?夏希さん」
「そのままの意味よ」
「えーー僕もう三十だよ」
「この前、『特撮アクション』のインタビュー受けたんだから!立派な大人だよ」
胸を張って言う。
夏希は何故か不敵に口角を上げて、清吾を見上げる。
「そうだったわね。
でも、私はその何年か前に、インタビュー受けたわよ」
「くっ。知ってるよ。何回読んだと思ってるの」
「十回くらい?」
「もっと読んでるよ!」
「ふふ。ありがとう」
悔しそうに言う清吾に、少しだけ勝ち誇る夏希。
なんだか似たもの夫婦だ。
そう思うと、おかしくて思わずクスリと笑った。
「「あ」」
夫婦の視線がぴたりと湊へ向く。
「「湊くん、今笑ったでしょ」」
夫婦の声がハモる。
「笑ってません」
湊は必死に表情を取り繕った。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
今回は桐生家の日常回でした。
次回は、夏希と湊が二人でゆっくり話をします。
引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。




