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第58話 少し甘い肉じゃが

いつも読んでくださりありがとうございます。


少しだけ穏やかな、

夜の台所の話です。


夜。


自宅のキッチン。


鍋の中で、

肉じゃがが静かに煮えている。


「外食どうだった?」


咲也が鍋を混ぜながら聞く。


「美味しかったです」


湊が頷く。


「でも」


少しだけ考えるように視線を上げた。


「なんだか、

咲也さんと一緒に食べた方が美味しかったなって思いました」


咲也の動きが止まる。


「……は?」


湊は首を傾げる。


「だから今度、

一緒に行きましょう」


はにかむように笑う。


その瞬間。


心臓が大きく跳ねた。


顔が熱い。


鼓動がうるさい。


咲也は無言でキッチン台へ手をついた。


深く息を吐く。


「咲也さん?」


「……待ってくれ」


「はい?」


「今、

俺、かなり危ない」


「……咲也さん?」


きょとんとした声。


――駄目だ。

全く自覚がない。


「勘弁してくれ……」

瀕死であった。


その日の肉じゃがは、

少し甘かった。


ここまで読んでくださりありがとうございました。


無自覚な一言ほど、

破壊力がある気がします。


その日の肉じゃがは、

少し甘めになりました。

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