表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/63

第46話 お父さんも、いるんだけどな

張っていた空気が、

ようやくほどけてきました。


空気が、

ゆっくりと緩む。


そのとき。


遠くから、

声が飛んできた。


「お父さーん!」


振り向く。


海斗と陸斗が、

こちらに走ってくる。


スポーツバッグとランチバッグを抱えて、


その後ろで、

夏希が軽く手を振った。


「ごめん、送ってきただけ!」


「イベントあるから、あとよろしくねー!」


足を止めないまま、

そのまま去っていく。


清吾が、

一瞬だけ固まる。


「……え?」


双子は、

そのまま駆け寄る。


「お父さん!」


「なにしてたの!?」


清吾が、

わずかに身を乗り出す。


「今の見てた!?」


「見てない!」


「今来た!」


即答。


「……だよね」


ぽつりと落ちる。


「清吾くん」


マスターの声。


いつの間にか、

清吾のすぐそばに立っている。


「ちょっと腕」


軽く言う。


清吾は、

少しだけ戸惑いながらも腕を差し出す。


マスターが、


軽く触れる。

確かめるように押す。

角度を変える。


右腕。

そして、

左腕。


「……あ」


清吾が、

少しだけ顔をしかめる。


「やっぱりか」


マスターが頷く。


「痛めてるじゃない。

どうせ仕事で無理したんでしょ。それなのにバク転とかしちゃってさぁ。何全体重かけちゃってんのよ」


清吾が、

言葉を失う。


「家帰ったらクーリング。

安静」


間髪入れずに続ける。


「今日はもうアクション禁止」


「えええええっ!?」

「子どもたちにいいとこ見せてないんですよ!」


思わず声が上がる。


「プロだろ」


ぴしゃりと言う。


「本来なら、止めるべきだったんだぞ。自分で。自己管理も仕事だぞ」


「それなのに、あんな派手な動きして。思いっきり全力出しちゃってさ……」


「まあ、カッコよかったよ。

見事な動きだった」


清吾が、はっと顔を上げる。


「し、師匠」

感激して見上げる清吾に、マスターは笑顔で頷き


「だから、これ以上はもう動かすな」

キッパリ言う。


清吾が、

ぐっと言葉を飲み込む。


「……はい」


小さく返す。


湊は、

何も言わない。


そのやりとりを、

双子はぽかんと見ている。


そして。


「さくちゃーん!」


海斗が、

グローブとボールを掲げる。


「キャッチボールしよ!」


「……さくちゃんとやる」


一斉に駆けていく。


咲也は、

苦笑しながら立ち上がる。


「はいはい」


軽く手を振る。


ボールを受け取る。


すっと腕が振られる。


双子が、

歓声を上げる。


「すげー!!」


「……かっこいい」


清吾は、

その様子を見ている。


しばらく、

何も言わない。


それから、

小さく息を吐く。


「……お父さんも、いるんだけどな」


ぽつりと。


その言葉に、

場の空気がなごむ。


湊は、

何も言わない。


ただ、

その光景を見ている。


そのとき。


清吾が、

ちらりと視線を向ける。


「……笑いましたね」


少しだけ不満げに。


湊は、

首を横に振る。


「いえ」


短く返す。


けれど、

口元は、

わずかに緩んでいた。


マスターが、

肩をすくめる。


「まあまあ」


軽く笑う。


視線の先で、

ボールが何度も往復していた。


清吾は派手で真っ直ぐ、

湊は静かで受け流すタイプ。


方向は違うけれど、

どちらも“誰かを守るための強さ”なのかなと思っています。


そして双子は今日も元気です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ