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第43話 半分こ

二人で晩ご飯を食べに行く夜の話です。



バーを出る。


夜の空気が、少しだけ冷たい。


隣に、

湊がいる。


さっきまでの店内とは違う、

どこか途切れたままの距離。


「……どっか食いに行くか」


店は決めていなかった。


少しだけ考えて、


「牛丼屋でも、いいか?」


ぽつりと続ける。


「おしゃれなとこって感じじゃないけど」


少しだけ、言い訳みたいに付け足す。


湊は、


一瞬、目を丸くして、

それから、ふっと笑った。


「はい」


――


店内は明るくて、

さっきまでの空気とはまるで違う。


テーブル席に向かい合って座る。


メニューを開く。


「ここの唐揚げ定食、うまいんだよ」


咲也が言う。


「鉄板焼きもいいな。迷うけど」


メニューを見ながら、

つい言葉が続く。


「一人のときは朝も来てさ」


「目玉焼き定食が地味にうまいんだ」


少しだけ、饒舌になる。


「……あと、ご飯おかわりできるから」


ぽつりと付け足す。


「腹減ってるときは、ここ来るといいぞ」


湊は、それを聞いて、

小さく笑った。


「ふふ……分かりました」


さっきまでの空気が、

少しだけほどける。


料理が運ばれてくる。


運ばれてきたのは、

鉄板焼き定食と、唐揚げ定食だった。


「……もし嫌じゃなければだけど、半分こしないか?」


湊が、瞬きをする。


「ええ。構いませんよ」


「じゃあ、ちょっと……取り分けてもいいか」


「いいですよ」


咲也は、箸を持つ。


「……丼にしてもいいか?」


「ふふ……はい」


鉄板焼きを箸で取り、

湊のご飯の上に乗せた。


――昔、家族と来たときも、こんなふうに分けて食べた。


食べ盛りで、

おかわり無料がありがたかった頃。


ふっと、手元に意識を戻す。


唐揚げも半分にして、皿に分ける。


「二人だと、こうやって分けられるのがいいよな」


ぽつりと言う。


「色んな味、食えるし」


頬をかく。


「おしゃれな店とかだと、こういうの出来ないしさ」


機嫌よく続ける。


湊は、


少しだけ驚いたように、

それから、やわらかく笑った。


湊は箸を取り、

一口。


ゆっくりと噛む。


それから、

ふと顔を上げた。


「……楽しいですね」


「ん?」


ほんの少し、言葉を選ぶようにして。


「咲也さんと一緒に食べるご飯、楽しくて、とっても美味しいです」


その呼び方に、

一瞬、思考が止まる。


遅れて、理解する。


「……っ」


一気に、

顔が熱くなる。


咄嗟に、

視線を逸らした。


「……だから」


言葉を探す。

うまく出てこない。


「不意打ちは、やめてくれ」


我ながら、

情けない声だった。


牛丼屋デート回でした。

気取らないご飯屋さんで、自然に食事を分け合える距離感が好きです。

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