第40話 待ち合わせ
少し静かな休日の話です。
日中
咲也の家。
湊は今日は休みだった。
休日とはいえ、
過ごし方は仕事の日と大きく変わらない。
部屋で過ごす時間がほとんどだ。
カクテルの本を開き、
合間に軽く体をほぐす。
ただそこに、家計簿をつけることと掃除が加わった。
してもらってばかりでは悪いと湊が申し出
食費は折半という話になった。
その計算は、湊が担当している。
レシートを整理して、
記帳する。
購入品を見ていると、その時の食事の風景や買った時のエピソードが思い出され、思わず口が綻ぶ。
記帳を終えると、
腕まくりをして、食後の皿を洗った。
朝と昼の分。
咲也は今日も仕事だが、
湊の昼食も、当たり前のように用意されていた。
――まあ、愛されてるってことだな。
マスターの声が、ふとよぎる。思わず苦笑した。
洗い終え、そのまま部屋を見渡した。
掃除に取り掛かる。
ものの場所は、だいたい教えてもらっている。
手を動かす。
けれど元々、散らかっていない。
思ったより早く終わった。
部屋の隅に押しやられたままの寝袋を、
折りたたんでボストンバッグに入れる。
――本当に嫌がっていたな。
苦虫を噛み潰したような咲也の顔を思い出し、くすりと笑う。
ふと、視線が止まる。
リビングの隅。
段ボール。
ガムテープで封がされている。
少しだけ近づく。
触れて、
手を離す。
触れてはいけない気がした。
まだ、今は。
視線を戻す。
テーブルの隅に置かれた
クマのキーホルダー。
星を抱えている。
ホテルの小さなお客さんからもらった、と言っていた。
指で軽くつつく。
星のチャームが揺れた。
小さく、笑う。
咲也らしいと思った。
テレビをつける。
1人の時にテレビを見るのは久しぶりだ。
よく分からない番組のまま、
時代劇で手を止めた。
斬り合いの流れ。
間。
見せ方。
実戦とは違う。
けれど、惹かれるものがあった。
――だから、あの人は、ああいう道を。
ふと浮かんで、そこで止める。
立ち上がる。
何となく、体を動かしてみたくなった。
足を一歩引く。
重心を落とす。
手を、わずかに動かす。
どこか引っかかる。
いつもより、身体が軽い。
キレが良すぎる。
動きが、早い。
思った通りに動きすぎる。
何が変わった?
最近変わったことといえば、
咲也の家で寝るようになって、
ちゃんと食事をとるようになった。
だが――
それだけのことで?
ふと、
咲也の顔が浮かんで、
小さく、笑った。
さて。
そろそろ時間だ。
咲也を迎えに行く。
仕事終わり、バーで待ち合わせ。
そのあと、食事の約束。
クローゼットを開ける。
並んだ服を前に、
少しだけ迷う。
選ぶ。
指先が、わずかに弾んでいた。
もう「分からない」では済まなくなってきたようです。




