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第33話 いってらっしゃい

少しずつ、“いってらっしゃい”が自然になっていく朝の話です。


目が覚めると、至近距離に湊の顔。


思わず、息が止まる。


まだ慣れない。


結局、また一緒に寝てしまった。


昨夜のことを思い出し、ため息が漏れる。


隣で眠る湊を起こさないように、そっとベッドを抜ける。


顔を洗うと、しっかり覚醒した。


その勢いで、朝食と昼食をまとめて作る。


朝食を食べ終わる頃には、

ちょうど昼食の粗熱も取れている。


そのまま冷蔵庫に入れるのに、ちょうどいい。


余ったおかずはご飯とともにタッパーに詰める。

自分用の弁当代わりだ。


弁当なんて久しぶりだ。


手早く整えて、身支度を済ませる。


湊は、まだ眠ったままだ。


子どものように無邪気な寝顔に、口元が緩む。


「……行ってくる」


小さく声をかける。


少しだけ迷う。


それから、


額に、口づけを落とす。


その瞬間。


ぐいっと腕を引かれる。


視界が揺れる。


そのまま、ベッドに引き込まれる。


「……っ」


目が合う。


「……起きてたのか」


「はい」


「君は、なんで毎回起きるんだよ……!」


声に焦りが滲む。


湊は、わずかに目を細めて、


「たまたまです」


距離が近い。


「……離せ」


「嫌です」


じっと見つめられる。

落ち着かない。


それでも、なぜか目を逸らせない。


やがて、


湊が顔を寄せる。


鼓動が、強く鳴る。


軽く、


額に、やわらかい感触。


認識する前に、離れる。


「……いってらっしゃい」


やわらかく笑う。


一瞬、動けなくなる。


その表情に、見惚れる。


「……まったく、君は……」


言葉が続かない。


結局、諦めて、小さく息を吐く。


「……行ってくる」

顔の熱さを自覚しながら。

ここまでお読み頂きありがとうございます。


咲也は、たぶんまだ気づいていません。

かなり自分からいっています。


感想など頂けると嬉しいです。

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