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第25話 さっきより少しだけ

少しだけ、距離が変わる話です。



湊と並んで歩く。


さっきから、落ち着かない。


あの後から、ずっと。


動悸が、おさまらない。


顔には出ていない、と思う。


歩幅も、変わっていない。


それでも、内側だけが少しだけ騒がしい。


「蒼井くん」


「……泊まりに来る、でいいのか」


「ええ」


わずかに頷く。


「襲わないと、いけないので」


「蒼井くん……もう勘弁してくれ」


こめかみに手を当て、小さく呻く。


「冗談ですよ」


くすりと、笑う。


「……半分くらいは」


「やめてくれ」

絞り出した声は蚊の鳴くような弱々しさだった。


これではいけないと

気持ちを切り替えるように

息を吐き


「……それで、どうする?」


湊を見る。


湊は微笑んで

「お言葉に甘えて、しばらく、お世話になります」


ぺこりと頭を下げる。

「よろしくお願いします」


「……そうか」


それだけを返す。


正直、まだ動悸は収まっていなかった。

返すだけで精一杯だった。


「行くか」

湊が頷く。

再び並んで歩く。


距離は、さっきより少しだけ近かった。


ここまでお読み頂きありがとうございます。


言葉にしたあとも、

二人はあまり変わらないままでした。


ただ、ほんの少しだけ近くなった気がします。


感想など頂けると嬉しいです。

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