第109話 ハムサンド
今回は、前夜の続き。
咲也の朝のお話です。
朝。
甲高い電子音が鼓膜を突き刺す。
目を覚ました咲也は、慌ててスマホを手に取り、アラームを止めた。
隣を見る。
湊は目を覚ました様子もなく、よく眠っていた。
ほっと息をつく。
それにしても。
「……眠い」
しばらく天井を見つめる。
頭が重い。
何時に眠ったのか。
確か。
湊に抱きしめられて。
それから――。
思い出しかけて。
顔が熱くなった。
振り払うように、首をぶんぶんと横に振る。
やめよう。
朝から考えることじゃない。
咲也は湊を起こさないよう、そっとベッドを抜け出した。
洗面所へ向かう。
顔を洗っても。
眠気は、あまり取れなかった。
「……参ったな」
今日は日勤だ。
とりあえず。
朝飯を食べなければ。
いつものようにキッチンへ向かう。
けれど、身体が重くて億劫だった。
ふと、朝ごはんは抜いても良いかと思った。眠気覚ましにコーヒーだけ飲めば。
ただ、
自分は食べなくても、湊の昼ご飯分だけは作っていきたい。
そう思いながら冷蔵庫を開けた。
「ん?」
目の前に。
ラップのかかった皿が置かれている。
サンドイッチ。
その上に、小さなメモが一枚。
咲也は手に取った。
『朝ごはんです。
僕も同じの作って食べるんで、
気にしないで下さい。』
思わず、口元が緩む。
いつ作ったんだ。
たぶん。
自分が寝たあとだ。
あんな時間だったのに。
「……ありがとう」
静かなキッチンで。
小さく呟いた。
皿を取り出す。
ハムを挟んだだけの、シンプルなサンドイッチ。
横には、レタスとミニトマトの小さなサラダが添えてある。
コーヒーを淹れて。
テーブルにつく。
一口かじる。
「……うまいな、このハムサンド」
もう一口。
体は相変わらずだるい。
それでも。
朝から少しだけ。
得をしたような気分だった。
咲也はもう一度、メモへ目を落とす。
そして。
ふっと笑った。
タイトルは『ハムサンド』。
今回は、二人の何気ない朝を書けて楽しかったです。




