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第10話 遠く感じた

ホテルの裏口。

言葉にならない感情の話です。

レガリア・アストラ青山の裏口。


夜の空気が、

ひやりと肌を撫でる。


扉が閉まる音。


その瞬間、

張っていたものが切れた。


湊は壁に背を預ける。


そのまま、

ずるずると身体が沈んだ。


冷たいコンクリート。


浅く息を吐く。


胸の奥が、

落ち着かない。


呼吸がうまく入ってこない。


襟元を、

ぎゅっと掴む。


「……なんで」


小さく零れる。


自分でも、

分からなかった。


ロビーで見た咲也。


静かな声。


整った笑顔。


迷いのない視線。


いつものホテルでの彼の姿。


しかし。


あの瞬間。


「Cut it out. Or leave.」


冷たい声だった。


笑顔が、

一瞬で消える。


距離を置くような声。


触れさせない目。


それなのに。


あの男たちといる咲也は、

楽しそうだった。


その空気が、

自然だった。


——自分の知らない時間。


胸の奥が、

わずかに痛む。


見ていられなかった。


少し近づけたと、

思っていたのに。


先ほど、

並んで歩いた。


あの距離は、

近かったはずなのに。


何故だか、

ひどく遠く感じた。


息を吐く。


うまく整理できない。


ただ。


胸の奥だけが、

ずっとざわついていた。

ここまでお読み頂き、ありがとうございます。


近づけたと思ったからこそ、

遠く感じてしまうこともあるのかもしれません。


感想など頂けると嬉しいです。

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