22話 宇宙人ポール
私の我儘はいつから始まってどこまでゆくのだろう。頭のお菓子な女の子、それを隠さず生きてきたの。他責思考も許されなかった。その結果、真に理解り合えた人間は今まで未だ2人。家族と分かり合えるはずなんてないもの、それは幼馴染のみのりちゃんと、高橋麗愛。2人はきっと宇宙人なのよ、私と同じ。
小学生のある日、ある1人が「あいなちゃんって宇宙人みたい」と言い出す。その他のクラスメートが、水を得た魚のようにその言葉に蠢きだした。あの時、社会を感じたわ。私は我儘で己の意志に忠実だったから、そうではない子に理解はされなかったみたい。その日から小学校を卒業するまで私は、宇宙人と呼ばれ続けたけれど、それはいじめではなかったわ。彼らは私が怖かっただけなの、彼らにとって未知な底なしの私が、いけない子だったのよ。
中学では昔よく一緒に遊んでいたみのりちゃんと再会した。みのりちゃんは宇宙人と呼ばれていた私の過去を知って、一瞬怪訝な面持ちになったあと、こう言った。「宇宙人、良いじゃない。次はもっと上手く溶け込まないといけない。それに同じ宇宙人に出会えるように、行動しないとね」私は嬉しかった。理由はわからないけど、涙が流れ落ちた。泣くのは初めてだったからぎこちない嗚咽が恥ずかしかった。「私も宇宙人なのかもしれない。あいな、あなたの気持ちがこんなにも分かる」みのりちゃんはそう言って抱きしめてくれたの。そんなこともあって、私は私と同じ、私と対等の人間を探すようになった。探す時の要点は執着心。中学ではみのりちゃん以外に見つけられなかった。高校では今のところ、ワンポイントファイブ。
自分でもわかっている、己のきつい執着心を。知っている、私を邪魔者と評価する他人の目を。分かる。わかるのよ。あなたたちの思うことは。あなたたちは私を知らないし、永劫に分からないでしょう。だからさびしいのよ。友達が欲しいの。正直央輔君に興味はない。でも麗愛と青春したいから、別れさせたいの。嫌、嫌なのよ。私は我儘なのよ。
チア部で麗愛と私だけが通じ合っていた。毎日2人で星をなぞった。仲が深まるにつれて口調が砕けていった。喧嘩もしたし、部について熱く語り合った。何を言えば麗愛が何を感じるかも分かるようになっていた。
私自身の可愛さを楽しむためという我儘で入った部活で仲間に出会えるなんてミラクルだと思った。麗愛は火球のように煌めいていて、私は宇宙人以外には素っ気ない態度だったから、麗愛はみんなから慕われていて麗愛は私を慕っていた。そう麗愛自身が言っていた。
次の部長を決定する時、部活動に最も精進していたトップ3人から選出するというある種成果主義の方法に従ったのと、2年の人数が少なかったため、先輩1人と1年生の麗愛、そして私が選ばれた。みんな麗愛の煌めきに期待をしていたけど、麗愛は私の爆発的な自我に重きを置いていた。選ばれておいて人を推すというその器に見合っていない麗愛の態度に私は憤りを感じた。そのことで口論になったのを覚えている。そしてその口論の結果、私は部長選から辞退した。今度は、麗愛が私に怒りをぶつけた。私はチア部を辞めることにした。あれこれ言われることが嫌だったから。麗愛の私への怒りは増し、殴り合いの闘争にまで発展した。私は負けた。私はそれでも麗愛との関係が続いていけばそれでいいと思っていた。麗愛はそれを許さなかった。
2年になり、麗愛に恋人ができたと聞いた。焦った。私は我儘になった。別れさせたい。どうにかしないと。
今日、朝からみのりちゃんの言葉を思い出していた。「私の考えていることを当ててみて、なんて言っても分かるはずがないのよ。だから私が勇気を出して、私から伝えるの。その言葉はあいなを、あるいは他の誰かを傷つけるかもしれない、もしくは幸福にしてしまうかもしれない、運命を変えてしまうかもしれない。人の想いはそれだけのエネルギーを秘めている。」「私の想い...」「あいなはきっとストレートすぎるし勇気もあるから、あとはありったけの優しさでそのエネルギーを制御するだけね」
鐘が鳴った。弓を取った。私の想いはエネルギー。麗愛に想いを伝える時には言い合いになることが多かった。少し強引だけど、フィールドを拵える。嫌、嫌、嫌なの。私の本気の想いを誰も知らないなんて。麗愛、麗愛、高橋麗愛。聞いて、聴け。死ね、高橋麗愛。




