21話 pinoトゥエンティフォー
氷を歩むが如く様子だったが畢竟、口論が起こることはなかった。高橋麗愛は迅速にあいな先輩の古疵を突いて去っていった。ヘリクリサムの余薫。あいな先輩は爾後帰路に着いた。その口角は歪み、胸鎖乳突筋が浮き出ていた。
土、日と過ぎ月曜。8月13から15日、2泊3日で行われる親睦旅行の班決めを1限のLTで行う。進藤は欠席。
現代文、物理基礎、体育はバスケットボールを終えお昼。ドヴォルザーク、河野さん、わたし、音楽室でお弁当を食べる。食べ終えた後はドヴォルザークによるハトと少年を堪能、高音が天井知らずに昇っていく。わたしたちは窓を開け放つことでカーテンとポニーテールを白南風に曝し、そのトランペットの快音を地平線へと送った。それは一寸の世界征服だった。
わたしは月曜日が好きだ。理由は単簡、5限を終えたあとは、まあ掃除とSTを挟むのはやむなしだが、たちまち自由の身だからだ。朝7時に起きてそれから学ぶこと一筋で夕方まで時を過ごす我々学徒にとって、自由意志のままに活きる時間は生活そのものなのである。それ故7限まで授業がある今日、火曜日は憂鬱だ。
わたしの生活には部活動も当然含まれている。今もこうして目安箱の中身を確認して参っている。わたしは1年の教室郡が3階にあるのもあって、大抵上の階に設置した箱から見て回る。1枚紙が入っていたがどうせ進藤か六斗への苦情だろう、わたしはそれを無造作に衣嚢へ突っ込んだ。いつも通りの生活だ。しかし、1つ下の階に下りるや否や、わたしの生活は青春へと変革した。
ミヤタのグラスファイバー弓を直剣のように構えながら走り過ぎたあいな先輩は、非日常そのものだった。




