18話 遭逢
6月20日。その日俺はお昼頃から買い物に出かけた。平常通りの日曜日、薄い雲が低い位置に漂っていたけれど、晴れだった。求めるものも無くなって帰る時には、雲が轟々と並び始めていた。夕立ちだ。俺は自転車を疾駆して家へ向かった。それほど長い距離ではないけれど、天を翔ける雨には敵わない、すぐに雨に濡れることになった。俺は途中にあった青塚公園の東屋で晴れを待つことになった。
そこからは時間が劫劫としていた。15時54分。やけに雨音の際立っている環境音、シャツが肌に吸着している不快感に適応する脳、濡れっぱなしのサドルへ視線を送る瞳。まったく時が進まない、そんな予感がした。
どれくらいかわからない、睡魔に身を任せて眠ってしまった。焦りはしなかった、まだ雨があたりを白く変えていたから。俺は目脂を探って取った。時間を確認しようとした、左腕を胸の前に出し、その針の示すものを見た。しかしその針は小刻みに震えているだけだった。秒針が1つ進んだそばから1つ戻る、それは一進一退を繰り返していた。時計が壊れたのだ、困ったな。そう思った。
しばらくして、雨音が聞こえないことに気づいた。というか、何も聞こえない、無音の世界だった。こういうこともあるのだな、なんて呑気に呆けていた。時もわからない、音もない、辺りは白く何も見えない。俺は異世界にでも迷いこんだのか、あるいは神隠しか、そんな非現実的なことも想像するようになった。
俺の体内時計では30分以上を優に計測していた。今思うと、己が如何にリアリストかがわかる。そしてちょうどそのくらいの時、誰かが正面のベンチに座った。声からして小学生くらいの少女だろう。その少女はこう話始めた。「進藤佐一くん。今時が流れていないのに、あなたは時をその内に感じられているでしょう。それは時が本能とともにあるからなの。」不思議なことを言う子供だった。「君は、誰なんだい? 小学生と知り合う機会は最近なかったが」「私はまことちゃんのお姉ちゃん。なんでも知っているし、なんでもできるの」俺はずっと顔を伏せていて、その体勢を維持していたから、その子の姿は見えなかった。なぜ顔を上げようとしなかったかは自分にもわからない、言葉しか発せなかった記憶がある。俺はその唯一の手段の言葉で抵抗しようとした。しかし、「聞いて。」その子の一言で、言葉も発することができなくなった。そこからその子が話していた内容は、一言一句違わず覚えている。その話が俺を非現実に引きずりこんだのだから。




