17話 不釣り合い
夏至。昨日は驟雨が激しかった。暗いのに目の前が真っ白で、一瞬で蛙を溺れさせた。わたしは部屋にいた。窓から空を見たら、赤い龍が地上に手を伸ばしていた。けれど、瞬きをしたら消えてしまった。2秒後にゴロゴロとその音が轟いたけれど、それはきっと、悲しみが産んだ声なんだ。
そんなことを考えても、あの子の気持ちはわからない。地上には既に旱。わたしの心は、霽れを待つ。
放課後、第2応接室。またの名を支援部部室。「真。見ろ、これを」「これは?」「体育館の目安箱に入っていた。内容を見てくれ」「ほう。遂に依頼がきたか」"好きな人と両想いになりたい" "2年2組 H.A" 「恋愛か。書体的に、女の子かな」「わからん。まあ体育館で活動する部活の中にいるだろう。聞き込みをすれば」「ダメに決まっているだろ」「まあ、そうだろうな」こいつはなぜこんなことで見栄を張るのだ。「理由を言ってみろよ」「縛りを設けないと、一瞬で俺が解決してしまうから、か」やはり何も分かっていない。「カバだな。」「カバじゃない」「この子がイニシャルを使っているのは、密かに行動したいからだ。これは他の誰にも知られてはいけない。聞き込みをせず情報を集めるんだ」「そうだな。うん、その通りだ。六斗!!」進藤は手を小刻みに2回打ち鳴らした。「俺だ!! 呼んだか? My bro. 佐一」掃除用具入れの扉が勢いよく開き、六斗が登場した。こいつらのノリは日に日に悪化している。「聞いていただろう。My ass. 六斗」意味わかって言ってんのか。「ああ、俺が探し出す。その後は任せたぜ」そういう関係なのかこいつらは。どっちにしろ気色悪いな。こいつらがまた嫌われるだけだ、放っておこう。
天音ちゃんがここに到着した。「ごめんなさい、遅れました。」「いいよ。天音、遂に依頼が入っていたぞ」「ええ、! どんな内容ですか?」「恋愛だ。好きな人と両想いになりたい。だそうだ」「素敵ですね。是非協力しましょう」「そのつもりだ。情報収集は六斗がやってくれる。そのあとは俺たちの出番ってわけだ」「六斗先輩はそんなことまでできるんですね。素敵です」確かに多才だな。「おいおい、俺の呼び方は教えただろう」呼び方か、まさかな。「待て六斗、ここではダメだ」進藤が焦っている。わたしは右の拳を固め、それに左手で氣を纏わせるイメージをしつつ腰を落とし、1歩を効率的に踏み出せるように前傾姿勢で構えた。進藤の焦った時に出現するオタマジャクシのような口がわたしの力を昂進させる。そして判決の時、「はい、My ass. 六斗さん!」
わたしの拳は解き放たれ、風を蹴散らしながら進藤と六斗の頬を殴り抜けた。清き雄叫びとともに。
わたしは、正義。




