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真 -進化-  作者: Amanoru
初夏
15/26

15話 運命に生きる子

5月3日、9時。支援部集結。今日の活動は、用具や備品の点検と支援部特製目安箱の設置に関しての会議だ。授業で使用する物の点検は、正直教師の仕事を押し付けられていると感じる。されどこれも活動だ、やる他ない。


天音ちゃんがわたしの様子を見るなりすぐに、「今日は普通の真さんですね」と言った。「へへっ、」わたしは弱点を突かれたポケモンのように引きつった笑い声を発した。それでやり過ごしたつもりだったが、追撃がきた。「この前はなんか精神が幼児退行した感じでしたよ、なにかあったんですか」この子コミュニケーションベタなのか、あるいはポンコツなのか、そうかこれが天然ってやつか。この問いに何を言えば答えになるのかわからない、誤魔化すしかない。助け舟を出せ、進藤。「そうかな。なあ進藤、そんなにわたしの挙動はおかしかったか?」完璧なパス。これでお前が上手く誤魔化せば、この天然、いやアホの子なら勘違いするはず。「へへっ、」は?「おぉ、佐一。それはミラーリングだな。コミュニケーションの基本だ、もっと自然にやると効果的だぞ」「なんですか? それ」「ミラーリングは相手の動作や言葉、姿勢や呼吸などを鏡のように真似することで、相手に親近感や好意を抱かせる効果があるという1つのコミュニケーション技法だ。覚えておいて損はないだろう」「へぇぇ。よく知ってますね、神野先輩」「へへっ、六斗でいい」こいつらがわたしの想定通りに動いたことがあっただろうか。まあ、会話は逸れたな、結果は整合。


運動用具の数量と状態の確認を終えて、ここからは2手に分かれることになった。1組は楽器類、もう1組は調理道具。石拳の結果、わたしは六斗と音楽準備室に向かう。3階へ階段を上がるにつれ、行進曲海兵隊の音圧が増していく。「うまい..」「へぇ、わかるんだ」「中学はオケ部だったんだ。このレベルならもっと難しい曲をやればいいのに」「ふうん」「あいつも同じだったよ。和倉千登勢」「和倉?」「あの背の高いポニーテールの気が強いトランペット吹きだ。お前と同じクラスの」「ああ、ドヴォルザーク」「っ!! 横文字の2つ名..! かっこいい..。俺にもつけてくれ!」「今は無理、ビビっとこない」「今は、か、もし良い名をつけてくれたその時は、お前をGodfatherと呼んでやる」「...。」少し格好良い。「意味は?」「名付け親」まんまじゃねえか「却下」作業は軽快に進んでいる。


「あれ、何してんの、泥棒?」その声を聞いた六斗は瞬時に渋い顔になった。「トランペッター」「そうだけど、何してんの」本気の疑いなのかおふざけなのかわからない、一応弁明だ。「支援部の活動、今は楽器類の数量と状態を確認しているの」「そう。がんばって。そんなことより、聞いてた? 合奏」「うん」「六斗は?」「聞いてたよ」「今年の津藤はレベルが高い。どうだった」「うまかった」「うん、わたしもそう思う」ドヴォルザークは得意満面だ。

「お前のトランペット、やっぱり上手いな。」「当たり前だ」「また、聞かせてくれよ」「いいよ」六斗は僅少、寂しさを纏った。

短い間だけれど、2人はわたしがここにいないみたいに振舞った。その疎外的な空間は居心地の悪さとはまた別のもので、きらきらと神に祝福されていた。それはまるで、ベガとアルタイルのように。

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