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真 -進化-  作者: Amanoru
初夏
14/26

14話 判断

どうやらこの家には六斗の部屋が2つあるらしい。1つは寝室、もう1つは彼が言うにはラボなるものらしい。

議論は意外にも、真摯な態度で交わされた。進藤のその生真面目さと六斗の好奇心がそれを可能にしたようで、わたしはほとんど聞き手だった。それは内容がほとんど、昨日のわたしの言動や挙動の奇妙さについてだったから。昨日のわたしは、わたしの姿形をしたただけの全くの別人だったらしい。言動も頓珍漢で、挙動も幼い少女のようだったらしい。「少女。わたしのすぐ左にいた、わたしだけを見つめる儚げな少女」その子のことをわたしは話さなかった。


空が楕円に黒く沈み、スピカが重力で回りあっている、わたしの心のように。

疲労感がベッドに吸い付いていく。気を抜くとすぐに放心してしまう、これもきっと遠心力のせいだ。少し、ドヴォルザークのトランペットが恋しい。あれは人の自制心を律する音をしている。若輩なわたしに必要なのは康寧ではない、氣なのだ。


眠気は充分だが眠れない。というか、目を閉じることができない、それに今気がついた。視線も動かすことができない。徐々に身体が自分の意思に適わないことに気づく。そして、ぽつぽつと恐怖心が募る。わたしの部屋は他人事のようにわたしをほったらかして、容赦なく闇を練っている。暗い、想像が恐怖心を煽る。

わたしの視線の先は、窓辺に固定されている。目を閉じれない影響で涙が涙丘に溜まる。少し高さのある窓にはカーテンの隙間から漏れる少しの月明かり、そしてその下には気配を感じる。目が離せない、黒いシルエットが浮かび上がる。人がいる。声も出せない、その人は動かない、体育座りをして俯いている。小さい体躯、少女のように。静けさが時間の流れを遅くする。いつまでこうしているんだろう。涙が溢れて流れ落ちる。わたしの視界は涙に濡れてぼやける。そしてぼやけた視界が晴れた時、わたしはその子と目が合った。

優しい目をしている、そう感じた。耳をすませば息遣いが聞こえる。あの時と同じだ。この少女はわたしに何を伝えたいんだろう、そんなことを考えている間に、その少女は立ち上がって近づいてくる。その手がわたしの涙を拭って額を撫でる。恐怖はないけど、なぜか悲しい。誰かの手に似ている、誰、それは誰だっけ、懐かしい温かさ。


「まことちゃん、会いたい」


その声と手の正体は不透明なまま、わたしは眠りに落ちた。

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