5-6 反乱軍急襲
ご愛読、ありがとうございます。
今回はモンゴル帝国の皇族が製鉄所を見学に来る話です。
モンゴル帝国の第一皇子と第二皇女を製鉄所に迎えたクーヤ達。闘刃姫もその護衛となった。
〇製鉄所 転移179日目
製鉄所の見学はナオジを先頭に進んでいく。
製鉄所は見学の対応して設計されており、危険のない場所から各設備を見ることが出来る。
「前の工程で乾留したコークスと鉄鉱石を高炉に入れると・・・」
ナオジが目の前の機械の説明をしていると第一皇子が俺に話しかけてくる。
「クーヤ殿、あの闘刃姫の赤いのはどこにいるのだ?」
赤と言えばアカネだ。アカネの武器は槍でこんな狭い所では不利だから、出入り口を監視している。
しかしなぜアカネを探す?
「彼女は建物の外で見張りをしていますが・・・」
「そ、そうか」
彼は少し恥ずかしそうにそっぽを向いた。
第二皇女の方はナオジの説明を熱心に聞きながら、時折メモを取っているのにこの皇子はどうなんだろう。
ナオジの説明なんか聞いちゃいないし、キョロキョロしてるし、何のために来たんだか。
次の工場に行く頃には第一皇子はあくびをしながら手を頭の後ろで組んで退屈を強調するように歩いていた。
「ここでは作った鉄鋼を製品の形にして出荷します」
ナオジの説明にも全く反応を示さない。
「ねえねえ、黒い君。赤い子を呼んでくれない?」
皇族たちと一緒に行動するミヤが与しやすいと見たか、アカネを呼ぶように小さな声で言い始めた。
「ここの配置はクーヤ様が定めたものです。私の一存でこの場を離れるわけにはまいりません」
俺に聞こえないように言ったつもりなんだろうけど、身体強化された俺には聞こえてるから、でもさすがにミヤは第一皇子にまったく隙を見せない。
見学が終わって工場の会議室に入る。
簡単なおさらいと質問を受け付ける。
「学生の受け入れについてはどうなっていますか?」
一緒に来た貴族の一人が手を挙げて聞いた。
「学生はここの奥にある学生寮で宿泊、朝食・夕食は出します。昼食は工場付属の食堂で取ります。食事代宿泊費はほぼ実費を払っていただきます。
製鉄所は24時間動きますので昼夜逆になる場合もあります。
製鉄所の作業自体は3年あれば覚えられます。
工場の設計や製品の作り分けなどは6年の期間が掛かります。
もちろんあなたの国で製鉄所を作る場合、こちらから応援を出すこともできます」
第二皇女が手を挙げた。
「今レールと言う製品を主に作っているようですが、この後何を作っていくのでしょうか?」
「見てもらった通り、レールはできた端から運び出され敷れていきます。
すぐに黄河にぶつかり、今度は黄河を渡る鉄の橋に使う鉄骨を作り始めます」
「鉄の橋!そんなものが出来るのか?」
「はい、すでに測量を終え、設計も済んでいます。道路も併設する予定なので、再来年には歩いても渡れるようになります」
モンゴルの貴族は自分達の技術が遅れていることを感じているのだろう。かなり驚いていた。
恥じることは無い、俺がやってるのは20世紀初頭の技術だ。ここから先は他の技術が必要になる。半導体や冶金技術、もちろん特殊な素材も必要だ。
インストールを使えば21世紀の技術まで2,30年で出来るのではないかと思っている。
この見学はもう一度行う予定だ。今日の結果を持って帰って検討し、明日はもう少し掘り下げる予定なのだ。
うん、第一皇子、寝っちゃてるじゃん。困ったもんだ。
日もだいぶ傾き、帝城に帰る時間になった。
ここで宿泊と言う案もあったが、さすがに皇族をもてなすのは無理。
製鉄所を出て10分、天都の街並みまで10分で周りは畑と草原しかない。
「ご主人様、周りに人影が!」
いち早く人影を見付けたミヤが報告するが、敵兵は馬に乗っているので接近が速い。
俺はは天帝様に連絡を入れておく。
「皇子!、敵です。囲まれてます」
馬車の中に居る皇子に連絡したら、この男は馬車から飛び出してきやがった。
「隊長!!各個撃破せよ!!俺を守れえ!!」
敵の数も装備も見ずに自分の護衛に命令した。
モンゴル護衛隊が全員で敵に向かって走り出す。
拙い、相手の数の方が多い、逆にこちらが各個撃破される。
こちらはスクーターでしかも二人乗り。不整地では戦えない。
すまん、モンゴル護衛隊に謝りながら、俺はヒイの家を出した。
「皇子たちはここへ入ってください」
「なんだこの家は、鉄で囲ってあるのか?」
「早く!!」
俺は馬車の人員を家に押し込むと闘刃姫に命令した。
「お前達も家に入って迎撃準備!」
最後に俺も家に入ると第一皇子が唾を飛ばして叫んで来た。
「なぜ、闘刃姫を敵と戦わせない。俺を守るつもりはないのか!」
「心配せずとも戦いますよ。この家は鉄の砦のようなものです。1時間やそこらで壊せるもんじゃありません」
「しかし、籠っているだけでは敵は倒せん」
「大丈夫です。天都から援軍が来ます。それまでに終わるかもですが」
皇子は黙ったが納得した風ではない。
俺は二階に上がり、ヒイとマールに命令する。
矢間はヒイとマールの身長に合わせてある。
「50m以内に近付く奴は射殺せよ。アオイは30mだ!」
「了解」×3
やがてモンゴル護衛隊を倒した敵は顔が見えるくらいに近付いてきた。
相手は弓騎兵だ。家に矢を射る。
カァーン、カンと家を包む鉄板に跳ね返される。
反対にヒイやマールが放つ矢は確実に敵を減らして行く。近づこうとするとアオイのサブマシンガンが放たれる。
敵は接近するのをやめ、100mほど距離を取った。
流石にこれだけ離れられると狙って撃っても余裕で避けられる。
「どうするの」ヒイが不安そうな顔をする。
まあ、このままいれば天都軍か近衛兵が来てくれるだろうから心配はない。
「こんなこともあろうかと」
「不慮の事態に備えるのがメカニック」
アオイとナータが前に出た。
「そう言えば新兵器がどうのって言ってたな」
アオイとナータが収納から出したのはM4カービン銃のモデルガン。
「射程は最大200m、ウージーを改良したこれをヒイとマールが使えば百発百中」
ヒイとマールにちょいちょいと撃ち方を教える。
パーン、パーンと乾いた音がすると、離れたところに居る敵兵が倒れた。
あれは衝撃波の音、音速をいくつ超えているんだ。
音が刷る度敵兵が倒れていく。
この世界にこんな兵器を使っていいのか。
ヒイやマールが使えると言うことは、魔道具化されていると言うこと。
蓄石さえ使えば一般人でも使えてしまう。
「アオイ、それはダメだ。まだ早い」
俺はアオイにカービン銃の使用をやめるように言った。
アオイはきょとんとしてる。
「あまりに一方的な武器は使用すべきじゃない」
俺はM4カービンで遠くから一方的に攻撃することに虐殺めいた罪悪感を感じた。
中身はアオイのサブマシンガンを強化した物かもしれないが、使うべきではないと思う。
まるで進んだ科学を持つ我々が、遅れたこの世界の人間を殺しているような感覚だ。
それは植民地時代の西洋がやったようなアフリカやアジア、アメリカ大陸の蛮行に重なる。
「なんでだ!相手は俺達を殺そうとしてたんだぞ。旦那は甘い」
ドーテが叫ぶ。
「その通りだ。クーヤ、テロリストに情けは掛けなくていい。あいつらを生かしておくならアタイらを助けに来る兵隊を殺すかもしれない。カクタスやシリュウさんが怪我したり、殺されたりするかも知れんだろうが」
珍しくアカネが俺にお説教・・・。
俺は間違っていたのか、確かにこの世界は油断すれば殺される非情な世界だ。しかし、なるべく人間は殺さないようにしてきたつもりだ。
しかし、この場合倒さなければ被害が大きくなるのは目に見えている。相手も他国に侵入して襲撃事件を起こすような奴らだ。生きて帰ることは考えてはいまい。
「ヒイ、マール、肩を狙えるか!肩を打ち抜いてくれ!」
肩を負傷すれば弓は使えない。
「解った!」
「任せろ!」
彼女らの顔に迷いは消えた。
すまんな、優柔不断なリーダーで・・・。
パンパンと言う音とともに敵の騎兵が馬の上でうずくまったり、落馬したりする。
敵は襲って来た時の4分の1にはなっただろうか。
やはり近衛兵が駆け付けて敵兵を駆逐していく。
俺は階下に降りて皇子皇女に報告した。
「敵兵は駆逐されました。安全が確認されれば帝城に帰れます」
「我が護衛兵はどうなりました?」
皇女が悲しそうに確認した。この家にいないのだ。
結末は解っているだろう。
「誰一人として戻っておりません」
残念だが、数が少ないのに敵に分散して突撃したのだ生きてはいまい。
「なぜ、お前らは敵に突撃しなかったのだ!お前らは強いのだろう!」
皇子が俺に強い言葉を浴びせる。
「私の任務はあなた達を守ること。それを達成するために最良の選択をしました」
俺は静かに言い返す。
「ふん、臆病者が!」
そう言うと玄関を開け外に出た。
「何よ!偉そうに!ベーだ」
俺の後ろに居たヒイが皇子に向かってあかんベーをする。
あー、なごむなあ。
戦場の後処理を近衛に任せ、俺達は帝城へ。
途中市街地に入ったとたんに大勢の人たちが、道の両側に並んで闘刃姫に声援。
特にヒイにはハイジも付いているので即バレ。
「あの金色の子、ヒイちゃんだよ。イヌのハイジも居るし」
ヒイも手を振り返して声援に答えてる。
ヒイよ、仮面を着けてる意味を考えてね。
帝城に着くと天帝様から呼び出しがあったので、皆を帰らして執務室に出向いた。
執務室には皇子皇女も居た。
「相談役、ご苦労であった。話は近衛から聞いた」
近衛は戦いが終了した時点で伝令を送ったらしい。
「こいつがまともに戦わなかったから、うちの護衛隊が全滅してしまった。どうしてくれる」
皇子が俺を指差し、怒鳴り散らす。
あーやだやだ、やっぱりこんな奴が居るんだ。日本での上司を思い出してしまった。
「朕のところには、お前が護衛隊に対して包囲する敵に各個撃破を命令して、全滅したと連絡が来ているが?」
皇子に天帝様は怖い顔で言った。
「だからこいつも突撃すれば護衛隊が全滅することは無かったのだ」
「相手の数は3倍以上なのに各個撃破が出来ると思っているのか?」
天帝様にそう言われると自信がないのか、目を泳がす。
「護衛隊はお前の誤った命令で全滅したのじゃ。砦に籠らせておれば活躍も出来たじゃろうが」
「俺は間違ってない!」
皇子は憤慨する。
「まあ、良い。ここに集まって貰ったのは、捕虜の尋問で恐ろしいことが解ったからだ。
モンゴル帝国にはクーデターが発生し、皇帝は殺されたかも知れんと言うことじゃ」
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次回はクーヤがモンゴルに飛びます。




