4-24 マシロ対グレイブ、アカネ対スピア
ご愛読、ありがとうございます。
マシロとアカネの戦いです。
ミヤが勝ち、ライヤが敗れたことでクーヤ達の3勝1敗1分となった。次はマシロの試合だ。
〇 玄武国闘技場 転移161日目
「ごめんなさい。負けちゃいましたあ」
そう言ってみんなが待つ入場門に戻った傷心のライヤだった。
「いやいや、よくやったよ。頭は結構強く叩かれてるでしょ、大丈夫?」
マシロがケガの心配をする。
「ちょっと痛いですう」
「どれ」
アカネがライヤのベレー帽を取る。
アオイはしげしげと帽子の中を見た。
「大丈夫、内部構造に異常はないし、きちんと衝撃吸収できてるよ」
実はこのベレー帽、地震時の日本の落下物対策品で、コンクリート片やガラス片から頭部を守ってくれるようになってる。
闘刃姫の防具として買った優れものだ。
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その頃貴賓席ではクーヤがライヤの無事を知らされてホッとしていた。
「試合場の整備がちょっとかかるそうです」
ラミアがクーヤとラッソに説明する。
ライヤがクレーター作ってたから仕方がない。
クーヤは整備の様子を眺めるラッソに話しかけた。
「おまえ、この試合で俺の異能以外に狙っている物があるだろう」
ラッソはほほ笑むと返した。
「まあ、試合が終わるまでには解りますよ。それより、も私達の戦いより先に勝敗が決しても私達の戦いはやってもらいますから。この国の王族の開放はそれからになります」
「それだよな。なぜ俺と闘うことにこだわる?」
「それは言ったと思いますが、魔王様に楽しんでいただかないといけませんので」
「フーンまあ良いか。
話は変わるが、ラミアとギドラは試合に出てくる魔人たちに比べると弱いけどなんでだ?」
「それは中級魔人の作り方が違うからです。
ラミアたちは下級魔人の中で知能の高いものを選び、人間に憑依させますが、その時に魔人の意識を多く残すようにします。すると力は下級魔人で人間のような外観で力の弱いの魔人が出来ます。そのまま力が成長すると上級魔人に成れます。
試合に出た魔人たちは武芸の達人の技を失わないように、逆らわない程度に人間の意識を多く残し、魔人を憑依させます。ただ魔人の力を宿すために。」
「なるほどな。魔人の力を宿した達人は、身体強化されて達人に訓練されたうちの従者と、同等の強さになったと言うことか」
クーヤは魔人の力を侮っていたことを認め、この戦いが命を奪い合わない試合形式で良かったと思うのだった。
クーヤはラッソの本心がどこにあるのかが知りたいのだが、なかなか本心を現さない。
単に異能を賭けるだけなら、クーヤと一騎打ちをすれば良い。
なぜ対抗戦にしたのか、従者達がクーデターの時期の強さだと思ったのだろうか?
それなら、ここまでの試合で計算違いを後悔してるはずだ。
しかし、ここまで顔にも態度や言葉にもそれらしいことは出てこない。
我慢しているのか、他に狙いがあるのか?
「試合場の整備が終わりました」
ラミアの声に現実に引き戻されたクーヤは、試合場に目を移した。
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マシロは皆に見送られて試合場に向かう。
私達はこちらの世界に来てから仕方なく戦って来た。
でも今日は違う。私達は戦うことを選択した。
それはクーヤさんのため。
彼は私達が住みやすい世界を作るために頑張っている。
それを邪魔するものは排除するのが、戦う力を与えてもらった私達の仕事。
愛用の練習用の木製を右手一本で振る。
ゴォーッ!!
うん、調子はよさそうだ。
でもみんな苦戦してる。
油断はしないで。
「・・・白亜対グレイブの試合を行う。開始線に立って」
マシロは試合の注意を聞くのに審判に寄っていたが、開始線の方に離れる。
改めて相手を見て思った。
昔の武人のような鎧を付けたがっちりした大男がそこにいた。
目立つのは仮面からはみ出て、へそ辺りまである立派な髭と青龍偃月刀(木製)。
まるで三国志に出てくる関羽みたい。
それじゃあアカネの相手は丈八蛇矛の張飛かしら。
「始めぇ!!」
マシロは半身で切っ先がやや上がった左手が腰辺りで、所謂中段と言う構えである。
学生の頃は自分で防具が買えず、学校の備品・・先輩の使い古しを着けて試合に出た思い出がある。
マシロが思い出を浮かべていると、焦れたのか相手から出て来た。
マシロ以上の速度で振られる青龍偃月刀、相違も工夫もない超高速の一撃だ。
腹の部分で軌道を逸らそうとするが・・・なんて力。
ブレない!
何とか体を捻って避けるマシロ。
姿勢が崩れたマシロに連続で攻めるグレイブ。
何を思ったか足を広げ、八相の構えを取るマシロ。
ガッキーン!!
マシロはグレイブの打ち込みを両手を挙げ薙刀の中央で受ける。
力任せに圧し潰そうとするグレイブ、必死に支えるマシロ。
「ククク、俺と力比べをするつもりか?」
グレイブがマシロに話しかける。
「私の身体強化は最大になってます。負けません」
グレイブはマシロにのしかかる様に圧力をかける。
「そうら、もう降参してしまえ」
グレイブは体重をも青龍偃月刀に掛ける。
その時である。
マシロは少ししゃがむと、グレイブはマシロに覆いかぶさるようになる。
「はあああ!!」
グレイブが空中に跳ね飛ばされる。
「馬鹿ですね。足から体重が抜ければ、あなたの体重以上の力は掛かりません」
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「今のはどういうことですか?」
ラッソが隣に座るクーヤに尋ねる。
「グレイブが覆いかぶさったので青龍偃月刀からグレイブの前進力が抜けて、体重だけの圧力になったのだ。おそらくグレイブは魔人が憑依してからそう言う戦いをしていなかったのだろう」
「なるほど、しっかり地面に足を着けて圧力をかけた方が、大きな力が出せると言うことですね」
「まあ、身体強化しているならそうなる」
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グレイブはしっかりとマシロの方を向いて両足で着地した。
それによってマシロが攻撃する隙は生じなかった。
再び間合いの開いた二人は相手の動きを見定めようとした。
二人は同時に前に出た。
マシロは胴にフェイントを入れ、面を狙う。
グレイブは対応で遅れ、正面でのつばぜり合いとなる。
「こうなってはさっきの様には行かんぞ」
今度は水平方向の押し合いだ。
これだけの力が掛かっている状態では外して、つんのめさせることもできない。
力と力の戦いとなる。
圧し負けた方が一撃を食らう。
マシロがずるずると下がりはじめた。
地面にはマシロの靴跡が線になって長くなっていく。
「あっ!」
先程の戦いでグレイブを支えていたマシロの靴跡がしっかり陥没したようについていた。
マシロの靴がそこに嵌ったのだ。
今度はマシロが吹っ飛ばされる。
倒れたマシロにグレイブが振り被った。
マシロは横に避けようとした。
「まいった、降参だ!!」
貴賓席からクーヤが叫んだ。
審判がグレイブの前に回り込む。
「勝者グレイブ!」
審判が叫ぶ。
グレイブが青龍偃月刀をダランと降ろした。
マシロは倒れたままだ。
クーヤは貴賓席を飛び出した。
仲間も入場門から駆け付けた。
「足はひねったりしてないか?」
クーヤは優しくマシロに語り掛けるが振り向かない。
「ごめんなさい。負けました」
「仕方がない、相手が強かった」
マシロは皆に支えられながら退場した。
クーヤも貴賓室に戻った。
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闘技場ではライヤのクレーターほどではないが、凸凹が出来ているので整備中だ。
「まだ勝負はついてなかったと思いますが、なぜ降参を?」
「ここの音を切れ」
ラッソが合図をした。
音が切られたようだ。
「今着せてる服には衝撃吸収機能は少ないんだ。ケガをさせる訳にはいかん」
クーヤは顔色も変えなかった。
「でも避けようとしてたじゃないですか」
「当たる可能性の方が高かった」
ラッソがやや呆れ気味だ。
「過保護なんですね」
「俺の都合で戦わせてる。ケガなんかされては困るんだ」
「でも納得して戦っているのではないですか?」
「それでもだ」
「私が従者を巻き込んだことを怒っていますか?」
「まあ、それなりにはな。しかし、この試合に出るのは自由意志だ。気にしてくれるな」
そうこうしているうちに入場門から選手が出て来た。
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アカネは先ほどの試合の結果で、マシロが泣いているのに驚いていた。
自分達は長くクーヤと居たことから、まず負けることは無いと思っていたからだ。
しかし、現実ではマシロは敗れた。圧倒的と言って良い相手の力に負けて、ほぼ何もさせてもらえずに。
自分はどうすればいいのかが分からない。
『相手をよく見ろ!そのうえで自分の技で闘え』
アカネが貴賓室に目をやるとクーヤが頷いた。
そうか、マシロは相手の土俵で戦ったから何もできなかった。
自分から積極的に行くべきだ。
中央に立つ審判に寄る。
「・・・。茜空対スピアの試合を行う。開始線に立って」
開始線に立って相手を観察する。
身長は私よりやや低い、細マッチョで防具を着けず動きやすそうな服装をしている。
スピードタイプかな?
「始めえ!!」
スピアは開始の合図とともにアカネに突進して来た。
アカネは槍を大きく振りながら右に避ける。
スピアはアカネの槍を止まって避けて、また突進する。
アカネの槍の方が長く、それをけん制に使うので、スピアは間合いに入れない。
アカネは気付かない、スピアの左手が石突付近に移動していることを。
それは5度目の突進の時だった。
アカネの間合いの外で止まったスピアは左手一本での突きを放つ。
それはアカネの間合いを飛び越して届く。
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次回はアカネの続きとヒイの登場です。




