4-18 魔人との対話
ご愛読、ありがとうございます。
今回はクーヤとラッソが話し合います。
クーヤはラッソに持ち掛けられた玄武国の平和を掛けた試合を受けることにした。明るく振舞ってはいるが、負ければ世界を魔人に渡すことになるかもしれない決断だった。
〇玄武国王城 転移152日目
俺は朝、キメイの従者通信で起こされた。
王城で魔人が今回の事を公表したようだ。
キメイの孫従者は王城から魔人が試合を行う条件や勝負の結果の条件も言ったようだ。
俺はヒイとミヤの恒例の行事をキャンセルして飛び起きて、王城の上空に瞬間移動した。
俺に飛び乗れなかったので頬を膨らましたヒイも可愛かったが仕方ない。
俺は瞬間移動についてひらめいたことがある。
それは重力制御を使って、空中に移動することだ。
100mも上がれば人間が重なることは全くない。
鳥や虫ぐらいならどかすことが出来るからな。まあ、そこにはまずいないけど。
そう従者通信でナータに自慢したら「君、今頃気付いたの?」だって腹立つよな、最初に教えておけよ。
と言うことで、俺は王城の上空100mにいる。
ここから見る限り王城に昨日と変わりはない。
まあ、じっと待っているのも俺の性に合わない。
ちょっと高度を落としてっと。
「おーい!ラッソォ!クーヤが来たぞ!出て来てくれえ!」
城に呼びかけると、執事の格好をした若い男が城の壁の上に出て来た。
「クーヤ様ですか。私はラッソ様の一の部下でギドラと申します。ご用件を伺ってもよろしいですか?」
不意にギドラが吹っ飛ぶ。
「誰が一の部下よぅ!一番は私に決まってるの!」
ラミアと言ったか、チャイナドレスの女がドロップキックをくらわせたようだ。
「クーヤ様。ラッソ様のところまで案内しますわ」
右手を階段の方へ向けておれを誘導しようとする。
その時起き上がったギドラが走ってきて、ラミアの顔を狙って右ストレート。
ラミアはそれを紙一重で避けながら、左フックをストレートに被せてギドラの顎に合わせる。
「Wクロスで勝負!!」
ギドラは右ストレートを戻しながら、肘で左フックを跳ね上げ、その反動で左ストレートを放つ。
ラミアはやや右向きにダッキング、左ストレートはラミアの頭上を通り過ぎる。
そこから地面すれすれまで構えたラミアの右拳が、伸び上げる体を突き抜けるように上昇する。
ラミアの拳はギドラの顎を捕らえ、弧を描くようにギドラの体は宙を舞う。
なぜか昔見たボクシングのアニメ映画を思い出す展開だ。
「さ、参りましょう」
ノックアウトされたギドラを見捨てて、俺はラミアの後を追う。
なぜおとなしくついて行くのかって、俺には二人の動きが全部見えてた。
二人の実力は俺の従者達に及ばないからだ。
城に入って恐らく王の執務室に案内される。
ラッソが立って挨拶する。
「クーヤさん、良く来てくれました」
ラッソは手を伸ばすが、握手するつもりはない。
「すまないな。俺達は握手する間柄じゃあないはずだ」
「その通りでした」
ラッソは手を引っ込めて、俺に座る様に仕向けた。
俺は座ってラッソを観察する。
前は鬼族の若者に憑依していたので、粗暴で力強い感じだったが、今は色白で聡明で少し軽そうな人族の貴族のような風体だ。
魔力はあまり感じないが、魔人である以上大きな容量を持っているのだろう。
「それで、こちらに試合に来ていただけるのですね?」
「ああ、試合場は用意できたのか?」
「今交渉中の闘技場があります。期日までには使えるようにしておきます」
ラッソは思いついたように言った。
「試合の様子ですが、闘技場の外、魔人国、天都に中継したいと思っています」
「はあ、ちょっと待て、どういうことだ?」
「クーヤさんは異世界から来たと聞いています。テレビ中継はご存じではありませんか?」
「テレビ中継は知っているがこちらにそんな技術があると聞いたことがない」
「まあ、あなたの世界の技術とは違いますが、魔力があれば何でも出来ちゃいますからね」
俺の頭はまずいと警鐘を鳴らす。
「ちょっと待て、闘技場には観客も入るのか」
「もちろんです。我々も人間世界で暮らすには金が要ります。せっかくの催しですし、稼がせていただきましょう」
「そんなことをしたら、俺はともかく従者の顔がバレるじゃないか!」
「そうですね。それは仕方がないですね」
「お前も出るんだろ。お前の顔もバレるぞ。外を歩けなくなるぞ」
「心配はご無用です」
横に控えたラミアがさっと何かをラッソに渡す。
仮面かな?凸面と凹面があり、のっぺりとした凸面に歌舞伎の隈取模様みたいなのが描かれている。
穴は開いてない。
「ちょっと見せてくれ」
ラッソが顔に付けたものを見せてもらう。
顔に付けるまで視界が閉じられるが、顔に付けたとたん、まるで何もなくなったように視界が開けた。
仮面をつけてるような感覚がない。
俺は面を外した。
「すごいな、これ、うちの従者にも着けさせたい。1面くれないか。じゃないと従者は試合に出せないな」
「え、どうしてですか。あなた達は人間に悪いことをするわけではないのですよ。褒められることはあっても悪く言われることは無いでしょう」
「馬鹿だな。人間には自己承認欲求と言うのがあって、お前の用意した武芸者を倒せば、信帝国で有数の武芸者と認められる。だから従者を倒せば俺は帝国に認められた武芸者になれるって思う奴が必ず出てくる。
そんな奴をいちいち相手にするのは面倒臭いだろう」
ラッソは呆れた表情で俺を見る。
「人間ってもっと気楽なものだと思ってました。それ、持って行ってもらって結構です」
なぜか自分で言っておいて、人間を馬鹿にされた気がする。
「では、従者さんの得意な武器を教えてもらえますか。なるべく似た武器の武芸者と試合っていただきます」
「まず、ヒイが弓矢だ。
ミヤが小太刀。
マシロが薙刀。
アカネが片鎌槍。
アオイがサブマシンガン。
ジュレイとドーテが刀。
ライヤがハンマーだな。
狼が出れるならハイジが噛みつきだ」
ラミアが必死でメモを取る。
あまり文字を書いたことがなさそうだ。
何回か聞き返されて書いていた。
「すみません。”さぶましんがん”とは何ですか?」
「魔道具で小さな鉄球を連続で、しかも高速で飛ばすんだ」
「うーん、ちょっと試合う相手がいませんね」
ラッソは首を捻る。
「まあ、特殊だから仕方ないね。でも狼も試合できるんだ?」
「ああ、かなり大きくなれるんですよね。恐竜魔獣でも呼びますよ。客受けしそうだ」
ラッソは単純に喜んでるみたいだ。
異能を狙ってるんだよね?
「お前は俺達に勝ちたくはないのか?」
「もちろん勝ちますよ。でもある程度のドラマは必要かなと思っています」
何だこいつ、視聴率を気にするテレビ局みたいに。
ああ、もうこいつの事が理解が出来なくなってきた。
うん、足音が近付いて来る。
俺の耳もヒイやミヤに影響されてずいぶん良くなってる。
執務室のドアが乱暴に開かれる。
ギドラだ!
ギドラはラミアに飛び掛かった。
俺は座ったままギドラの右手首を極め、インターセプトした。そしてそのまま床にうつ伏せに倒した。
「痛い、痛い、放して」
ギドラは子供の様に泣き叫ぶ。
「これは、どういうことだ!ギドラ!私の客にこんな無礼を働くとは!」
ラッソはかなり怒っている様だ。
「俺をエスコートする役をそこのラミアさんと取り合って、伸されていたから復習かな?」
ラッソは俺に頭を下げた。狙われたラミアは呆気に取られてる。
「クーヤさん、申し訳ありません。私の見ていないところでそんなことをしているとは・・・」
「ラミア、ギドラを連れて出て行きなさい。私達の話が終わるまで入室を禁止します」
「ら、ラッソ様、その男と二人では危険です」
ラミアはラッソに哀願するがラッソは首を振る。
「お前が居たところで何の役にも立ちません。行きなさい」
ラミアは項垂れるギドラを引っ張って部屋を出て行った。
「すみません、下級魔人から拾い上げて中級魔人としたのですが、教育不足でした」
「君達は憑依すると関節技が効く様だ」
ラッソは俺がギドラの粗相にかまわず、魔人が人間の弱点を持つことに関心を向けることに目を見張った。
「私達に関節技が効くのに興味がありますか?」
「ああ、お前は従者と戦う武芸者に魔人を憑依させると言った。ならばそのギドラに興味を持つのは当然だろう」
俺の感覚は武芸者のそれになっている。
従者の戦いが少しでも有利になる様に考えるのは当然だろう。
「なるほど、武芸者と言うものはそう言うものですか」
「原則的に魔人が人間の動きに捕らわれるなら、我々も訓練しやすい」
ラッソの気配が変わり、俺をさらに警戒するようになった。
「私は少し、あなたを侮っていたようです。転生者は勇者の様にただ身体能力が高いだけと思ってました」
「まあ、いろいろいるだろうさ」
その後俺達は試合のルールなどを話し合って解散した。
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天都 帝城朝議会場 第三者視点
朝議会場は幅50m、奥行きが30mほどの広さがある建物で行われていた。
朝議には数百人の貴族、またはその代理人が並んで椅子に腰かけていた。
昔は天帝様以外は立っていたそうだが、朝議時間が3時間以上に及ぶことがあり座ることを許した。
会場の一番奥に2段の段があり、1段は1.5mほどの高さがあり、貴族席からは簡単に来れないようになっていた。高い段の中央には玉座があり、天帝様が座り、低い方の段には大臣たちが並ぶ。
普通朝議は大臣が議題と解決方法を読み上げ、天帝様が許可または拒否をすることになっている。
まあ、普通は朝議後に行う大臣たちとの会合で解決されているので、大臣には結果が解っている。
朝議は貴族達に結果を知らせる儀式ともいえる。
まれに貴族からの陳情が出されることがある。本来なら官僚から大臣会議に回されるのが普通である。
いちいち、数百人もいる貴族の陳情を朝議で話し合うことは無い。役所に言えと言われるのが普通である。
ところが今日は違った。
手を挙げて話し出したのは玄武国王の代理人だ。
「わが国は、今魔人の侵略を受け、王族は人質に取られております。天帝陛下に置かれましては、なにとぞ早急に国軍の派遣を賜りますようにお願いします!」
朝議会場はたちまち興奮のるつぼと化した。
あちこちで放たれる叫びに似た声が会場に満ちたのである。
その中には天帝に悪意を向けた内容もあった。
「静かに!静かにせぬかあー!!」
軍務大臣ゲントクの叫びである。
「天帝陛下のお言葉であーる!!」
流石に天帝陛下の名前が出たとたん、静まり返る会場であった。
天帝が立つと自然と会場の全員が立った。
そして彼女の文言一言一句を逃すまいと耳を傾けたのだった。
「安心するが良い。朕はすでに手を打っている。10日もしないうちに魔人は引き上げるであろう。朕を信じよ!」
オオー!!
会場は天帝を称える叫びで満ちた。
『済まぬ、クーヤよ。あとはお前に任せるしかない』
面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。
次回は試合まで行けるかな?




