4-12 山岳民族ドーテ
ご愛読、ありがとうございます。
今回はドーテが故郷の村に帰ります。
クーヤはドーテの一族を学校に呼ぶため飛行機で台湾に来たが、なんと着陸場所がないという。
〇台湾 台中の上空 転移146日目
「あ、旦那こっち」
ドーテも上空から見る町と自分が歩いてきた道が一致してきたようだ。
しかし故郷に近付くにつれ、ドーテの言葉に方言が混じってきたようだ。
「こっちじゃなくて右とか左とか言いようがあるだろ」
俺達が座っているのはタンデムシートだ。
後ろで指差されても見えるわけがない。
「あれ、田んぼの中の道!」
この時期、道路の脇には人の背丈を越える草が生えていて、そんな場所には危なくて着陸できない。
その点、田んぼの中の道は脇が草が刈られているので何とかなりそうだ。
ただ狭い、幅は2mと言ったところだ。
小さい馬車の道なのだろう。
こんな道を長々と滑走する訳にはいかない。
ちょっとした横風で田んぼに落ちちまう。
他に適当なところはない。やるか!
俺は道の上で迎角を上げて、失速ぎりぎりまで速度を落とす。
フラップを降ろして、プロペラの推力風で機体を浮かせながら速度をさらに落とす。
地面ぎりぎりで揚力を失い着地する。
2mほど滑走して停止する。
「とりあえず、ここは台中の市街の外れだけど、あとどれくらい」
「うーん、この山道を20kmくらいかな」
ヒエーとか言いながら飛行機を仕舞って、バイクを出す。
川を登る形で2mくらいの細い道を走っていく、景色は草に隠れてほとんど見えない。
すぐに標高1000mを越える山に囲まれ始める。
「すごいところに住んでるんだな」
「俺らの先祖は大陸の戦乱で逃げて来た民に平地を取られ、山に追い込まれたそうや。
俺らが武を忘れんのは、いつの日か平地を取り戻すためと教えられたんや。
今は俺らだって好きな場所に行って、好きなことが出来る。
それやのに、こんな山奥に隠れ住むやなんて、馬鹿げたことやと思わんか」
ドーテは故郷を出てすぐにそれに気づいたのか。
「そうだな、確かにそうだ。俺の産業革命をそのきっかけにしてくれたら嬉しいな」
「旦那ア!!」
ドーテがしがみ付いてきた。
どんな顔をしているのか分からないが、喜んでくれているんだろう。
二つの膨らみの圧力はジュレイより強いな。
かなり登って来た。
原生林がいきなり開ける。
尾根と尾根に挟まれた猫の額ほどの平地、それがドーテの故郷だった。
村の真ん中の広場にやって来た。
多い時でも100人も住んでなかったのではないかと思われる村だ。
畑は秋撒きの小麦が収穫され、田んぼには青々としたコメが育っていた。
山の斜面には栗の木が植えられている様だ。
「おーい、ドーテが婿を連れてきたぞお!」
俺達を見付けた村人が大声で村人を呼ぶ。
「違う!違う!」
ドーテが否定する。
「何が違うんだ?」
「俺が嫁に行くの、分かるかあ?」
「えー!?」
最初にあった男が驚いている。
ドーテの話では族長候補は強い男を婿として連れてくると言ってたから、俺を婿と思ったのだろう。
「ドーテどういうことだい」
「母ちゃん!」
見物人をかき分けて30歳くらいの女性が出て来た。
ドーテのお母さんらしい。
「婿やないってどういうことやって聞いてんの?」
「うん、婿やなくって旦那さん、俺が嫁に行くんや」
「ここを出るってことかい」
母親はかなりお冠だ
「おうてない!(正しくないと言ってます」
ドーテは叫ぶ。
「何がさ!」
「みんなでここを出るんや!」
ドーテは泣いていた、感極まったのだろう。
周りが騒がしくなり始める。
意味が分からないのだろう。
「どういうことか、ゆうてみな」
母親は少し冷静になったのか、ドーテに理由を聞く。
「それについては俺が説明しましょう」
俺はドーテの前に出る。
「あんた誰や。偉そうに」
まあ、実際偉いんだがな。
「俺の名はクーヤ、信帝国相談役として天帝陛下に侍っている。
この度、信帝国に産業革命を起こすように陛下より依頼を受けた。
そこで天都伊河のほとりに産業訓練学校と製鉄所、繊維工場、魔道具工場などを建てる。
そして、ドーテよりこの村が存続の危機にあると聞いた。
そこで、新しい工場の従業員にこの村を丸々当てることを考えた。
もちろん、住居はこちらで用意する、費用は月々の手当てから少額ずつ返してもらえばいい。
移動、職業訓練はこちらで無料で行う。
ただし、時間的には今年中には移動してもらわなければ、よそで募集することになる」
俺は一気に話した。
「そ、そんな事許せるかあ。俺らは先祖代々この土地を守って来たんやで!」
へえ、母親の一人称も俺なんだ。
「俺は別に全員でなくても構わない。詳しくはドーテを置いていくのでそっちに聞いてくれ」
俺は細かい話を村人とする気はない。
俺は限界集落にチャンスを与えに来ただけだ。
「ドーテ、あとは頼んでいいか?」
「うん」
「ちょっと待ちいな。うちの娘を嫁にすんのに挨拶はなしか!」
オウ、母親が突っかかって来たな。
「すまんな、嫁云々はドーテが勝手に言ってることだ。将来はどうなるか分からんが、そんなに心配ならそばに居てやることだ」
「俺はもう大人や。俺の旦那は俺が選ぶ。母ちゃんは黙ってんか!」
「だそうだ。俺は帰らしてもらう。ドーテ、帰りたくなったら呼んでくれ。じゃあな」
「おう、後は任せてくれ」
ドーテの元気な返事を受けて、俺は寮に瞬間移動した。
******
〇ドーテの村 ドーテ視点
俺は久しぶりに自分の家に入った。
母ちゃんが俺とサシで話したいとゆうからや。
居間に座ったとたんに母ちゃんが吠えた。
「あんた、いったいどういうことや!」
すこぶる機嫌が悪そうだ。
「あ、思い出した。父ちゃんにおうた(会った)ぞ」
「どこで!?」
「天都や、極悪ギルドの手先になって、俺らを襲いに来たんや」
一気に母ちゃんの顔色が悪くなる
「そ、それで?」
「旦那の役職聞いてビビって逃げた」
ホッとしてやがる。15年も放っとかれても好きなんかな。
「そうか、生きてたんやね」
「あの様子じゃあ、また戦うことになるかもね」
「父ちゃんと戦うってゆうのか?」
「まあな、あの人の身を寄せてところは旦那が潰したけど、またぞろ俺達の敵に雇われそうや」
母ちゃんは唇を噛んでる。母ちゃんの気持ちは分からないけど、父ちゃんを思ってることは分かる。
「父ちゃんは強いのかい?」
「おうた時は父ちゃんの方が強そうだったけど、今なら俺が強い」
あの時は従者になってすぐだったけど、鍛えられた今はレベルが違う。
「ゴホン、脱線しちまったねえ。なんで、平和な村に波風を立てるようなことを言うんや」
「この村はそのうち潰れる。解ってるんやろ。食料も売れるようなものは作れへん、現金を手に入れようとしたら人を売るしかあらへん。こんな村の族長なんかしたくねえよ」
「そんなことは無いんよ。木を切り出して薪にするとかやね」
「そんなもん魔導コンロが普及して来とる今、どんだけ売れるちゅうねん?木材を売ろうとしても道はねえし、この村は詰んでるんだよ」
「この村は先祖代々守って来たんや。そんな簡単に捨てられるか」
「先祖は平地に帰りたかったんやろ。俺はその道を持ってきたんや」
母ちゃんの顔から表情が消えた。
「ああ、ついに来ちまったようだね。ドーテ、アンタはすごいな。俺は18の時やった」
すっと立ち上がって俺を見た。目がすごく冷たかった。
「ついておいで」
俺は裏庭に呼び出された。
母ちゃんは縁側に剣を並べて言った。
「好きなのをお取り」
「母ちゃん!何のつもりや!」
「お前が自分の意見を通したいんやったら、私を殺せ。それがこの村の掟や」
母ちゃんに引くつもりはないみたいだ。
「母ちゃん、やめようよ」
「族長を継ぐとき、前の族長を斬って、強い心を手に入れるんだ。お前もこの道を通って族長になれ!」
目が本気だ。そういやばあちゃんの記憶はねえな、そう言うことだったか。
「仕方ねえ」
俺は次元収納庫に手を突っ込んで愛刀を握った。
「それがあんたの剣か。綺麗な刀だ」
母ちゃんは正眼に構える。ふうん、やっぱり隙はねえか。
俺は小手に見せかけの隙を作る。
母ちゃんは間髪を入れずにその隙を襲う。
「はあ!!」
俺は母ちゃんの剣を上から巻き込むようにして軌道をずらす。
母ちゃんは地面に向かう剣を持ち上げようと力を入れる。
俺の刀は母ちゃんの剣の下に入る。
母ちゃんの剣を巻き上げるように刀を振る。
母ちゃんの剣は母ちゃんの手を離れ、空中へと飛んでいく。
「あ」
もう遅い、俺の剣の切っ先は母ちゃんの喉にある。
「こ、殺せ!」
「必要ないやろ」
俺は落ちて来た母ちゃんの剣をキャッチすると、柄の方を母ちゃんに向けて差し出した。
「もう勝負はついた。これ以上は必要ない」
母ちゃんは剣を受け取らずに泣きながら言った。
「お前に殺されなきゃ、お前に強い心が出来ないんや!」
「母ちゃん、俺は二回死にかけた。まあ一回目は左手の肘から先を失った。2回目は・・・」
俺は刀を収納庫に入れ、代わりにビキニアーマーを取り出した。
「この通り、胸に大きな穴が空いたんや」
アーマーの乳房を覆う部分に大きな穴が空いている。
「これで生きていたのかい」
母ちゃんはアーマーを受け取って驚いている。
俺はシャツとブラジャーをたくし上げ、乳房をさらけ出した。
「綺麗なもんだろ。手もここも旦那に直してもらったのさ。・・・
俺はさ、死ぬんなら旦那のためって決めてるんや。
そやから母ちゃんの命を繋げない。
俺の娘に俺を殺すことはさせられないんや」
母ちゃんは涙をぬぐうと俺の乳房とアーマーをじっくりと見た。
「本当に傷を残さんと・・・。あんたが惚れるのも無理ないわ」
俺は乳房を仕舞うと母ちゃんと家に入った。
「本当に平地に戻れるんやね」
「ああ、家は工場の敷地の中とはいかんやろうけど土地は一杯あるしね。秋の収穫が終わったら来て欲しい。職業訓練が終わり次第働いてもらうわ」
「お前が村を救ってくれるなんてね、思っても見なかったよ」
「あははは、偶然だよ偶然。街に出た人達にも声を掛けてくれんか、たぶん今よりいい生活が出来るさ」
「夕方、皆を集めるから説明してくれるか」
「うん」
俺はふと思い出した。
「あ、母ちゃん、俺飯食うの忘れてたわ。母ちゃんも食うか?」
俺は収納庫から握り飯とお茶を出す。
「あんたのそれは何でも出てくるんやね。感心するわ」
「何でもは出てこん、入れたもんだけや」
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次回はラッソの作戦が始まります。




