4-11 台湾へ
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天帝様から休みを貰ったクーヤがドーテと台湾へ行く話です。
ゼブルの進行を退けたクーヤは、次の魔人の襲撃に備えて、ファティマ王国の王子ナータを従者に加えたのであった。
〇帝城 天帝執務室 転移145日目
この日の午後、俺は天帝様に西域での魔人襲撃について語っていた。
「すまん、朕の考えが甘かった。魔人がそこまでその異能に執着しているとは思っていなかった」
天帝様は大きく頭を下げた。
「天帝様が頭を下げちゃだめだ。これからは頭を下げずに済むようによーく考えてから行動してください」
「今日のお前は厳しい。もっと優しくしないと拗ねるぞ!」
天帝様は頬を膨らましてるけど、今日は言っちゃいますからね。
「今回は従者が一人死にかけたんですからね。慰めませんよ」
「ふむ、、君の従者がどうなったのか具体的に聞きたいんだが」
コウメイ様が俺に聞いた。
「それはですねえ。・・・」
俺は恐竜魔獣との戦いを説明した。
「つまり、君の従者が君の助言を聞かずに、魔獣の突進を受け止めたから、ケガをしたと言うことか」
「そうですよ。体重100kgを越える魔獣が時速50kmを越える速度で突っ込んで来るんだ。衝撃としては10tと超えるでしょう。止められる訳がない」
「妹は危険な行為をしなくていいと念を押したはずだ。魔獣に向かって行ったのも、危険な行為をしたのも君の責任じゃないか?」
コウメイ様は冷たく言い放つ。
「でも魔獣は一般人を狙ったのですよ」
「放って置けばいい。君への依頼は調査であって戦闘ではないはずだ。結果として白虎国を救ってくれた。これには感謝しよう。しかし、それで妹を責めるのはお門違いじゃないかね」
「だって、無辜の人達が狙われたのですよ。それを放って置けとは」
「敵の侵略に対抗するのは軍の仕事だ。君がそれをしなくても誰も君を責めることは無い。君が出来てないのは切り捨てる勇気だ。君が負けていればこの世は魔人の物になる」
ガーンと頭を殴られたような衝撃を受けた。俺達のやったことは間違いではないにせよ、人類にとって危険な行為だったのか。
しかし、またこんな場面に出くわせば、俺は戦ってしまうだろう。
「すまぬ、お前が冷酷な判断が出来ぬことが分かっていながら、その異能を預ける決断をしたのは朕じゃ。お前が苦しむのなら、その異能を朕に移し替えても良いぞ」
「何を言う!そうなったらお前が魔人に狙われるのだぞ!クーヤと違ってお前に魔人を退ける力はない!」
コウメイ様は天帝様に叫んだ。
つまり、あれか、俺には冷徹に人を犠牲にすることはできないけど、魔人に対抗できるのは俺しかいないってことか。
俺にはこの異能を放り出して、他の人を犠牲にすることはできないってことだ。
「分かりました。俺は魔人が俺を狙ってくる限り魔人と戦います。異能は盗られないように頑張りますけど、フォローをお願いします」
「戦う覚悟をしたのは良いが、お前の従者は魔人との戦いを容認してくれるのか?お前の強さは従者の力が大きいと思うがな」
コウメイ様は何時も厳しいな。
確かに俺の戦いに従者達を巻き添えにするのは申し訳ないな。
たとえ、従者達が俺のために戦うと言ってくれても、今回のようにケガをされるとなあ。
「ああ、もう!でかいなりをしおってうだうだと鬱陶しい!お前は悩まないと前に進めんのか!」
突如天帝様が怒り出した。
そんなこと言われても、俺はついこないだまでブラック企業の社畜だったんだぞ。
ビシッと割り切れる性格ならそんなとこに居ないって。
心の中で言い訳しつつ、帰ることにしよう。
「ああ、お前は根を詰めすぎておるようじゃ。3日ほど休むが良い」
天帝様は可愛そうな子を見るようにそう言われた。
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〇クーヤが帰ったあと 第三者視点
「妹よ、クーヤに対して言葉がきつくないか?」
「あいつはとんでもない力を持っているのに、自分のために振るおうとしない。いらいらします」
「だから安心してお前を任せられる」
「ど、どういう意味ですか?」
「お前もそろそろ年頃だ。あいつが帝配になってくれるなら、俺も安心できる」
「兄上!何を言っておられるのです」
顔を真っ赤にして照れる天帝をにこやかに見るコウメイであった。
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〇 学校用地寮 転移146日目
「センセー、お休みでしょ。どっか行くのぉ?」
朝からヒイがへばりついている。
「そういやクーヤがまともに休んでるところって見たことねえぞ」
「そうだね。出会ってから休んでたことないよね」
「クーヤ君はあれだよ。ワーカーホリック」
転移組がとんでもないことを言ってくる。
「ねえ、ワーカーホリックってなあに」
「仕事中毒者の事だよ」
「それって病気?」
ヒイが泣きそうな顔になる。
「おいおい、ヒイに心配かけるなよ」
「だけどあなたがワーカーホリックなのはその通りでしょう」
「せっかく休めって言われたんだから素直に休めってことだよ」
「でも、学校のことがあるだろ」
「学校のことは兄に任せておけば大丈夫です」
ライヤは兄のナオジがドワーフたちをまとめて、学校造りに勤勉に働いていることを知っていた。
「うう、」
「センセー、大丈夫なの?」
「まあ、ナビさんがいる限り体調不良になることは無いでしょうよ」
あまりに俺への扱いがひどい。
「そうだ、ドーテ!台湾へ行こう」
ドーテの一族に挨拶と収穫後の移民の話をしなきゃと突如思いついた。
「え、それは嬉しいけど、休むんじゃなかったのかよ」
「ホントに休むってこと知らないんだから」
「忘れると後が大変なんだよ。できたらゴーレム工場が稼働する前に来て欲しいし」
「魔道具を作るんじゃないの」
「天帝様に反対された。今の魔道具製作の工場が全部潰れるからって」
「確かに、現在販売されてるものより高機能で廉価になるからね」
「それで高機能の物を高値で少数販売する許可は得てる」
魔道具担当のアオイは難しい顔をする。
「それじゃ産業革命の意味はないわ」
「その魔道具って言うのはどんなものを考えてるの」
「魔力バッテリー付きのコンロ、照明器、給湯器だな」
「そんなの売れるのか?人間の魔力で動くじゃないか」
「まあ照明器は使用量が少ないから人が付いてなくてもいいが、他の物は人間が付いて魔力を供給しないといけない。それと調整が出来る。コンロの火加減、照明器の明るさ、給湯器の温度なんかだな」
「煮込みとか、常夜灯、人肌とか調整が出来るってことか」
「そうだ。それにジュレイの氷魔法の術式を魔石に移せば、冷蔵庫を作れる」
「冷蔵庫って何?」
「肉や野菜を長く腐らせずに保管できる収納庫だよ。アイスクリームも作れるぞ」
ジュレイはまだ西域から帰ってきていない。
こちらに送る人員の面接までやると言っている。
帰るときはナータから手に入れた瞬間移動で迎えに行くつもりだ。
瞬間移動は自分だけしかできないが、またヒイの家を建ててワームホールを繋げればいい。
「アイスクリーム作れるのぉ。作ってぇ」
ヒイはアイスクリームに飛び付いたようだ。
「まだ、冷蔵庫もできてないぞ。アオイお姉さんとジュレイお姉さんに頼んでみるんだな」
魔石と魔力バッテリーの組み合わせは無限の可能性がある。
家庭用品の他には、ゴーレムエンジンによる船外機をまず作ろうと思ってる。
陸上輸送は運転免許制度が必要だろうし、船外機は比較的簡単に既存の船に付けられるからな。
魔法の術式を魔石に移す場合、熱とか灯りとかの単機能の物は比較的簡単にできるが、ゴーレムなどの複雑なものは結構面倒臭い、それをアオイはナビさんの協力でやってしまう。
魔素を魔力に変換するジェネレーターはアオイの才能のおかげと言う一面もある。
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〇寮 ドーテの部屋
「これは、なんだ」
寮の自分の部屋で白いゴワゴワした物体を広げるドーテ。
「これは紙おむつと言うものだ。もし、漏らしても付いている吸収体が吸収して蒸れないのだ」
「なんで、こんなものを用意したんだ?」
「台湾に行くのに4時間かかるんだ。その間に催してもトイレに行くことはできないのだ」
「旦那は西域を瞬間移動で行き来したんだろう?」
「なぜ、知っている?」
「ナータが帰る前に言ってた。飛行機じゃなくて瞬間移動で行けばいいじゃないか」
「残念ながら瞬間移動は本人だけしか移動できないのだ」
「ううん!?あれ、あれ」
ドーテは頭を抱えてうろうろし始めた。
「どうしたんだ」
「あのさあ、旦那が先に瞬間移動で行って、ヒイの家建ててワームホールを繋げたらどうなる」
「ぬう、おまえにしては考えたな」
「これで俺が長い時間狭い飛行機に乗らなくても良くなったな」
ドーテはフフーンと鼻息荒く胸を反らす。
「甘いな、瞬間移動は行ったことがある場所じゃないと出来ないんだ」
「それじゃあ、旦那が一人で飛行機で行けばいいんだ」
「お前は俺が一人で四時間も飛行機に乗って行けと言うのか」
「だめか?」
「寂しいじゃないか。なんでお前は飛行機に乗りたがらないんだ?」
「・・・た、高い所が怖いんだよ」
俯いてもじもじしてやがる。なんか可愛いな。
「なんだそんなことか。ナビさんが直してくれるよ」
「ホントか?!じゃあ、行く!」
さっきまで泣きそうな顔をしていたくせに、花が咲いたように笑う。
ドーテはさっとズボンとパンツを降ろす。
「こら、まだ俺が居るんだぞ!」
俺は見ないように部屋の外に出ようとする。
「旦那なら見てもいいのに」
後ろからそんな声が届く、この世界の庶民は慎みがないよな。
飛び始めて2時間、長江や大きな湖の上を飛ぶ。
ここからは1時間以上山ばかりで景色に変化が無くなってくる。
「すげえなあ。俺今まで飛行機に乗せてもらっても、下が見れなかったからさあ」
ドーテは飽きないようだ。
「あ、海だあ!旦那、海だよ」
海がどんどん近付いて来る。
「後1時間ぐらいだ。海を越えると台湾だぞ」
巨大な島が見えて来た。
「お前の村の近くに飛行機が降りられそうな場所はあるか?」
「どんなとこ?」
「周りが開けてて、幅10m、長さが50mは欲しいかな」
「そんな場所ないよ。だって山の中だからな」
そんな、どうすんだよ、おい。
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次回はドーテとドーテの母親の話です。




