4-10 後始末
ご愛読、ありがとうございます。
今回はその後です。
魔人ゼブルの襲撃を撃退したクーヤ達は残存兵力がないか、昨日の探索場所に向かうのだった。
〇昨日の岩山 転移144日目
俺達は昨日ジュレイと探索した岩山に来ていた。
「ジュレイ、この辺だったな」
「はい、そこの変な形の岩に見覚えがあります」
昨日の夕方から夜にかけて風が吹いたようで、ブラキオサウルスの足跡は綺麗さっぱり消えていたので、ジュレイの記憶力には非常に助かる。
「じゃあ、探索開始だ。足元が凸凹してるから気を付けてくれ。
ヒイとハイジが先頭を切って走っていく。
野生児は元気だわ。
そして物の数分も立たないうちに従者通信が来た。
『魔獣の匂いを見つけたよ!』
俺はヒイの方へ歩きながら、隣にいたジュレイの顔を見た。
「お、同じ獣人でもいろいろあるんだ」
白虎の獣人である彼女でも、嗅覚はヒイに勝てないんだ、と思ったことは言わないでおこう。
「私は獣人としての矜持を持っていたんだ。五感や身体能力が優れているとかだな。
でもここに来て、ヒイやミヤ、それにドーテを見てその矜持が霧散してしまったよ」
その言葉にそれは比べるのが悪いよ、と言おうとして飲み込んだ。
それはジュレイが良く解ってるはずだ。
『センセー!早く来てぇ!見つけたよぉ!』
急いでマップでヒイの居る場所を確認して向かう。
ヒイは岩の山を水平に切って、パカッと開けたような場所に立っていた。
岩の蓋が空いたような場所を覗き込むと通路があった。
俺の背でも余裕のある造りだが、さすがに巨大化したブラキオサウルスやディノニクス?も通れないだろう。おそらくブラキオサウルスのように小型化していたのだろう。
壁の外には馬車は有ったが西に続く足跡はなかったからな。
「俺が入ってみるから、外で待っててくれ」
そう言ったがヒイとミヤが聞くわけがない。
「私はついて行きます」
「僕もついてくよ」
「じゃあ、俺の後ろにちょっと離れてな」
二人は放っておかれたら、嫌なのか頷いて肯定する。
彼女達に取って俺は運命共同体のようなものなので、なるだけ一緒に居たいと思ってるみたいだ。
通路が途切れると広い部屋に出た。
魔獣の匂いがする。
暗くて良く見えないのでライトの魔法を使う。
明るくなった部屋に誰もいないようだ。
「ご主人様、あそこ」
ミヤの指さす方向を見ると、壁際に黒い霧のようなものが見える。
この霧は見たことがある。
1回目は青龍国の相撲会場、2回目はシンシアを助けた時だ。
魔人の本体だ。
「やあ、追って来たのかい」
その霧は喋った。
「そんなになってもしゃべれるんだ」
「そうだな。私はゼブル、もうすぐ死ぬ。聞きたいことがあったら聞いておけ。
私は魔王様に忠誠を誓ってるわけじゃないからな」
霧の中から聞こえる声が俺に大きな違和感を抱かせる。
「お前は死ぬと言ってるがどうしたんだ?」
「ああ、鉄球を打ち出す魔道具に魔石が撃たれた。今はひびが入ってるだけだが、そのうち割れる。そうしたら俺は消えてしまう。最後に誰か居てくれるのはくれるのはありがたい」
アオイのコイルガンが当たったのか。しかし、こいつらでも一人で死ぬのは嫌なんだな。
「やはり、俺を狙ったのか?」
「そうだ、こんな私でも世界の王になれるかもしれん異能だ。誰でも欲しがるだろう。
信帝国に手を出せば、お前が出てくることは分かっていたからな」
俺はちょっと驚いた。
「魔王のためじゃないのか?」
「なんであんな奴のために命を懸ける必要があるんだ。ラッソじゃあるまいし」
どうも魔人の組織は一枚岩じゃないらしい。ラッソは親魔王派?
「お前ひとりで恐竜魔獣を操ってたのか?」
「いや、普通の魔人も10人くらい連れてたぞ。魔力が足りなかったから魔獣の餌にしたけど」
げえ、普通の魔人の扱いヤバくない。
「魔人は結局人間を支配したいのか?」
「さあな、俺は魔人の頂点にはなりたいけど、人間はあまり気にしたことは無い」
こいつは団体行動が苦手な奴なんだろうな。
「お前は俺の従者を人質に取ろうとしたようだけど、他の魔人もそんな卑怯なことをするのか?」
「ああ、それは私が魔王を裏切ってたから、一か八かでやっただけ、普通はプライドが高いからやんないと思うぞ」
そうなんだ。プライドは高いのか。
「あ、すまん。そろそろ来たみたいだ。最後まで付き合ってく・・・・・」
言葉が終わると黒い霧は霧散して、二つに割れたソフトボールくらいの魔石が残った。
「ウォンッ!」
ガリ、ゴリ
あっという間に魔石をハイジが食べてしまった。
魔石と言っても無機質な石なんだよな。
魂とかは消えてると思うし、なんで食べたいと思うのか不思議だ。
まあ、前も食ってたし、ヒイも何も言わないから大丈夫なんだろう。
外に出ると懐かしい顔があった。
褐色の肌と銀色の髪、ファティマ王国の王子、ナータだ。
地下室を再利用できないように埋めて話し合うことにした。
「やあ、久しぶりだね」
「ああ、魔人でも追っかけて来たのか?」
こいつには命を助けられてるし、あまり邪険には出来ねえか。
「うん、カザフスタン辺りに居た魔獣がこっちに移ったみたいだからさ」
「中央アジアも魔人勢力が居るのか」
ファティマ王国はアフリカ北部、カザフスタンはロシア南部まで魔人と戦っているのか?
「うん、魔人はロシアとも戦ってるよ」
いくら何でも戦線広げ過ぎじゃねえ。
「それよりさあ、なんか魔人用に新しい技を開発したんだって?」
魔刃のことかな。ファティマ王国は魔人と真正面から戦っているから情報が欲しいんだろうな。
「まあな、でも会得するのはむずかしいかな。かなり繊細だからな」
「でもこの子達、全員出来るって言ってたよ」
従者達を見回すとヒイとミヤ以外全員下を向いてもじもじしてる。
まあ、秘密にしろとは言ってないから仕方ないか。
「ほら、俺達は主従の契約をしてるから、細かな調整とか感覚が共有できるから早く覚えられるんだ」
俺はナータが諦めてくれるように従者契約のことまで話した。
「じゃあ、僕も従者にしてよ」
「えっ、ええええ!」
俺は、一旦嘉峪関に戻ることにした。
「旦那アあ、もう限界だよお」
ドーテが縋りついてきた。
実は命令違反の罰に居残りで嘉峪関の修理を命じていた。
門の周辺は表面の石を崩されただけだから、何とか修理が出来たが、完全に崩された壁はドーテの土魔法をもってしても、すぐに直せるものじゃない。
そこへ襲撃の報告を受けて駆け付けていた白虎王が現れた。
今朝がたの様子はドーテから聞いたようだが、俺から直接聞きたいみたいだ。
俺の手を取って言った。
「昼食を用意したから、その席で話そうじゃないか」
俺もちょうど学校の職員の話もあるし、ちょうどいいと思った。
「クーヤ殿、壁の修理、感謝するよ。費用はこちらに請求してくれ」
「大丈夫ですよ。魔法で治すので費用はいりません。ただ、望楼は木組みですので当方の魔法では治りませんのでそちらでお願いしたいのですが」
「そうか、ありがとう。我が国は相変わらず手元不如意でね。まさか魔人がここを狙うとは思わなかったよ」
魔人が俺を狙っていたことは黙っていた方が良さそうだな。
食事が済んで俺は白虎王に学校のことを話した。
「クーヤ殿がその産業革命を行うのに、我が国に人材を出せと言うことか。部屋住みの者ならいくらでも構わんが、本当にそれでいいのか?」
「父上、こんな辺境で希望もなく過ごすより、中央で最先端の仕事に就く方が、やりがいがあると思います」
「ジュレイ、それは父が傷つくぞ。父はこれでもこの仕事に誇りを持っておる」
「申し訳ありません」
「人選についてはジュレイに一任しますので、しばらくこちらに滞在させてください」
俺はジュレイを求人に置いていくことを示唆した。
そしてドーテ以外の残りの従者とナータをワームホールで寮に帰した
「さあ、ドーテ、残りの修理をやるぞ」
ゲエと言うドーテの手を取って引きずっていく。
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〇寮
「あー疲れたよう」
ドーテが俺の後ろから、零しながら食堂に入って行く。
「壁の修理はできたの?」
「旦那が手伝ってくれたから、何とか」
マシロの問いにドーテは真面目に答える。
「これからは戦闘時だけはクーヤさんの言うこと聞いてね」
「へ、戦闘時だけでいいの?」
「まあ常識的範囲内でね」
マシロがちょっと怖い顔をする。
「分かったよ」
こわぁ~、ドーテがビビってる。
ちょっと話題を変えて上げよう。
「ナータ、魔刃は解ったか」
うちの子達とすっかりなじんだ王子様に聞いた。
「やっぱり言葉だけじゃ分からないよ。ほら従者にしてくれれば分かるんじゃないの」
そう来たか。でもファティマ王国の王子を従者にするって抵抗があるよな。
でも言葉で説明するとなるとかなり難しい気がするし。
「おまえ、従者になるのに抵抗ないのかよ」
「まあ、この子達を見てるから、それにここで暮らす気はないよ」
なんでこいつは気楽なんだ、悩んでる俺がバカみたいじゃないか。
「それにさ、離れてても通信できるんだろ。今後の魔人対策にも有益じゃないか?」
うーん、そう言われるとファティマ王国は魔人との戦争の最前線だしなあ。
待てよ。それって俺が魔人との戦争に巻き込まれるって。言うことじゃないか。
「俺は魔人と戦う気なんてないぞ」
「え、君がそれを言うかい?その異能がある限り、魔人との戦いは避けられないだろ」
い、言われてしまった。考えないようにしていたのに。
ラッソとの戦いは避けられないとは思っていたけど、ゼブルは襲って来たし、避けられないのか。
この異能を他の人間に移すと言っても受け取る奴はいないだろうな。
「うう、考えないようにしてたのにぃ」
「諦めた方が良い。何なら、積極的に異能を集めたらどうだ」
「む、無責任なことを言うな!俺は神になりたいわけじゃない。俺は人として尊敬されたいとは思うが祈られたいんじゃない」
そうだ、この信帝国で産業革命に成功すれば、未来の人間に偉人として、尊敬されるかもしれない。
「センセーはソンケーして欲しいの?大丈夫だよ、ヒイはセンセーをソンケーしてるから」
「ご主人様、ミヤもご主人様を尊敬する気持ちは誰にも負けません」
二人がキラキラした目で俺を見る。
そうか俺にはこの二人がいるじゃないか。
この二人がいる限り、俺は他人として生きる。
「そうだぞ、クーヤ、アンタはアタイ達を助けてくれたし、一般人が魔獣に襲われそうになったら一番に助けに行く、そんなアンタをアタイ達は尊敬しているさ」
おお。アカネまで・・・マシロとアオイもほほ笑んでる。
「と言うことで、あなたもクーヤさんを尊敬しないと従者には成れませんよ」
マシロがナータに迫る。
「分かったよ。僕も虎の魔獣と戦っているクーヤ殿を見て、敬愛している」
「そうか、じゃあ、制限付きの従者にするよ。それでいいな」
「制限付きかあ、まあしゃあない」
『従属契約を締結しました。
異能、身体強化、従者通信、脳内地図、インストールをコピーします。
固有の異能重力制御・瞬間移動をご主人様にコピーします。
身体強化・インストールを制限します。
以上で従属契約を終了します』
ナータは従者となった。
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次回はラッソが動き始めます。




