4-7 西域で
ご愛読、ありがとうございます。
今回は龍を調査するためクーヤとジュレイが白虎国へ行きます。
魔力の刃を手に入れたクーヤ達に天帝の召喚があった。その内容は嘉峪関に龍が現れただった。
〇天帝執務室 転移142日目
「龍ですか?」
俺は天帝様に聞いた。
「うむ、龍が暴れて嘉峪関の建物が半壊したそうだ」
「父上は!?大丈夫でしょうか?」
ジュレイが立ち上がるが母親に座らされる。
「人的被害は無いようだ。争うことを諦めるほどだったらしい」
今度はコウメイ様が説明した。
「それで龍はどうしたのですか?まさか王都へ?」
母親の顔が青ざめている。
「いや、壁を壊して去って行ったそうだ」
白虎国王家の人達が胸を撫で下ろす。
「それで、俺を呼んだのはなぜでしょうか?」
この内容なら俺が呼ばれるのは変だ。
ジュレイから伝え聞く程度で十分だ。
天帝様がふふーんと鼻を鳴らす。
「もう、分かっておるじゃろ。龍がこれ以上悪さをせぬか、調査をして欲しい」
ああ。やっぱりそうなんだ。俺が行けば情報が早いからなあ。
「でも龍と戦うなんて真っ平ですよ」
「分かっておるわ。お前はまだまだ信帝国に必要な人間だ。危なそうなときは逃げてよい。大金貨20枚でどうじゃ?」
日本円で二千万円かまあ、いいか。でも軍隊を出せば十倍は掛かるもんね。
天帝も軍務大臣を粛清してから金持ちになったもんだ。
「分かりました。明日、出発します」
「王妃様、ジュレイも連れていきます」
「なんじゃ、結婚の挨拶か?」
「は、母上」
ジュレイが母親に真っ赤になって否定している。
「お前も成人しているのだから、いい加減中途半端なことはやめなさい」
従者として俺と一緒に生活することを言っているのだろう。
「ジュレイには西域で学校で働いてくれる人を探してもらう約束をしています」
俺は結婚をごまかすために学校のことを出した。
「そうですよ、母上。白虎国の役人や将校の次男三男を学校に送り込めれば、産業革命の利権にも食い込めます」
ジュレイは話を逸らそうと必死だ。
母親はフーとため息を吐く。
「あなたがクーヤ殿の嫁になれば利権の大きさも比べ物にもなりません」
「まあまあ、母上。ジュレイよ、部屋住みの者たちに仕事を与えてくれるのは嬉しい。ぜひ紹介してやってくれ」
「はい、兄上」
ジュレイの兄はジュレイの味方のようだ」
何時までもここにいると仕事が増えそうだな。帰りますか。
「明日の朝一番に出発したいので、今日はこれで失礼します」
すんなり帰れそうでほっとする。
バイクに乗り込み、学校の寮に帰ることにする。
「クーヤ殿。食料の買い出しに行かなくても良いのか?」
天都を出ると後席のジュレイが問い掛ける。
「ああ、飛行機で行くつもりだから心配ない」
「あんな、遠くまで飛行機で!?」
「ああ、必要があればワームホールを繋げて仲間を呼ぶ」
「じゃあ、二人きりで西域へ?」
「ああ、ハヤブサは二人乗りだからな」
なぜか背中に伝わる二つの膨らみの圧力が増したような気がする。
寮に帰ってからみんなで行かないことを伝えたら、ブーイングを浴びたことはちょっと応えた。
******
〇ハヤブサ内 転移143日目
天気は晴天で高度は500mくらい。
俺とジュレイの乗ったハヤブサは順調に飛行していた。
山が近付いて来て、高度が2000mを越える。
ハヤブサは2枚ペラから3枚ペラに変更。
魔力バッテリーの搭載により、巡航時速350km、連続飛行時間10時間以上を達成していた。
まあ、バッテリー交換すればほとんど無限なんだが、人間が持たない。
天都から北西に飛ぶとすぐに山ばかりになる。
天都は山に囲まれた都だ。
物流を考えれば海の近くに遷都するべきだろう。
今風に言えば都市の拡張性がないのだ。
産業革命が成功すれば、すぐに信帝国による大航海時代が始まる。
周辺国を植民地にして・・・今の天帝様なら阿漕な商売はしないだろう。
さすがにキリスト教の影響のないこの世界では、異教徒に何をしてもいい的なことは言わないだろうしな。
考えることをやめた。
俺の生きている間、あと60年、いや元の年齢なら40年くらいかではそんな変化はないだろう。
俺は今を優しい選択をして生きていくことにしよう。
山の上を行くこと3時間ようやく赤茶けた砂漠が見えて来た。
山の北側に沿って飛んでいけばあと1時間で白虎王都だ。
言ったら悪いが、白虎国が四天王の内、最弱な訳が良く解る。
だって山と砂漠しかないんだもん。
大きさも青龍国に比べれば1/3もないし、ヨーロッパと繋がっていた頃は栄えてたのかな。
後ろが静かだな。ジュレがやけに静かだと思って振り返ると真っ赤な顔をしてぶるぶる震えている。
「大丈夫か?どうしたんだ?」
「い、いえ、だ、だいじょうぶ、でで、す」
まったく大丈夫に思えない。
「体調不良ならあと1時間ぐらいで王都に着く。それまで我慢できるか?」
「い、一時間!!」
今度は顔色が青くなった。
『ご主人様、ジュレイは生理的現象を催しています』
ナビさんが俺に報告する。
『生理的現象?』
『おしっこです』
『紙おむつを付けてるだろ?』
俺はもしもに備えて、ジュレイに大人用の紙おむつを着用させた。
『ご主人様は乙女の恥じらいと言うものを覚える必要があります』
『ジュレイにおむつにするように伝えてくれ。俺が言うよりいいだろう』
ジュレイがナビさんから聞いているのか頷いている。
「はい、・・おいが・・ともれ・・はい」
「ふーぅ」
気の抜けた声が後ろから聞こえる。
振り向かずに置いてやろう。
1時間の後、嘉峪関の建物が見えて来た。
「もともと、ここには長城と言われる、異民族の侵入を防ぐ壁があったのです。信帝国はそれを強化して関所を作ったのが嘉峪関です」
おお、ここは万里の長城の一部だったのか。
ジュレイの説明に感心してしまう俺だった。
嘉峪関の壁は南北に伸びているのだが、その中央に関所の建物がある。
その建物が崩れている。
上の方まで・・・50mはあるのにな。
龍の大きさにちょっとビビった。
「よし、王都の近くに着陸して、君の父上に会いに行こう」
「はい」
ジュレイがなぜか嬉しそうだ。友達との再会かな?
この機体は軽量大馬力なので着陸に100mの開けた直線があればいい。ちなみに離陸はその半分だ。
道には大きな石もなく、真っ直ぐな道が多いので、どこにでも着陸できそうだ。
ハヤブサは郊外の道路に着陸した。
収納にハヤブサを入れて、バイクを出した。
「バイクなのか!?」
ジュレイがなぜか驚いている。
「にお・・ばれ・・」
どうもナビさんと話しているらしい。
あ、そうか。あれから1時間以上経ってるから、消臭効果とか・・・。
俺は人目のつかぬところに穴を掘り、仮設トイレを出してやった。
「すまんな、気が利かなくて」
俺はトイレから離れて座った。
「乙女心ってめんどくさいな」
おれは雲一つない空を見上げそう呟いた。
王宮に着くとすぐに王の執務室に通された。
「クーヤ殿、良いところに来てくれた、実はこちらで大変なことが起きたのだ」
少し生え際が後退したように見える白虎王は、体を突き出すようにして俺に話した。
「龍の話ですよね。天帝様からお伺いしています。今回はそれを調べに来たのです」
「なんで、天帝様には昨日巫女通信でお知らせしたばかりなのに・・・君は空でも飛んで来たとでもいうのかね?」
天都からここまで陸路1500km以上、ゴーレム馬でも2週間はかかる距離だ。
白虎王は信じられないでいた。
「空飛ぶ機械の事を聞いたことはありませんか?」
あれから1か月、もうこちらにも噂が来ているころだろう。
「ああ、聞いたけど。1時間ぐらいしか飛べないと聞いたぞ」
「お嬢さんの協力もあって、ほとんど無限に飛び続けられるようになりました」
ジュレイがパッと顔を赤くする。
「あれはドーテと一緒じゃなきゃできなかったし」
「ドーテさんと言うのは?」
白虎王が聞いたことない名前に頭をひねる。
「私と同じクーヤ殿の従者で・・・」
ジュレイがドーテの説明をし始めたところに白虎王が反応して。
「おまえがクーヤ殿の従者とはどういうことだ!」
激昂する白虎王にジュレイが反論する。
「強くなるためにそうしたの。母上の許可も貰ったし、クーヤ殿は帝国相談役、父上より位は上だ!」
母親が出た時点で白虎王は意気消沈、どうもジュレイのところはかかあ天下らしい。
まあ、母親の方がはるかに威厳があるもんな。
「閣下、ジュレイ殿は産業革命の一環として建設中の学校にも貢献していて、天帝様のために働く功臣でもあります。なにとぞ温かい目で見守っていただきたい」
俺は一応フォローをしておく。
「それで、今回の龍の騒ぎですけど、ジュレイ殿と嘉峪関の様子を見てきましたが、かなり大きなものがぶつかったように見受けられました」
白虎王はハッとして自分が脱線していたことを知ったようだ。
「そうだった。いやすまん。龍だが西の方から歩いて現れて、一度嘉峪関に体当たりした後、また西に去って行った。姿は灰色で頭は小さく、首と尻尾が長く、4本の足が垂直に生えてた。ワシが付いた時にはかなり離れていた」
俺は簡単な絵を描いた。
「おお、これだ。そっくりだ。君は龍を見たことがあるのか?」
俺が見せたのは子供の頃に図鑑で見たブラキオサウルスだった。
「ただ、この龍は嘉峪関の高い部分は届かない。そこまでは大きくないんです」
「どういうことかね?」
俺の頭の中では魔獣と言う言葉がぐるぐる回る。
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〇嘉峪関 ジュレイ視点
私達は昼食後、嘉峪関に来ていた。
駐屯兵は関所が崩れたことで、がれきの撤去をしている。
「クーヤ殿、先程の父との会話で龍について何か解ったのか?」
「ああ、龍の大きさから言って魔獣ではないかと思った。それに魔獣を操るのは魔人」
「では、この事件は魔人が?」
「そうだと思う」
「ではクーヤ殿が目的だと?」
「さあな、それは分からん」
魔人はクーヤ殿をおびき出すために龍を西域に出現させた?
白虎国を狙うより説得力がある。
すでにクーヤ殿は白虎国以上の価値があるのだ。
「これからどうする?」
「まず外で龍の足跡が追えるかどうか確認しよう」
私達は残ったがれきをかき分け、嘉峪関の外に出た。
砂の大地には大きな足跡が西の果てまで続いてた。
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次回は引き続き龍を追います。




