4-8 闇の中の軍団
ご愛読、ありがとうございます。
今回は魔獣が攻めてきます。
クーヤとジュレイは嘉峪関を破壊した龍を調査するために西域に来た。
〇嘉峪関 転移143日目 第三者視点
クーヤ達は昼食後、嘉峪関に来ていた。
「こちら側は無事です」
建物の王都側はほぼ無事だった。もちろん細かく見れば傷んだところもあるだろう。
「龍の攻撃は壁の上の望楼には、強い衝撃を与えられなかったみたいだな」
「どういうこと」
クーヤの言うことが分からない。
「まあ、もうちょっと調べてみよう」
砂漠側に出て、損傷を眺めてみる。
壁の奥にある門は壊れていないが、壁は表面の石積みが崩れ、中心の突き固めた土が露わになっている。
望楼は屋根や手すりは崩れているが、石積みを崩したような力がかかったとは思えない。
「ブラキオサウルスは草食恐竜だからね。頭や首では強い攻撃はしないと思ったんだ」
「ぶらき・・・恐竜??なんなのそれ??」
クーヤ殿の言うことが全然分からない。
「話しても分からないと思うから、ナビさんイメージを見せてあげて」
私の頭の中に映像が現れた。
草原に生える背の高い木の葉を枝ごと食べる巨大な龍が見える。
長い首、太い柱のような足、長い尻尾、父上が説明してくれた龍そのものだ。
「ヨーロッパの南にあるアフリカ大陸にはまだ恐竜が生きているらしい。おそらくここを襲ったのは恐竜の魔獣だ」
私にはまだ良く解ってなかったが、その恐竜とやらが魔獣になってここを襲ったことは想像できた。
「クーヤ殿は恐竜魔獣を怖がってないように思うが?」
こんな化け物を怖がらないとは、どういう精神構造をしているのだろう。
「ああ、こんな魔獣は動きが鈍いだろう。1匹だけなら何とでもなるさ」
確かにイメージで見た龍なら魔法も当たりそうだし、近付かなくても何とかなりそうだ。
西の方を見るとイメージで見た龍より2回り大きそうな足跡が、見える限り続いている
「上空からは見えにくそうだな。バイクで追ってみるか」
そう言われた時、ジュレイは胸がキュンとした。
『私はクーヤ殿に恋をしたのだろうか?』ジュレイは自分の心に問いかける。
今まで、男性に恋心を持ったことがないので、これが恋かどうか分からないのだ。
確かに彼は強いし頼もしいし、両親も助けてもらってる。
ジュレイが彼の従者になったのはドーテに感化されたのが大きい。
彼女は彼にケガを直して貰ったり、剣の稽古をしてもらってすっかり彼に恋してしまった。故郷の窮状を救って貰う約束もしているみたいだ。
ジュレイは昨日の出来事を思い出していた。
昨日帝城からの帰りで彼のバイクの後ろに乗った時、ちょっとした予想できない揺れで、彼に強くしがみ付いてしまった。
彼の広い背中、その温かさにそのまましがみ付いていた。
バイクへ乗るだけで胸が高鳴るのはどういう訳だろう。
〇西域への道 第三者視点
嘉峪関から西北へ約500kmでハミ、そこから350kmでトルファン、さらに150kmでウルムチだ。もうそこはトルコ民族の国だ。
中央アジアは小国に分裂し、兵力も人口も少ない。砂漠が主だから仕方がない。
その先はペルシャ王国、オスマン帝国、そしてダークエルフの国ファティマ王国がある。
足跡はハミどころか20kmほどで途切れていた。
足跡は北の山の方へ向かっているが、下が岩のため消えている。
山は岩が露出して凹凸が激しく、とてもじゃないが巨大な恐竜が歩いて行けるとは思えない。
探索も空しく、帰路に就く。
「クーヤ殿、どうする?」
「明るいうちに空から周りを見てみよう」
クーヤ達は地上の探索を諦め、ハヤブサによる探索に切り替えた。
それを岩の裂け目から覗く者が居た。
「なるほど、あれで来た訳か。まさか空を飛ぶ機械を持っているとはな」
低空を飛ぶハヤブサを見てそう呟く若い男は、真なる魔人ゼブルだ。
岩山の地下をくり抜いた巨大な空間に、鬼の村で会ったのと同じ格好をした普通の魔人が数人と、2mくらいのブラキオザウルスが居た。
そして赤く光る小さ奥の方を埋めていた。
「魔力はまだ溜まらんのか?」
「ブラキオサウルスだけならあと一日あれば何とか」
ゼブルの問いに魔人が答える。
「おのれ、ここへ来るのに4日は最低でも掛かると踏んでいたのに」
ゼブルたちは兵力の揃ってる帝城を避け、嘉峪関にクーヤをおびき寄せる計画を立て、それは成功した。
しかし、クーヤがワンボックスで来ると考えていたが、ハヤブサで来たため計画が狂った。
運ぶのに小さくしていた魔獣に、自分達が作った魔力を与え巨大化させるため、魔人たちにこの地下室に湧き上がる魔素を、魔力に変換させ魔獣に与えていたのである。
さらなる誤算はジェネレーターもバッテリーも持たない魔人は魔獣を巨大化させるのにブラキオサウルスで2日かかり、それを数時間で消費したことである。
最初の計画ではクーヤが来たらブラキオサウルスで嘉峪関の壁を破り、そこから肉食恐竜の魔獣を街に侵入させ、防戦に出るであろうクーヤを消耗させ、魔人たちが拘束するはずであった。
それがクーヤ達の到着が速すぎて、ブラキオザウルスの再出動も間に合わない状況になってきたのだ。
「おのれ、このままではクーヤが帰ってしまう。何か手はないのか・・・
そうか!魔力があれば良いのだ!ハハハハハ!魔力があれば!ハハハハハ!・・・」
地下室にゼブルの哄笑が響くのだった。
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〇嘉峪関の街
ハヤブサからの探索でも恐竜の手がかりを見つけられなかった俺達は嘉峪関の街に戻って来た。
「ここは宿屋がないのか?」
「はい、商人たちはここでは泊まらず、王都まで行くか、補給だけして野営します」
ジュレイの言葉は敬語を使ったり騎士のような言葉になったり安定しない。
位で言えば、俺は上だし、師でもあるので敬語が良いかなと思うけど、初めて会った時は俺は役なしだったから白虎王家の王女としては言葉選びが難しいのかな。
「壁の近くにヒイの家を建てて、今日は宿泊する。その後は皆で交代しながら警戒する」
街の外れの壁際を整地して、ヒイの家を収納から出して置く。
ワームホールで寮の2階の一番奥の部屋と、ヒイの家の台所兼俺の寝室とを接続する。
従者通信で全員にそのことを告げると、さっそくヒイとミヤとハイジがやって来た。
「センセー、おかずも持ってきたから、ご飯食べよう!」
「ご主人様、私もここに泊まりたいです」
「ウォンッ」
「よしよし、じゃあ、ご飯にするか」
「これがヒイちゃんの家ですか。こじんまりとしてますね」
「おお、結構ぼっこいな」
今度はドーテとライヤか忙しいな。
「あ、旦那、マシロさん達狭いから遠慮しておくってさ」
確かに、前使ったのは西域からの帰りだったか。あの時は俺と女性が6人だったな。
寝室が狭いと文句を言われたもんだ。
あれから2人増えたからこの家では、全員が泊まることは不可能だな。
帰ったら泊まれる人数を倍くらいに増やすか。
そんなことを考えていたら、俺を呼ぶ声がする。
「旦那!こっちの風呂は小さいんだな。俺と入ろうよ」
ドーテがはしゃいでる横でライヤが顔を赤くしてる。
「風呂は寮で入ってくれ。それに依頼の調査をしている。はしゃぐな!」
仕事中は適度な緊張感を持ってないとな。
「チェーッ!旦那は何時になったら、抱いてくれるんだよぉ?」
「まずはお前が大人にならないと始まらないと思うぞ」
「俺は成人してるし、胸だってマシロさんには負けるけどアオイさんぐらいはある!いつまで待てばいいんだ?」
まあ、胸はでかいが尻はまだちょっと骨盤が開き切ってない感じだ。
「まあ、ナビさんが認めてくれるまでだな。いやなら他の男を当たるんだな」
「旦那は意地悪だ、俺は旦那以外の男に興味はねえ!」
いやはや、なんで俺みたいな男に惚れるんだろうねえ。
その後食事をして、寮に戻って風呂を使った。
俺は台所、ハイジは玄関、ヒイ、ミヤ、ジュレイ、ドーテ、ライヤは主寝室に分かれた。
と思ったのだがジュレイが現れた。
「どうしたんだ?」
パジャマパーティーでも始めるのかなと思ってたので、ちょっとびっくり。
「・・・・」
ジュレイは黙っている。
西域に来てからちょっとおかしいとは思ってたけどさ。
俺が思春期の女の子を扱うには圧倒的に経験不足なんだよ。
「・・・・」
不意と振り向くと奥の主寝室に入って行った・
何だったんだろう。またマシロかアカネあたりに何か言われそうだな。
俺達は変事に備えて早めに寝ることにした。
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〇嘉峪関の壁の外 第三者視点
東の空が白み始めるころ、1台の馬車が壁の近くに来た。
壁の周りは壁を工事をしたためか馬車が通れるほどは整地されていた。
ゼブルが馬車から降り立った。
そうこの馬車は魔人の馬車だった。
「ブラキオサウルスを降ろせ、巨大化する
数人の魔人たちが馬車から2mくらいのブラキオサウルスを降ろした。
「まだ30分も巨大化できませんよ」
魔人の一人がゼブルに言った。
「かまわんよ。もう1時間かけてアジトに戻る必要がないからな」
魔人たちにはその言葉の意味が分からなかった。
「巨大化せよ!」
望楼が壊されて壁の上に登れなくなっていた嘉峪関には、見張りの兵は居なかった。
だからこの全長100mものブラキオサウルスにまだ誰も気付いていなかった。
「壁を崩せ!」
ゼブルの声でブラキオサウルスは壁に勢いを付けて突進した。
関所の建物も望楼もない石で長城を補強しただけの壁は、化け物の体当たりで脆くも崩れた。
ドドーン!!
ガラガラガラ!!
まだ闇のの残る嘉峪関に壁の崩壊する音が響く。
「もう一度だ!がれきを吹き飛ばせ!」
ブラキオサウルスは直径2mはあろうかと言う前足で、がれきを弾き飛ばして、幅5mくらいの通路を作る。
「よしヴェロキラプトル!出ろ!」
ぞろぞろと赤い目を光らせ馬車を降りて、まだ明かりの当たらぬ闇の中を行進する。
「まだ魔力が足りません!巨大化できません!」
魔人は叫ぶ。
「よい!魔人たちよ!その場で動くな!」
魔人にとって真なる魔人の命令は絶対である。
魔人はその場で停止した。
「ヴェロキラプトルよ!こいつらを食って魔力を補充せよ!」
小さな二本足の恐竜が魔人に襲い掛かる。
魔人の体は魔力で出来ている。
動けない魔人は小さな恐竜に食いちぎられていく。
「やめてくれー」
「俺の手がぁー」
闇の中に魔人の悲鳴が響く。
「生きたまま食わせれば、魔人を構成する魔力は余すことなく魔獣に吸収される。これに気が付かぬとは俺もまだまだであったわ」
魔力を十分に補充したヴェロキラプトルたちはブラキオサウルスの開けた通路から街に侵入するのだった。
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次回はクーヤ達と魔獣恐竜との死闘です。




