4-6 新しい力
ご愛読、ありがとうございます。
魔力の刃の訓練をします。
表題の剣姫の表現を闘刃姫に改めました。
剣姫を使った作品が結構あったので、それを回避しました。
シンシアの異能を無理やり移されたクーヤ、神にもなれる異能だがクーヤと仲間はそう言う使い方はしないと話し合った。
〇警ら訓練場 転移142日目
俺達はライヤが偶然できた魔力の刃を実現すべく警らの訓練場に来ていた。
クーデターの時の俺達の活躍を見た天都警ら部の部長さんに、警ら部も近衛みたいに訓練してくれと言われてここに来るようになった
近衛は剣術の基礎訓練のやり方はすでに覚えている。あとは試合しながら技を教えるのがメインになってる。
警らは基礎訓練もだが、格闘技がメインになりそうだ。
「おーい、今日は訓練じゃないのかあ!?」
訓練場の建物からやって来た男が、俺達に声を掛けて来た。
マオさんだ。彼は警らの副部長で、俺達に訓練を要請してきた人だ。
「お、今日はクーヤ殿もいるのか?何事ですか?」
一応俺の方がくらいは上なので敬語を使ってくれる。
俺は学校の方が忙しくてなかなか来れないのだ。
「実は魔人と戦うかもしれなくて、新しい技を開発中です」
「ほう、魔人とそれはまた、気の毒と言うか、なんというか。やっぱり天帝様の思し召しかい?」
俺は顔を歪めた。
俺から内容を話すことはできないが、そのうちうわさが流れてくるだろう。
「まあ、はっきりとは言えませんがね」
そう言うと肩をポンポンと叩いて「解ってるよ」とでもいうように慰めてくれた。
うう、おっさんに慰められた。ちょっとみじめだ。
「そういや最近お嬢さんたちが、天都で人気なのは知ってるかい」
「そうなんですか?聞いたことありませんが」
「周りを見て見な。軍務大臣の事件で有名になったんだ」
周囲を見ると結構な人数が、周囲の柵越しに訓練場を覗いている。
「あれ全部、嬢ちゃんたちを見に来てんだ」
「そうなんですか?」
俺は少し驚いた。彼女達を好奇の眼にさらすつもりはなかった。
「まあ、良いじゃねえか。巷では嬢ちゃんたちのことを闘刃姫って呼んでるみたいだ」
とうじんき?とうは闘だろうな。じんは何だろう。きは鬼か姫なんだろうか。
マオさんに聞いてみると闘刃姫だった。
そうかここでは格闘技を中心にして、剣や槍なんかを教えてるからかな。
言うだけ言うとマオさんは戻って行った。
みんなはこのこと知っているのかな。
さて、従者の皆に言っておかないとな。
「みんな、今日やる特訓は知っての通り対魔人を想定したものだ。
魔人と戦いたくないと言うものは去って貰っても構わない。
しかし、よく考えてくれ、魔人が”他人に異能を移す異能”を手に入れた場合、人類は異能を抜き取られ駆逐される。
俺はそう思ったからこの異能を受け取って、戦うことを選んだ。
そうなれば、俺達も強くならないと死ぬ可能性もある。
だから何とかして魔力の刃を手に入れよう」
「おう!」
「はい!」
全員に反対はいなかった。
アオイがずいと前に出る
「昨日の夜、ナビさんと魔力の刃について検討しました。
魔力を武器に行き渡らせることはクーヤ君はすでにできています。
ヒイちゃんは矢を魔力で包むことに成功しています。
ライヤは一回だけだけどハンマーの先端に魔力の刃を生成することに成功しています。
ここから魔力の刃は魔力で石の槍や氷の槍を生成できるように、魔力自体に刃の性質を持たせることが考えられます。
これには魔法属性が必要ないので、高度な魔力制御が出来るなら、誰でもできると思われます。
訓練するときは自分の武器を持って、その先端に刃を作って武器を延長することを考えると想定しやすいでしょう。
各自で会得した感覚はナビさんが共有するので完成は早いと思います」
魔力の刃に質量はほとんどない。だから飛ばして相手を傷つけることは、ほぼ不可能。
効率的なのは武器の先端に刃を固定すること、その方がイメージもしやすいしな。
ライヤの刃は20cmくらいだったが、出来れば5mくらい伸ばせると良いなと思ってる。
あまり、進展もなく昼休憩を迎えた。
「ふーっ、なかなか難しいわね」
「でも、槍に纏わせた魔力をイメージすることはできた」
「それは分かってる。と言うか、ナビさんが共有してくれたじゃん」
転移組が収納内の水で手を洗いながら、午前中の訓練の経過を話している。
「ジュレイさん、ドーテさん、ライヤさん手洗った?」
「おう、ここに来てから食事前の手洗いは欠かさないぜ」
「ドーテに負ける私ではない」
「洗ったよ」
「じゃあ、ジュレイさん、ドーテさんおにぎりを2個づつ、海苔を巻いて皿に乗せてください。ライヤさんはお茶を人数分、コップに用意してください」
ミヤはてきぱきと指示をしながら、最初に用意された皿とお茶を俺のところへ持ってくる。
「ありがとう」
俺はミヤに礼を言った。
「あ、ミヤちゃんずるい、僕が持って行きたかったのにぃ」
ヒイが転移組のところに皿を運んでいる。
慌てて転移組がおにぎりを取りに来た。
「ごめん、手伝うのが遅れた」
慌てて分配を始めた。
なんていい子達なんだ。おにぎりを頬張りつつ、皆を眺める。
作ってからもう2か月以上経つけど、おにぎりは炊き立てだし、海苔もパリパリ、お茶も温かい。
次元収納の中は時間が止まっているからなのだが、異能のすごさを実感する。
そんなことを考えているとマオさんがまたやって来た。
俺の隣にいたヒイに話しかける。
「変わった物を食べてるね」
「はい、青龍国では良く食べるんです。お米を炊いたご飯をこんな形に握って、おにぎりって言うんです」
ヒイははきはきと丁寧に返答する。
うう、俺のところに来て、偉いさんと話することが多くて成長したんだな。
なんか俺の父性が目覚めそうだよぉ。
「これどうぞ」
いつの間に用意したのか、ミヤが海苔を巻いたおにぎりを皿に乗せて、マオさんに差し出した。
マオさんは皿を受け取り、礼を言った。
「ありがとう」
「マオさん、手を洗った?」
ヒイが座ったままマオさんの顔を見上げる。
「手を洗う?どうして?」
マオさんは軽く首を捻った。
「あのね、お外には目に見えないくらい小さな虫が居て、いろんなものを触った手に引っ付くの。
その手で食べ物を触ると虫が食べ物に着いちゃうんだよ。
虫を食べちゃうとお腹を壊したり、病気になることがあるんだって」
うん、俺が教えた通りに言えたね。偉い!
「そうなのか!おじさんは一つ賢くなったよ」
「はいどうぞ」
ミアが柄杓の水と手拭いを用意していた。ナイスコンビネーション!
俺の隣からミヤとヒイがマオさんの接待に行ってしまったので、少し寂しく思ってる。
「ニヒヒ」
ドーテがミヤが居たところに来て笑っている。
「どうした?」
俺が聞くとさらに笑いを増した。
ドーテが真剣な顔をして語り出した。
「俺さ、幸せを感じてるんだ。
親父が俺が生まれてすぐにいなくなったから、兄弟がいないだろ。
ここに来て、頼りがいのある姉と可愛い妹が出来たように思うんだ。
それに俺の村を救ってくれそうなカッコいい旦那もできたしさ」
彼女は褐色の肌だから解りにくいが頬を赤く染めている様だ。
「そうだな秋の収穫が始まるまでに一度お前の故郷に行かないとな」
「ホントか!ホントに来てくれるのか」
彼女は目を丸くして喜び、俺に抱き着いた。
「ああ、その頃には学校の形もできてくるだろうからな」
「みんなが天都に着いてきてくれるといいんだけど」
彼女の顔に一抹の不安がよぎった。
彼女の村は山の中にあり、現金収入もほぼ望めず、若者が村に定着せず、年寄りばかりになっている。
いわゆる限界集落と言う奴だ。
ただ、田舎の老人と言うのは頑固で偏屈だ。
最適解だと分かっていても、連れてくるのは難しいかもしれない。
まあ、あとで良いか、それよりも魔人対策だ。
魔人ラッソは俺と互角かやや上と言ったところだ。
魔力の刃を手に入れれば確実に勝てる。
昼からの訓練が始まった。
3時を過ぎた頃から、共有情報が次々入ってくるようになった。
「誰だ?」
魔力の刃を会得しそうな子がいるらしい。
『ヒルダから情報が送られてきます』
ヒイか!?
ヒイを見ると・・・ハイジと遊んでいるようにしか見えない。
俺はここに来る前に山に行って木の枝を何本か拾って来た。
魔力の刃の出来を見るためだ。
ハイジが30cmくらいの木の棒を咥えて、木の枝を持ったヒイの横にお座りをしている。
「ハイジィー!いくよぉ!」
木の枝を投げるとハイジがそれを追いかけて、落ちて来た木の枝目掛けてジャンプ!!
え、木の枝が真っ二つに・・・。
ハイジが着地した瞬間、二つに切れた木の枝も地面に転がった。
え、最初に会得したのがハイジ!?
あいつはまだ生まれて4か月とちょっと、成長の速い狼だってまだ赤ちゃんだ。
それなのに三十半ばの俺より早く会得しただと・・・。
嫌、いかん!ここで嫉妬に狂っては従者達に顔向けできん。
「ハイジ、すごいじゃないか!」
ヒイに撫で繰り回されて、仰向けになって喜んでるハイジを見て、妬心を隠して良かったと思うのだった。
「あ、ハイジの共有情報はナビさんにもう送ったから」
ハイジは気持ち良さそうにヒイのされるがままになっている。
ハイジは俺の従者ではなく、ヒイの従者つまり孫従者なので、ナビさんと直接やり取りできずヒイを介している。
夕方まで訓練して全員が魔力の刃を会得した。
最後に会得したのはライヤだった。
「あんたが魔力の刃を最初に使ったのに」
とか、からかわれていた。
「はい、」
突然俺に従者通信が来た。
天帝様だった。
『お前とジュレイ、すぐに帝城に来い!』
「ジュレイ、天帝様がすぐに帝城に来いと連絡が入った。他の者は寮に帰って」
ジュレイがすぐさま俺の前に来た。
「どうしました?」
「分からん、お前を連れて来いと言うことだ」
俺は収納からバイクを出して、ジュレイに後ろに乗る様に指示する。
帝城までは8kmほどあるから10分以上かかるな。
他の者が質問したそうだったがバイクを発進させた。
******
〇帝城 天帝執務室
正門に着くと閉門時間だったが通してくれたし、執務室まですんなり来れた。
執務室には天帝様の他にコウメイ様、そしてジュレイの母もいた。
「よう来た、まあ、座れ」
ジュレイは母が居たことで、悪い予感でもしているのか顔色が悪い。
「全員集まったようじゃな。先ほど白虎国から通信があり、嘉峪関が巨大な龍に攻撃されたそうじゃ」
その言葉に全員が息をのんだ。
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次回はまた西域で事件が発生します。
まあ、ジュレイ回ですね。




