4-5 シンシア様の異能
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シンシア様と帝城に帰ってきました。
シンシア様の異能を狙う魔人ラッソを何とか退けたクーヤ達であった。
〇帝城 天帝執務室 転移141日目
日が暮れようとしたころ、俺達は帝城に着いた。
シンシア様は狙われているのも解っているし、護衛も減ったしで帝城に戻って来た。
そこで、さっそく対策会議となった訳だ。
執務室には天帝様、コウメイ様、シンシア様、俺が座っていた。
「ご苦労じゃったな。しかし、魔人がシンシアの異能を狙っておったとはのう」
天帝様に今日の出来事を話した後、労ってくれた。
「敵は海を渡る前に奴らの拠点、大連の近くに来た時にシンシア様を誘拐する予定らしかったです。
今回はその前に気付いたので、魔人の増援もなく阻止することが出来ました。
これは敵の目論見を教えてくれたユキノ殿の手柄かと思います」
俺の言葉にシンシア様も頷いた。
「そうですね。ユキノには礼を言いました。あの子がゲンに気付かなければ私はどうなっていたか」
「うむ、ユキノはずいぶん回復してきた。明日には歩けるようになると言っておった」
話が途切れたので、俺は早速気になっていたことを聞いた。
「シンシア様の異能は何なのですか?」
俺は気になっていたことを尋ねた。
「秘密じゃぞ。シンシアの異能は”他人に異能を移す異能”じゃ。しかも無制限じゃ」
異能と言うのは魔力回路に書かれた術式と言える。
異能があるからといって自由に使えるものではなく、魔力回路と魔力が万全でないと使えない。
ドーテやジュレイが従者になってから、異能を使えるようになったのは、ナビさんがそこを整えたからだ。
俺が従者の異能をコピーできるのも、ナビさんが従者の術式をコピーするからである。
それを無制限にできれば、それは全能の神を生み出す行為だ。
俺が呆然としているとコウメイ様が言った。
「意味がわかったみたいだな。魔人のような魔力の化け物にこれを移せば、人間は滅ぼされる。
まさか、魔人に知られるとはな」
「だから、ラッソは無理をしなかったのか。シンシア様が死んだら異能が失われるから」
「そうだろうな。帝城で襲わなかったが、帰国で回りが手薄になってから、しかも拠点の近くで攫おうと
したのだ」
コウメイ様は俺の推論を認めてくれた。
「少し魔人について整理しよう。
魔人は千年前にヨーロッパ大陸で生まれた。はじめは粗暴で知能も低い魔人だけだったが、知能が高い真なる魔人が現れると魔人たちを糾合し、戦いに明け暮れていた周りの国を滅ぼしていき、ヨーロッパほぼ制圧した。
残っているのはスカンジナビア半島とロシアぐらいだ。
今はイベリア半島、イタリア半島を巡って、ダークエルフのエジプト王国と争っている。
あまり、旗色は良くないようだ」
スカンジナビアとロシアって魔人は寒さに弱いのかな。
「魔人って何なんですか?人間ではないようですが」
「あまり、こちらでの出現例がないのではっきりとは分からない。
人間に憑依できるのと、本来の体は魔石を核に魔力で出来ているらしい」
「青龍国に現れた奴は普通の魔人かな、魔獣を操っていたな。
ラッソは真なる魔人っぽい、結界と空を飛んだなあ。
でも憑依した状態では飛べないっぽい」
俺は自分の会った魔人で補足しておいた。
「おまえ、前にも魔人と会ってたのか?」
「ええ、まあ」
天帝様に呆れられた、なんでだろう。
「それで私はどうしたら良いんでしょう」
シンシア様が泣きそうな顔をしている。
「ウームそれじゃな。だいたい帝城だって、いつまでも大丈夫とは言えないからな」
「飛行機で青龍国に帰るのはどうでしょう?」
「青龍国に帰ったとしても、大丈夫とは言えん。敵は人間に憑依できるのだから、どこだって安全とは言えない」
「うわーん!!」
天帝様とコウメイ様がひどいことを言うのでシンシア様が泣きだした。
「すまん、ちょっと乱暴な言い方であった、兄上、何かいい手を考えて!」
ああ、天帝様がコウメイ様に丸投げした。
「お、おまえなあ、・・・そうだ、他の人間の異能を集めて強くなれば良いんだ。そうだ、それなら魔人も怖くない」
コウメイ様がひらめいたと言う顔をしてシンシア様に披露した。
「私は普通に生きたいのです。そんな世界最強なんて要りません」
うん、分かるぞ。それじゃあ、人じゃなくなるもんな。
「ではその異能をクーヤに移せば良いではないか」
天帝様がとんでもないことを言い出した。
「な、なんですと!?俺が狙われても良いと?」
ああ驚き過ぎて語尾が変になってると。
「お前ならその異能を使わずに済むし、魔人からも守れるではないか」
天帝様言ってることが無茶苦茶です。
「流石だ。我妹よ。お前こそまさに天帝としてこの世に生を受けたに違いない」
ああ、何言ってんですか、この兄妹は。おかしいんじゃないですか!
「この異能が私になければ、私が魔人に狙われることは無い。そう言うことですね」
シンシアさんも何言ってんですか。
「嫌ですけど」
「なにー!!姉上の頼みを断ると申したのかあ!!」
何時入って来たのか、リョウカ様参戦。
「じゃあ、リョウカ様は俺が魔人に襲われても良いって言うんですか?!」
「うん、おまえなら勝つじゃろ」
「何言ってんですか。今回はジュレイ、ドーテ、アオイに後ろから魔法で攻撃させて、ヒイに左から矢を撃たせて、ミヤが右から接近戦を仕掛けて、ようやく退かせたんですよ」
俺は精一杯やっても勝てなかったと強調した。
「お前が戦ってないじゃないか」
こんなことを言うんだ、この人は。
天帝様も俺に言ってくる。
「それ以外の方策などないぞ。まあ、お前がシンシアを娶るぐらいかな」
それを聞いてシンシア様がまあ、とか言って頬を赤く染める
それを見てリョウカ様が憤慨する。
「なにい、お前は姉上を嫁にする気かあ!許さん、許さんぞお!!」
俺は言ってないって。
「天帝様が言っただけじゃないですか!俺にそんな気は全くありませんから!」
だって性格がリョウカ様と一緒なんて、結婚したら地獄じゃないか。
「お前は姉上が自分と結婚するに値しないと言うのか!この馬鹿者があ!」
もうめちゃくちゃだあ。
コウメイ様がこりゃダメだのポーズ。
「解りました、俺が異能を貰えばいいんですね。もうやけだ」
「うむ、お前のことは信用しておるからな。それにシンシアのために、このことは公表するからな。それと魔人に渡すのではないぞ」
うう、なんか一杯言われたあ、こんなことになるなんて、俺と魔人の戦いが始まることが決定してしまった。
「普通の人間はどんな異能を持っているかも知らないことが多い、そう言う人間の異能を集めれば君は全知全能の神に等しき人間となることが出来る。まあ、これは魔人の考えていることでもあるのだろう。
君がどういう選択をするのか私は楽しみだ」
コウメイ様が俺が”他人に異能を移す異能”を受け取った時に言われた言葉だ。
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〇学校建設予定地 寮食堂
俺は皆を集めて”他人に異能を移す異能”を受け取ったことを話した。
「センセーは神様になるの?」
ヒイは俺を心配してくれるのか。
「ならないよ。俺はこの世界で楽しく生きていきたい。神の力を手に入れることは孤独になると言うことだと思うから」
俺は今更ひとりになるのは嫌だった。
「私はご主人様が神になろうとおそばを離れるつもりはございません」
ミヤが俺に抱き着き、言い切った。俺は一人になれないらしい。ちょっと嬉しいかも。
「あ。僕もついてく。ハイジも来るよね?」
ウォンッ!
「ほらハイジもついて来るって」
ヒイがニコニコとミヤの反対側に抱き着いた。
ああ、俺って愛されてる。
「あのさあ、クーヤ君は気にしすぎ、アンタは魔人に着け狙われることになったけど、私達が居るんだから頼ってくれればいいさ。それにこの家には私達しかいない。魔人も潜入できないわ」
頼りになるアオイである。
「そうだぞ、アタイ達はアンタに賭けたんだから、好きなようにしてくれたらいい」
威勢の良いアカネである。
「私思うの、この世界では火薬が使えない。ということは個人の強さって、日本に比べれば大したことないのよ。例えばアオイの異能より、日本では何倍も強い銃器を普通の兵隊が持てるわ。
魔人ていうのは異能と言う銃器を持つ兵隊と一緒なのよ。槍や刀では全く相手にならないから。同じような異能を持った私達が戦わないといけないのよ」
マシロが言うと特にこの世界の人間であるジュレイ、ドーテ、ライヤが息をのんだ。
確かにその通りだ。この世界は歪だ。
俺達はひとりで50人の兵隊と戦うことが出来るが、魔人もそれくらいの能力はあるだろう。
ただ破壊力と言う点では日本の自衛隊にも勝てやしない。
例えば戦車や戦闘機が攻めて来ても、俺達は戦いようがない。
俺達がこちらの世界で戦えるのは火薬がないからだ。
まあ、ないものを求めても詮無いことだ。
しかし、魔人と戦うにもこのままでは力不足だ。何かこの世界なりでの武器を手に入れないと。
「私は攻撃系の異能を持ってないから、お邪魔ですよね」
ライヤだ。
「ええ、ここに忍んできたとき、魔力の刃出してなかった?」
「はい、それはクーヤ様に聞いたのですが、私の異能は金属加工って言うらしくって」
ライヤはモゾモゾとしながら話す。
「そうそう、それ助かってるよ。発電機の銅線なんかの加工も一発だから」
アオイはフォローを入れた。
「それじゃあ、アタイらもできるんじゃないか!その魔力の刃ってやつ。アタイ達には飛び道具がないから他の武器が欲しいんだよな」
アカネの言葉にマシロも頷いた
「そうだよ、異能でなく魔力の刃が出来るなら、私達も魔人との戦いに参加できる」
「どうせ魔人がこの異能を手にしたら、人間の世は終わるんだ。戦うしかない、私も魔人と戦う力が欲しい」
ジュレイが言うとドーテもそれに乗った。
「よーし、ライヤさん、明日から特訓だ」
「エーッ、私全然再現できないんですけど」
ライヤは皆の期待に圧し潰されそうだ。
「それなら僕、少しできるよ」
ヒイが注目を集める。
「ヒイ、本当?」
ミヤが聞くとヒイは頷いた。
「うん、もともとは矢に魔力を乗せられないか考えてたの。でも矢を放つと魔力が散っちゃって」
「そうか、武器に魔力を通すのとは違って、ただ乗せるのか、でも自分の思うような形にするのは難しそうだ」
俺は少しコツを掴んだ気がする。
ようし、明日から特訓だ。
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次回は魔力の刃の特訓です。




