4-3 シンシア様出発
ご愛読、ありがとうございます。
シンシア様が出発してユキナさんが目を覚まします。
鬼人族のユキノが失踪する。ヒイの活躍もあってユキノは保護したが、事件の真相はまだ闇の中だ。
〇帝城 天帝執務室 転移140日目
俺達はユキノさんを医務室に運んだあと、天帝様に面会の申請をした。
従者通信で連絡してあったのですんなりと面会できた。
部屋には天帝様とコウメイ様だけだった。
「クーヤ、ユキノが見つかったのだな」
「はい、今は医務室に居ます。と言うかまだ目を覚ましていません」
俺はまだシンシア様にも見つかったことを知らせていない。
「それで、なぜ緘口令を引いたのだ?」
「はい、犯人の狙いが分からないからです」
「どういうことじゃ?」
「犯人がなぜユキノさんを監禁したかですが。俺はユキノさんが犯人の秘密を見たからではないかと思います」
「ユキノが生きていると分かれば、再び彼女が狙われると言うことか」
コウメイ様が横入りして来た。
「そう言うことになります。犯人はあんなところにユキノさんを隠したことを考えると近く何らかの動きをするものと考えます」
「そう言うことか、なら明日明後日ぐらいに犯人は動くと考えて良いと言うことか」
「そうです。園丁が肥料部屋に入るまでが期限と思います」
「そうか、花の種類によっては十日に一度施肥をする種類があると聞く、当然犯人はユキノが見つかることも予測していると言うことか」
コウメイ様は俺の考えていることが分かったようだ。
「犯人の狙いは何じゃ!」
俺達の話に我慢が出来なくなったのか天帝様が口をはさんで来た。
「それは・・・」
俺はそう返す。
「それは?」
天帝様も聞き返す。
「解りません」
乗り出していた天帝様がガクッと崩れる。
「ただ、近く起きる出来事と言えばシンシア様の出発です」
「明日の朝じゃぞ。もう変更はできん」
途中の宿なんかワンフロア貸切ってるって話だし、船もチャーターするから日付の変更は難しい。
リョウカさんの時、俺に頼んで来たのは、やっぱりお金を使い込んだんだろうな。
「そうだな。護衛もみな顔見知りだと言う。何かするのは難しいのではないか?」
コウメイ様もシンシア様ではないと思ってるらしい。
「まあ、ユキノさんが間に合わなかったら、こうしましょう」
ユキノさんが犯人の事を話してくれるのが一番解りやすいのだが、体力を失ってそうだし、無理に起こすことはできない。
俺は内緒話を二人にした。
「うむ、それならば安心じゃ」
天帝様のお墨付きをもらった。
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〇帝城 正門前 転移141日目 シンシア視点
私はシンシア、青龍国の王女、今日は2年半の天帝の巫女の人気を終え、青龍国に帰るたびに出発する。
幸い天候も良く、少し暑いけど快適な旅立ちになりそうね。
と思っていたら、正門の手前で馬車が止まったわ。
ユキノの代わりのメイドが降りて門番となにやら話している。どうしたのかしら。
ユキノは私のメイドで青龍国から付いてきたのだけど2日前から行方不明になってしまったの。
周りの人の話では男が出来て、青龍国に帰りたくなくて、逃げたのではとか言われてる。
そんな話は信じてないけど、いなくなって私を困らせるなんてとんでもないわ。
馬車の扉が開いて代わりのメイドが私に言ったわ。
「お嬢様、天帝様から旅のお供を命ぜられた者が来ています」
はあ?初耳だわ。でも天帝様からでは断れないわね。
「はい」
メイドがぎこちないのが、ちょおっと引っかかるわね。
「おはよう」
「おはようございます」
メイドを押しのけて、馬車に乗り込んで来たのは女児が二人、しかも犬獣人と猫獣人。
平然と私の向かい側に座った。
この子達、昨日見たわね。そうあの帝国相談役になったクーヤに引っ付いてた子達よ。
「あなた達、どうしてここにいるの?」
私の向かいでニコニコしている二人に聞いてみた。
「センセーがシンシア様を守ってやれって言ってた」
「私はミヤこの子はヒイと言います。天帝様とご主人様からの命令でこの子の言う通り、シンシア様を護衛します」
え、私を守る?そう言えばこの子達、相当強いって言ってたわね
でも私の護衛が務まるほどなのかしら?
仕方ないわね。帝国相談役も地位は私より上だし。
「仕方ないわね。でもあなた達の分食料も用意してないわよ」
「大丈夫、おにぎりあるし、マシロさん達も作って・・・」
猫獣人に口を塞がれた犬獣人の子がうんうんと頷いている。
きっと、何か秘密にしてるのね。
「分かったわ。でもあまり騒がないようにね」
「はい」「はい」
「出発させてちょうだい」
メイドが馬車に乗りながら護衛の騎兵に言うと、騎兵が号令を発した。
「しゅっぱーつ!!」
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〇帝城 宿泊所
せっかく引っ越ししたのにすぐに宿泊所に戻ったな。
今日明日は何か起きる可能性が高いので帝城に皆で詰めている。
医務室には交代でユキノさんの様子を見に行っている。
「ミヤ達から何か言って来たか?」
今は自分を空けるのにミヤ達の連絡はマシロに変わって貰ってる。
「ヒイちゃんがお尻が痛いから何とかしてくれって言ってます」
馬車は良く揺れるし、クッションが薄いからなあ。
普段ワンボックスしか乗ってないから仕方ないか。
「我慢しろって、言っておいて」
どうせ、ユキノさんが起きるまでだ。
彼女が見たものがシンシア様と関係なければ、二人を引き揚げるまでだ。
その間我慢してくれ。
ユキノさんの様子を確認しておくか。
「今、医務室にいるのは誰だ?」
「えーと、ジュレイだと思います」
『ジュレイ、ユキノさんの様子はどうだ?』
『あ、クーヤ殿か。声に出てしまうところだった。ユキノ殿だな。医者の話では落ち着いて来てるそうだ。今日中には意識を回復するだろうと言っていた』
『そうか、ありがとう。まだ犯人が帝城にいる可能性がある。注意してくれ』
『任せてくれ、必ず守って見せる』
ジュレイに個別の従者通信をするのは初めてだったか。まあ、すぐ慣れるだろう。
今は現場に行くことができないので、作業部屋でアオイたちが発電機と魔力ジェネレーターを作ってる。
こちらの原料から部品を作り、組み立てる。なかなか根気の居る仕事だ。
あと2基は発電機が必要だ。
出来れば日本で材料を買いたいところだがそんなことをすればすぐに貯金もなくなってしまう、と言うか足りない。
こちらの金は予算が組まれてるから結構あるんだがな。
出来ればクレーンとかの重機も欲しいのだが、日本円がなくて手が出ない。
まあ、それは俺がやらなくても、ドワーフたちが近いうちに作れるようになってくれると信じてる。
だが初期インフラの整備はやってやらないと、時間がかかりすぎるからな。
のんびり構えていたのだが、ジュレイの従者通信で慌ただしさが増してきた。
最低でも今日明日ぐらいは帝城で過ごさないと、何があるか分からないからな。
それでお昼前で昼食をどうしようかと言っていた時だった。
『クーヤ殿、ユキノさんが目覚めた。すぐ来てくれ!』
俺とマシロはすぐに医療室に向かった。
「どうだ、何か解ったか!」
「いえ、まだ何も話していない」
医療室ではユキノさんのベッドに医者が付き、容体を確認していた。
まだユキノさんは目を覚ましただけで、頭ははっきりしていないようだ。
「キャーッ!!」
いきなりユキノさんが叫んだ。
体を丸めてシーツで顔を隠した。
襲われた時のことを思い出したのだろうか。
医者が懸命に落ち着かせようとしている。
「大丈夫です。ここにはあなたを害するものは居ません」
暫く落ち着くの待っているとムクッと上半身を起こした。
「シンシア様はどちらに!」
「シンシア様は今日の朝、出発されたわ」
マシロが答えた。
「え、え、どうしよう」
ユキノさんは頭を抱える。
俺はマシロに目線を送る。
こういう時は女性と話す方が良いだろう。
「ユキノさん、あなたが何を見たのか教えてくれますか?」
「シンシア様が危ないんです」
うーん何が危ないかを離してくれないと。
「何があったか、初めから話してくれますか?あなたは故郷の人にお土産を買おうと、裏門を出たんですよね」
「あ、はい。裏門を出て振り返ったらゲンが居たんです」
「ゲンさんと言うのはどなたですか?」
「ゲンは青龍国から来た護衛の一人で、私の幼馴染です」
「それであなたはどうしたのですか?」
「ちょっとゲンをからかってやろうと思って、ちょうどその時入って来た馬車の影に隠れて、また門の中に入り、木の影に隠れました」
結構警備が甘いな、天帝様に言っておこう。
「それで、ゲンさんのところに行ったんですか?」
「いいえ、なぜか入り口の脇に立って、そのボーっとと言うか、生気がないんです。馬車もいなくなってもそのままいたので、声を掛けようとしたんです」
「声は掛けられたのですか?」
「いえ、なんか黒い影のようなものがゲンの前に現れたんです」
ユキノさんは唾を飲み込んだ。
「それは何だったんですか?」
「解りません。私は怖くなって、また木の影に隠れました」
黒い影、なんだろうか?
そういや、鬼の村で魔人を斬った時黒い靄になって消えて行ったんだったな。
「それでどうなりましたか?」
「私がもう一度覗くとゲンも黒い影もいなくなっていました」
「それか・ら・・・アアアア!」
ユキナさんは頭を抱えて突っ伏した。
余程の恐怖に駆られたのだろう。
「クーヤさん、これ以上は・・」
「ああ、そうだな。あとはそのゲンとか言う奴を尋問するしかないか」
俺達がユキナさんの証言を諦めて、シンシアさんを追って、ゲンという護衛騎士に聞くしかない。
「ダメです、ゲンに近付いてはいけません」
ユキナさんが恐怖に打ち勝った?
「どういうことです。ゲンと言う男がどうしたと言うのです」
「私が木の影から去ろうと門の方へ振り返った時、目の前にいたのです。ゲンが・・あの顔は人間の物じゃなかった。悪魔が・・そう悪魔が乗り移ったとしか思えません。そのあとは覚えてません。シンシア様をゲンのそばに置いてはいけませーん!!」
ユキナさんはそう叫んでまた意識を手放した。
「クーヤさんどうします」
「ヒイ達だけに任せるわけにはいかない。俺達も出るぞ」
人間じゃないみたいだし、ヒイとミヤが危険な目に遭ったら・・・。
俺は全員を集めるとワンボックスに飛び乗った。
「今日シンシアさんは鄭州泊まりだ。今から追えば2時間以内に追い付けるはずだ」
追うメンバーは俺、マシロ、アカネ、アオイ、ジュレイ、ドーテ、ライヤ、ハイジだ。
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次回はシンシア様に迫る危機、クーヤは間に合うのか。




