4-2 名探偵ヒイ
ご愛読、ありがとうございます。
今回は少女失踪の謎をヒイが解き明かしていきます。
帝城から学校建設予定地の家に引っ越したクーヤ達。
引っ越しを終え、のんびりするクーヤに天帝様から帝城に来るよう連絡があった。
〇帝城 天帝執務室 転移140日目
俺は天帝様に呼び出されて帝城に向かった。
特に戦闘力が必要な要件じゃなさそうなので、俺とヒイとミヤだ。
俺はすでに門番には顔パスになっていたので、すんなり天帝様の執務室まで来ていた。
執務室には天帝様、シンシアさん、リョウカ様、ハンナさんもいた。
「ああ、リョウカ様とハンナさんだあ」
「こら、おとなしくしないか」
俺が行っても聞くわけない。
二人はリョウカ様とハンナさんに抱き着いた。
ヒイなんかハンナさんの巨大な胸に顔を埋めて、羨ましい・・・。
「こら、ミヤもヒイも天帝様の前だぞ。おとなしくせぬか」
天都に着いてから二か月ぶりか、同じ帝城にいても会わなかったからなあ。
リョウカ様に言われて二人は頭を下げ、俺の隣に座った。
「ゴホン、クーヤよく来てくれた。お前に頼みがある。シンシア、」
天帝様は見なかったことにして話をシンシアさんに振った。
「クーヤさん、お久しぶりですね。私は天帝様の巫女を辞して青龍国に帰ることになりました」
ま、今日で2回目の人だ。そうなんですかぐらいの印象しかない。
「昨日の事なんですが、私の世話役の鬼人族のユキノと言う娘が行方知れずになりました」
「それを俺が捜索を?」
「いえ、捜索は警らの方にお願いしています。しかし、私は明日の朝早くに出発しなければなりません。つきましては出発後にユキノが見つかった時、私が大陸にいる間なら、あなたにユキノを私の元に連れて来ていただきたい。お願いいたします」
シンシアさんは深々と頭を下げた。
呼ばれた理由は分かった。しかし何か引っかかる物がある。
「もし良ければユキノさんの失踪状況を教えてもらえませんか?」
鬼人族ならゴンタの知り合いかもしれないな。
「はい、昨日の3時ごろ、故郷への土産を買い忘れたと裏門を出たのですけど、それきりになっています。警らの調べでは近くの店での目撃もなく、鬼人族はここらにはいないから、かなり目立つと思うのですが」
シンシさんは不安を隠せない顔をしている。
裏門を出た記録はあると・・・。外での目撃例もなし。
ふと、ライヤの顔が浮かぶ。
そうか!
「失踪者をあなたの元へ送り届けることは了承しました。うーん、ちょっと俺も捜索してみたいなと思うんですがよろしいですか」
「うむ、それはかまわんが、すでに警らが百人体制ぐらいで捜査をしておるのじゃ」
天帝様が無駄じゃないかって感じで言って来た。
「まあ、今日だけで良いのでお願いします」
俺は警らが見逃しているかもしれないところを探すだけだ。だから時間はあまり必要ない。
「そこまで言うならやって見よ」
天帝様の許しが出たし、やって見るか。
「ところで、なぜリョウカ様がここにいらっしゃるのですか?」
リョウカ様が驚いたように俺を見る。
「姉様がお困りなのだ。お前が難色を示すようなら一言言ってやらねばなるまい」
「え、姉妹だったんですか?でも名前の感じが違うと言うか・・・顔は似てるけど」
確かに顔は似てるし、人を人と思わないような性格は似てるか。
「クーヤ、おまえ、とーても失礼なことを考えてないか?」
リョウカ様に睨まれてしまった。顔に出てたかな?
「いいえ、とんでもない」
何とかごまかさないと。
「あーら、リョウカったら秘密にしてたの?お姉ちゃんが教えてあげようかな?」
シンシアさん、いやシンシア様って呼ばないと・・・。
「お前達、こんな時に不謹慎だとは思わぬのか!」
ああ。天帝様が怒った。
「申し訳ありませんでした」×2
姉妹が青くなって大きく頭を下げる。
さすが天帝様だ。
「クーヤよ、お前は何かしら手がかりをつかんでおるのか?」
「いえ、ちょっと気になる点があるだけです」
あまりのんびりしていると捜査の時間が無くなるな。
しかし、リョウカ様って呼んでジュレイは呼び捨てなのはまずいかな。
だって同じ四天王でもずいぶん貫禄と権威が違うから。
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俺はハンナさんにお願いして、獣人コンビをユキノさんの宿舎に連れて行ってもらった。
流石に俺が巫女さん達の宿舎にお邪魔する訳にはいかないからね。
「覚えたかい?」
「うん、大丈夫」
「すみません、私はヒイほどの才能がないみたいです」
ミヤが俯くがそんなことは無い。
「人それぞれで得手不得手がある。ミヤは得意なところで頑張ってくれればいいからね」
「はい」
俺は二人の頭を撫でてやる。
獣人はスキンシップが好きだね。
「ハンナさん、ありがとうございました」
「いえいえ、私で良ければ何なりとお申し付けください」
ハンナさんは獣人コンビに手を振りながら去って行った。
獣人コンビも姿が見え無くなるまで手を振っていた。
俺達は帝城の裏に出た。
「じゃあ、まず裏門からユキノさんの匂いがあるか確認だ」
ヒイの嗅覚はイヌ並みだ。しかも身体強化で三倍だ。
もしかしたら、世界一かもしれない。
門番に断って、門の周囲を探る。
裏門の交通量は少なく、商用には使わない。
帝族の御用や高位貴族の出入りぐらいしか使わない。
ヒイは門の角辺りで止まった。
「うん、かすかにユキノさんのかすかな匂いが残ってる。一旦外に出て、また戻ったみたい」
ヒイが四つん這いになって匂いを嗅いでそう言った。
やはりそうだったか。俺はライヤが門番に気付かれることなく、門を潜ったことを思い出したのだ。
「どこに行ったか分かるか?」
「ちょっと待って」
ヒイは門から通じる道をぐるぐると回る。
なにせ一日経過しているから追跡はむずかしかった。
「見つけた!」
それは通路を5周くらい回ってからだった。
「こっち!」
そう言うと東の方へ這って行った。
通路は南北に通っているので、そこは地面は短い草に覆われ、所々に常緑広葉樹が植えられていた。
ヒイは少し離れた木を何周か回って、その裏で止まった。
「ここで匂いが切れてる」
「こっち側に匂いが残ってる。ここにいたんだ!」
ヒイは木を顔の高さで匂いを嗅いでいる。
通路の反対側に立っていたことになる
ユキノさんはなぜこんなことをしたんだろう。
考えられるのは門を出たところで何かを見つけて、木の影から様子を見ていたのではないか。
問題はその後どこに行ったのかだ。
あれ。俺ってこんなに頭が回ったかな?
もしかして身体強化で頭脳も三倍になってたりして。
名探偵とか言われたりして。
見た目は青年、頭脳はおっさんじゃ駄目か。
じっちゃんの・・・じいちゃんただの農家だったしな。
何か決め台詞考えとこう。
ヒイは木の周りを何回か回っていたが手がかりは無いようだ。
「ご主人様、あれは?」
ミヤの指さす方を見ると城の塀に着くように小屋が建てられている。
「人を隠せる場所はそこしかないか」
ユキノさんは誰かに拘束され、運ばれるとしたらここに隠すしかない。
俺達は小屋を調べることにした。
「よし行こう」
ヒイと彼女に着いた土ぼこりを払っていたミヤに言った。
手前のガラス窓がある部屋の扉をノックした。
「開いてるダニ」
中から陽気な男の声がした。
遠慮なく扉を開けた。
「帝国相談役のクーヤだ。この小屋を調べたい」
中にいた男は恰好からして園丁のようだ。
「そんな偉いさんが何を調べるって言うダニ」
「ちょっと、中を確認したいだけだよ」
俺はそう言うとヒイとミヤを中に入れた。
「あれえ、嬢ちゃんたちはクーデターの時、裏門を守ってくれた嬢ちゃんだよな?俺はよ、ここから恐る恐る覗いてたんだよ。いやあ、カッコ良かったよ。ありがとうな」
二人は面と向かって感謝された経験がなく、顔を赤くして照れていた。
部屋を調べたが手がかりはなかった。
「他に部屋があるね。見せてくれるかな」
俺達は一旦外に出る。
小屋の真ん中に大きな扉がある。
「ここは道具を仕舞う場所でして」
園丁のおっさんが扉を開けると農具や手押し車なんかが仕舞ってあった。
ヒイが嗅いで回るが手がかりはなし。
「ここじゃなさそうだ。もう一つ奥の部屋がありますね」
「はあ、農薬や肥料を置いてるダニ」
俺達は道具部屋を出て肥料部屋に行く。この小屋はこれで終わりだ。
ここに手がかりがなければちょっとまずい、木の影から運ぶにしても埋めるにしても手がかりは残るはず、まさか空を飛べるとは思えんしな。
園丁のおっさんが肥料部屋の扉の前に来た。
「ちょっと匂うダニが、開けるダニ」
園丁のおっさんは観音扉を一気に開けた。
うわ、なんだこれ!
すごい匂いがあふれ出た。
全員が鼻を摘まんで悪臭を防いだ。
肥料ってこんな匂いがするもんなのか?
「どうなってるんだ。これは?」
「いや、こんなはずはねえダニ!?
そりゃ牛糞や鶏糞はあるけど、発酵させて匂いは押さえてるダニ!」
そりゃそうか、こんな匂いの物を花壇に撒いたら悲惨だ。
しかし、これは糞尿の匂いだ。
暫くすると匂いが薄まったのか、慣れたのか、我慢できるレベルとなった。
「ヒイ解るか?」
「ちょっと待って」
俺はヒイに頼むが余程臭かったのか、鼻を摘まんだまま深呼吸。意味あるのか?
ヒイは恐る恐る鼻から手を離して部屋の中を嗅ぐ。
いったんちょっと頭を捻ってもう一度嗅いでみる
「ミヤちゃんそこの樽の後ろが見たい」
ヒイは部屋の中央に並べてある高さ1mくらいの樽を指差す。
ミヤは中央の樽の真ん中より低い位置に腰を下ろして抱えようとする。
「嬢ちゃん!ダメだ!それは40kgはあるんダニ!!」
ヒョイッ
ミヤは樽を持ち上げて、横に置く。
?と言う顔をして園丁のおっさんの顔を見る。
おっさんは見てはいけないものを見たような顔をして固まってる。
「センセー!あれ!」
樽のあったところを見ると、布や縄に埋もれたズボンをはいた足のようなものが見える。
俺は慌てて部屋の中へ、樽をどけようとする。
「こうやるダニ」
おっさんが樽を傾けて、くるっと回すと簡単に樽が転がって動く。
「おじさん、すごいです」
ミヤに褒められておっさんが真っ赤になってる。
いやそんなことを構っている場合じゃない。
慌てて樽の後ろの縄や布をどけると、手足を縛られ、猿轡をされた鬼人族の少女が現れた。
「これユキノさんじゃない!?」
恐らく一日ここに閉じ込められていたのだろう。
鼻に手をかざしてみる。呼吸はしている。
「生きてる。生きてるぞ!よし、このまま医療室に運ぼう」
俺は布で少女を包んで抱き上げた。
「名探偵はヒイだったな」
ヒイの頭を撫でるのは忘れない
「おじさん、このことは内緒にお願いします。犯人がこの子をまた襲うかもしれません」
この子は犯人の秘密を見た可能性がある。生きていると分かれば。今度は殺されるかもしれない。
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次回はシンシアが危機に!?




