3-25 クーデター
ご愛読、ありがとうございます。
軍務大臣トウタクが起こしたクーデターが始まりました。
サル座キメイの配下チョウショウはクーデターを察知、大けがを負いながらもキメイに知らせる。
〇帝城 転移115日目 第三者視点
宿泊所にいるクーヤにキメイから従者通信が来た時、すでに朝議が終わる時間になっていた。
その時天帝様から従者通信が来た。
『クーヤ、今二十人ぐらいの兵隊に襲われている。助けてくれ!』
作業部屋から宿泊所に飛び出したのはクーヤ、マシロ、アオイの三人。
ジュレイからも従者通信が来る。
『正門と裏門に兵隊が大勢現れたそうなので、近衛と応援に行きます』
正門にはアカネ、ジュレイ、ドーテが、裏門にはヒイとミヤが向かったみたいだ。
「くそ、同時多発的に攻めてきやがった。これはクーデターか!とにかく天帝様を守らないと彼女が居なくなったらこれまでの苦労に意味が無くなる」
クーヤは焦った。天帝様を守るのは最優先だが、敵兵を帝城に入れてしまえば守り切れない。
天帝は朝議が終わって、プライベート区画に向かっていたところ、待ち伏せに会った。
通路の物陰から、前後に十人ずつぐらいの兵隊が現れたのだ。
三人の近衛兵が天帝の護衛をしていたが、多勢に無勢、瞬く間に窓際に追い詰められてしまった。
近衛兵と敵は剣で闘っていた。
「フッフッフッ、助けは来ませんよ。どうか我々に拘束されてください」
「お前はジュンイク、さては軍務大臣トウタクの仕業か!」
睨み合う兵隊の中央に現れたジュンイクは、反問する天帝をあざ笑った。
昨日までに一般人に混じって、百名以上の兵が帝城に侵入していた。
兵は帝城に唯一の軍の施設、主計局に隠れていたのだ。
今日の朝議中に正門、裏門、そしてこの通路に密やかに兵を向かわせたのだ。
宿泊所からここまで2km近いマラソン選手だって5分では付かない。
クーヤに連絡してから2分ぐらい経っただろうか。もう近衛兵は一人しか立っていない。
「クーヤ、早く来てくれ」
天帝は怯えて呟くのだった。
通路の奥から機械音が響く。
「なんですか!何が起こったと言うのです」
ジュンイクが焦り始める。この男、作戦通りの時は余裕を見せるが、想定外が起きると一気に余裕をなくすらしい。
通路の奥から姿を現したのはゴーレムバイクに三人乗りだ。
「天帝様!伏せてえ」
バイクから最初に飛び上がったアオイが声を出す。
「馬鹿などうしてここが分かったのだ?」
ジュンイクはクーヤが現れたことで戦意を失った。
「吼えろ!!ウージー!」
アオイが空中で構えたウージー型のコイルガンが唸る。
高速で銃口から放たれる鉄球。
「ウワーっ!!」
「グエッ!!」
着地までにマガジンの弾丸を撃ち尽くす。
折り重なるように倒れる敵兵。
アオイが着地する前にクーヤ、マシロがバイクから飛び降り、バイクは倒れて滑りながら敵兵の中心に飛び込んでいく。
車両重量150kgの体当たりだ。派手に吹き飛ぶ敵兵達。
マシロはいつの間に出したのか薙刀を振るい、まだ立っている敵兵に向かう。
クーヤは天帝様の元へ。
「大丈夫でしたか?」
「怖かった。怖かったぞ、クーヤ」
天帝様は抱き着いてきた。
クーヤは頭を撫でてやる。
正門、裏門から通信が来ない。戦っているのか?
こちらはもう立っている敵兵は居ない。
「マシロは裏門へ、アオイは正門へ応援に行ってくれ」
クーヤは近衛兵のケガを直しながら指示をした。
従者を使うのは気が引けたが、他の従者を守るためでもあると自身を納得させた。
クーヤは天帝を抱き上げ、彼女のプライベート区画に行こうとしたが、ジュンイクが無傷なことを思い出した。
「おい、軍務大臣はどこにいる?」
「正門の外で様子を見ているはずです」
安全なところで成行きを見守っているらしい。卑怯な奴である。
「兵隊は何時頃、どれくらい攻めて来るんだ?」
「もうそろそろです。五千人ほどです」
ジュンイクは完全に戦意を無くし、言うがままだ。
クーヤはそのままプライベート区画に行こうとした。
「クーヤよ。こいつを連れていけ、証人に使える」
天帝も調子を戻してきたようだ。
プライベート区画にいる近衛の衛兵に天帝とジュンイクを渡したクーヤは軍務大臣の捕縛に行くことにする。
「天帝様、軍務大臣を捕らえに行きます」
クーヤはバイクを出し、正門に向かった。
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少し前の帝城正門 第三者視点
アカネとジュレイとドーテは数分かかって正門にたどり着いた。
すでに門兵と敵兵は戦っていた。
三人は先に走る近衛兵を抜いてきたので、練兵場からは一番乗りだ。
敵兵は正門の開閉装置を壊そうとしていた。
対して門兵は装置を守っていた
人数は門兵と近くから応援に来た兵で15人くらい、敵は50人ぐらいは居る。
武器は門兵が棍と呼ばれる2m近い硬い木の棒、敵は槍だ。
室内ではないので両方とも長柄の武器だ。
「お前ら、気を付けろ!」
「なんすか?いきなり」
アカネが突っ込もうとするジュレイとドーテを止めた。
「この混戦ではお前達の異能は使えん、それに長柄の武器とはあまり稽古してねえだろ」
「アカネさんも練習してるではないか」
「あれを見ろ。三人一組で一人を相手にしている。自分の攻撃が届かないところから攻撃されるんだ。もちろん後ろからもな」
「まあ、囲まれて戦う稽古はしたことないけど。ミヤちゃんの剣はもっと短いっすよ」
「ミヤは別格だ。あいつは猫獣人の柔らかさ、素早さ、しなやかさを駆使する超近接戦闘だ。得物の長さは関係ねえ。とにかく相手の間合いを意識しろ」
「分かりました」
三人は戦いに突っ込んで行った。
ジュレイは思った。なるほどやりにくい。
敵は私の攻撃範囲に入らずに槍を突いてくる。
さらに三方からの攻撃、初めての経験だ。
異能を使おうにも敵の後ろには味方が居る。
これでは氷魔法を使えば味方も傷つけてしまう。
面白い!
ジュレイとジュレイの中にいる剣の達人が喜んでいる。
これを克服すればまた強くなれる!
正面の敵が槍を突き出してくる。
これは牽制だ。
本物は横か後ろか?
後ろだ!
ジュレイは攻撃を避けて、後ろに下がりながら一回転。
彼女の間合いに入った後ろの敵兵の首を刎ねる。
慌てて横にいた敵兵が突きを入れてくる。
左手で槍を掴んで狙いを外し、喉に剣を突き入れる。
礼甲だから首に防備がない。
正面の敵が怯えた顔をする。
闇雲に槍を突きまくるがそんな攻撃が当たるわけがない。
兜ごと切り降ろして終わりだ。
周りを見るとアカネ、ドーテも三人ずつ葬り、一気に形成がこちらに傾いた。
その時、こちらに行進する軍隊が見えた。
数分でこちらに到着しそうだ。
「門を閉めろ!!」
千人以上いるだろう。あんなのが帝城に入ったらどうしようもない。
遅れていた近衛兵も来てくれた。
人数が同じぐらいになると一気に近衛兵が圧倒的に優勢になった。
クーヤ達が鍛えて来たんだ。それぐらいでないと。
近衛兵が数人、門に手を掛け、閉めようとする。
「門を閉めさせるなあ!!」
指揮官が叫ぶ!
外の敵兵が門を閉められないようにと走り出す。
「ドーテ!やるよ!」
「おう!待ってました」
ジュレイとドーテが門の開口部に躍り出る。
二人が門の前の敵に向かって手を挙げた。
「氷槍!!」
「石槍!!」
二人が叫ぶとジュレイの周りに氷の槍が、ドーテの周りには石の槍が浮かんだ。
「敵を穿てェ!!」
「いっけー!!」
前には敵しかいない、遠慮する道理がない。
二人が手を前に振り下ろすと彼女達の槍がすごい速度で敵兵に向かって飛んでいく。
鎧を貫き、グワーッ、とかゲェッとかいう悲鳴が響く。
先頭が倒れたので次々と倒れ重なっていく。
「今のうちに門を閉めて!!」
二人が中に戻ると外側の鉄の格子が降りて来て、内側の木製の門が閉まる。
「よし!門の上から矢の雨を降らせろ!」
近衛兵が門番の詰め所から弓矢を持ってきて、門の上に上がる。
「アタイは裏門に回るから、アンタらは上から魔法で攻撃しろ!」
アカネはそう叫んで裏門に向けて走り出す。
アオイが応援にきたがアカネがそのまま裏門に連れていく。
敵は軍務大臣と天都軍だけだ。
籠城すれば周囲から援軍が来るから、天帝側の方が圧倒的に有利だ。
天帝を確保できないと軍務大臣は終わる。
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〇少し前の帝城裏門 第三者視点
ヒイとミヤは近衛の兵士を置き去りにするほどの速度で裏門に着いた。
こちらでも50人程の敵兵と10人程の門兵が戦っている。
ミヤはそのままの速度で門兵と敵が戦っている中に飛び込んだ。
ヒイは30mくらい離れて弓矢を取り出した。
ミヤの接近に気付いた敵は彼女に槍を突きだす、接近する速度を変えずにその場で180度回転、槍を避けて鎧の継ぎ目に後ろ向きに脇差を体ごとぶつける様に突き入れる。
また180度回転しながら次の敵の首を狙い頸動脈を掻き切る。
ミヤは全く速度を落とすことなく、混戦の中を突っ切り、また突っ込んで行く。
彼女が混戦を横切るたびに十人近い敵兵が倒れるのだ。
門兵が敵兵に囲まれ危機一髪!敵兵の眉間に矢が突き立つ。ヒイだ
ヒイは箙から矢を抜くとすぐに番えて射る。
ヒイはまず門兵と戦ってる敵を射抜く。一人1秒もかからずに倒していく。
二人が到着して、1分も経たないうちに立っている敵兵は居なくなった。
「門を閉めろぉ!!」
近衛兵が現れて叫ぶ。こちらはまだ敵兵が見えてなかったから焦る必要はない。
流石にヒイとミヤは従者の中でも別格だった。
後で到着したマシロが呆れたほどだ。
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〇帝城正門付近
俺が正門に着いた時にはすでに門は閉まっていた。
正門の外にいるはずの軍務大臣トウタクを捕らえるために来たのだが、そのために外に敵兵がひしめいている門を開けるわけにはいかない。
天都軍は防衛軍なので攻城兵器は持ってない。
敵が破城槌なり井闌車なんか持ってれば、まだピンチは続くけど、もう攻め手はないはずだ。
事態を早く終結させるためにもトウタクを捕らえたいのだが・・・。
『ご主人様、宿泊所にお戻りください』
ナビさんが話しかけて来た。
『どういうことだ』
『ワームホールが使えます』
なるほど、作業部屋から学校建設予定地にワームホールを作って行き来したように、帝城の外にワームホールの出口を作ればいいのか。
『でもポイントは確保できるのか?』
『今正門の上にジュレイとドーテが居ます。彼女達にポイント決めをやって貰います』
ナビさんと話しながらもバイクで宿泊所に向かっている。
俺は宿泊所に戻り、ゲートから作業部屋に入った。
『すでにドーテの眼からゲートを作成、ワームホールを繋ぎました』
俺は新しいゲートに飛び込んだ。
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クーヤはトウタクを捕らえられるのか。




