3-24 クーデター前
ご愛読、ありがとうございます。
今回は味方になったキメイがクーデターを察知できるかと言う話です。
産業革命を始めたクーヤ、しかし軍務大臣トウタクが目論むクーデターが迫っていた。
〇帝城宿泊所 転移114日目
俺はこの日、朝から作業部屋で転移3人娘と魔力ジェネレーターと発電機を組み立てていた。
ヒイとミヤとジュレイとドーテは近衛に剣の練習に行った。
「ようやくジェネレーターの部品が揃ったから、組み立てるよぉ」
アオイがみんなに声を掛ける。
「了解」
マシロが返事をする。
「クーヤ君は発電機に必要な部品を書き出して、だいたいはジュレイとドーテで作れるんでしょう」
「まあ、そうだな。微調整は必要かも知れないけど、行けるんじゃないか」
ジュレイの結晶化とドーテの素材抽出の異能があればだいたいの材料は作れるようになった。
ただ形を整えたりするのは苦手だ。
うん、アカネがもじもじしてる。
「アカネどうしたんだ」
俺が声を掛けるとパッと顔を輝かせた。
「アタイはこんな細かいことは苦手で、出来たら近衛の方に行きたいななんて」
精一杯かわい子ぶっておねだりする。
「何言ってんの。昨日の話で納得してたでしょう」
ジェネレーターに首を突っ込むように作業していたマシロが突っ込む。
「うう、クーヤ頼むよぉ」
今度は泣き顔である。でも俺は許さない。なぜならマシロとアオイに恨まれるからである。
「おまえさあ、なんで決めたこと守んないの?」
アカネはグッと詰まる。百面相みたいだな。まあ、可愛いけど。
「クーヤ君、アカネを行かせてあげて。どうせ居ても役に立たないし」
アオイが冷めた声で振り返らずに言う。
「あおい、良いの?」
マシロが心配そうに声を掛ける。
「良いよ。今の状態だと邪魔なだけだし」
「アオイ、ありがとう。じゃあ、行ってくる」
作業部屋からゲートを空けて出て行った。
図太い。後で彼女らにどういう顔を見せるつもりなんだろう?
マシロが上を向いてため息を漏らした。
「クーヤさん気にしないでください。私達は意見が違うことも気にしません。そうやって生きてきました。でも、あなたと一緒にこの異世界を生きていくのは三人とも同じ思いです」
そしてニコッとほほ笑んだ
そんなことを言われるとおじちゃんは恥ずかしくて死にそうだよ。
「マシロの手に乗らないで、奴の手なんだから。あ、私はいくら可愛がっても良いからね」
アオイがニシャッと笑う。
ああ、俺はこの世界で幸せを掴んだのだ。
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〇キメイの拠点 キメイ視点
私は焦っていた。軍が明日何かやることは分かっていたが、それが何かがさっぱり分からない。
配下の者が何度も出入りするが、決定的な情報が入らない。
あの方が計画するのはクーヤ様の産業革命を邪魔することに違いない。
そんな時に拠点に現れた者がいた。
「兄上、なぜここに」
少し派手に動き過ぎたか。兄に拠点を突き止められてしまった。
「キメイ、何をこそこそやってやがる。父上も怒っているぞ」
兄上は私の前に現れた。
「私はあの方が軍に何かさせようとしている。それを探ってます」
とりあえず正直に言っておく。兄が何か教えてくれるかもしれない。
「何を言っている。そんなことをお前が知る必要はない。
それより、おまえ、配下にかなり気前よく金を配っている様だな。それを寄越せ!」
やはりと言うか。兄上は何も知らない
「これは私が受けた事案ですから、兄上には関係御座いません」
「やかましい!!サル座のことは俺と親父が決める。お前には何の権利もないのだ!」
やはり兄は私の言うことなど何も聞いてくれない。
本来なら干支座の金が入らなくなるのだ。新しい依頼先があれば検討すべきだろう。
「だから私はサル座としては動いていません」
言っても無駄だと思うけど一応言っときましょう。
「お前も動いてる配下もサル座の構成員ではないか!」
「仕事がなかったから斡旋したにすぎません」
兄は顔を真っ赤にしていた。
「おのれは、ああ言えばこう言う!許せん!!」
兄は懐から匕首を出す。
「とにかく、金を持ってサル座に来い!さもなくば妹とて許しはせん」
兄は匕首の鞘を抜き払った。
抜き身の刃が光る。
私達サル座は剣や長柄の武器を持つことは無い。
刃渡り十数センチの短剣が武器だ。
一般人に擬態するため、いかにもな武器を携帯できないのだ。
「お嬢、危ない。ここはあちらの言うとおりに」
護衛をしていた男チョウショウが私をかばおうとする。
今日が勝負だ。兄に付き合っている暇はない。
「兄上、今日が勝負なのです。うまくいけば大金が稼げます。ここは私にお任せできませんか?」
こうなったら、金で興味を引くしかない。
「なに!本当か!ならば俺も依頼主に顔を繋いだ方が良いんじゃないか?」
乗って来たけど、ここに居座られるのは邪魔だ。
「依頼主は私がサル座を抜けたと思っています。兄上が顔を出すと依頼を取り下げるかも・・・です」
ちょっと強引すぎたかしら。
「そうか、それでこんなところに拠点を築いたのか。それなら明日の夕刻使いを出そう。金はすべてサル座に入れるのだぞ」
「分りました。お手数をお掛けし、申し訳ありませんでした」
ふー、なんとか誤魔化せたかしら。
兄は帰って行った。結果が明日と近かったのが幸いした。
私はこれが無事実績をあげれば、サル座の構成員を率いて、クーヤ様の元に駆け付けるつもりだ。
その時、父や兄と戦うことになるかもしれない。
クーヤ様は私達に暗殺のような犯罪はさせないだろう。
それに産業革命が成れば、各地の情報を収集する人材が必要になるはずだ。
サル座は形を変え、未来に生きていくことが出来るのだ。
それには何とか軍部の考えを知らなければ・・・。
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〇その日の夜 キメイ
夜になっても軍の目的は分からなかった。
どうも上官たちは目的を共有しているらしいが、探索をそこまで広げられない。
上官達の話を聞くには、軍の中心に人を派遣しなければならない。
それはあまりに危険すぎる。
「お嬢、駐屯地の奥への侵入を許可してください」
眉間にしわを寄せて焦る私に配下が懇願する。
「ダメだ!いくら腑抜けた天都軍でもまず無理だ。死んでしまう」
死人を出してまで情報収集をやるべきではない。
クーヤ様もそうしている。
「チョウショウはどこへ行った?」
いつの間にか護衛のチョウショウが居ない、何かあれば私に声を掛けるはずだが?
まったく私を放ってどこへ行ったのだ。
「そう言えば30分ほど前から見ていません」
「もう、こんな大事な時にどこへ行っちゃったのよ」
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〇天都軍駐屯地 チョウショウ
俺の名はチョウショウ、サル座の構成員だ。
今俺は、天都軍の駐屯地の奥深く、指揮官クラスが居る兵舎まで来ている。
天都軍は規律が緩いと言われていたがその通りだった。
明日、大規模な作戦があると言うのに警備はユルユルだ。
俺は忍び仕事は苦手だがここまで来れた。
今は寝静まっているが、朝になったら奴らも緩んで秘密を吐くかもしれない。
朝まではまだ時間がある。
俺はお嬢があんなに焦るのを見たのは初めてだった。
お嬢はあのクーヤとか言う奴にサル座の未来を賭けているみたいだ。
なら俺がお嬢を助けなきゃと思って飛び出て来た。
俺はお嬢が生まれた時から知っている。
お嬢が生まれたのはサル座の里、お頭の家だ。
俺はお嬢の護衛に抜擢された。
その頃の俺はガキだったから、親父が言った「お前が守るのだ」と言う言葉をそのまま頭に刻んだ。
お嬢はその時から俺の中でかけがえのないものになった。
お嬢は頭も運動神経も良く育った。そして何より美しかった。
いつの間にかお嬢は俺のすべてだった。
お嬢がサル座を継いでくれればと何度思っただろう。
おっと、周りが騒がしくなってきた。
まだ東の空が明かるくなった程度だが、もう動き出すのか?
指揮官たちも起き始めたようだ。
俺は兵舎の壁に付けて置かれた木箱の影に隠れている。
覗き込まないと分からない場所だ。
兵舎の薄い壁に忍び道具の聞き耳漏斗を当てる。
聞き耳漏斗は単に耳を当てることにより、何倍も良く聞こえる忍び道具だ。
ドアを開ける音がした。
「・・・起きたか?」
「なんだ、お前が起こしに来たのか?」
どうも同僚らしい男と話している様だ。
「ちょっと、当番兵が来るまでに話しておきたかったんだ」
「ビビってんのか?」
「そんなわけあるか。俺達の未来が懸かってるんだぞ」
「でどんな話だ?」
「今日の俺の担当は正門警備だろう。手柄が立てにくいから、突入と代わってくれないか」
「バカヤロウ!今更担当を変えられるかよ。それに俺達は近衛と正面で戦うんだぞ」
え、正門・・・近衛・・・もしかして帝城、そんな馬鹿な。
「でも天帝様を捕まえたら、すごい手柄じゃないか」
「そこは先に潜入してる秘書官がやるって聞いたぞ。俺達には回ってこないよ」
天帝様!間違いない。俺は学校建設地を襲うのかと思っていたが、帝城だったとは。
流石はお嬢だ。ここまで読んでいたとは。
おっと、こうしちゃいられない。
お嬢に伝えないと。
一般兵が起き出す前に脱出しないといけない。
俺は走った。もうだいぶ明るくなってきやがった。
よし、駐屯地を囲う塀が見えて来た。
「誰だァ!!」
しまった!見つかった!
振り返る余裕はない。
塀の手前でジャンプした。
両手が塀の上に掛かる。
その時、左足に痛みと衝撃が・・・。
くそー、弓矢か。
両手に力を入れて体を持ち上げる。
グッ!今度は背中かっ!
負けるもんか!お嬢が待ってるんだよお!
俺は塀の向こう側に落ちた。
俺はお嬢のいる方向へ走った。
背中の矢は肺に刺さったみたいだ。
息が苦しい。
足も痛い。
「チョウショウさん!」
後ろで声がする。
俺は捕まったのか。
いや、背負われているのか
何としても意識を繋げておかなければ・・・。
「チョウショウ!!チョウショウ!!」
ああ、お嬢の声がする。
「馬鹿!!なんでお前が忍び仕事を・・・」
ああ、お嬢が怒ってる。
え、俺を怒ってるのか?
あ、そうだ。お嬢に知らさないと。
「お・・じょ・う・・き、聞いて・・」
あれ。うまく喋れないや。
「なんだ。い、言ってみろ」
「ねら・・いは・・きょ・う・・てい・じょう。さ・きに・・せん・にゅう・・して・る」
お嬢なんで泣いてるんだ。
俺はちゃんと仕事をしただろ。
ああ、目の前が暗くなってきた。
面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。
次回はいよいよクーデターが発生します。




